第46話 邪な気持ち
全知全能の魔王モノシリ・デスの攻撃を受けた俺だったが、主人公にあるまじき再生能力とも呼べる治癒スキルでどうにか耐えた(´;ω;`)
『今の再生能力はなんだ!? 我知らんぞ!』
「全知全能の魔王を名乗っているくせに五大スキルも知らんのか!(´・ω・`)」
『五大スキルだと? それは一体なんなのだ?』
「知らん(´・ω・`)」
『(使用者なのに知らないってどういうことだ……?)』
モノシリ・デスが動揺している間にタナケンオリジナルつりざお(セカンドバージョン)を構える。あの剣術スキルの衝撃波なら、どんなにつよつよモンスターでも一撃だ。さっさと終わらせてやる。
『む? あれはなんだ?』
「ん?(´・ω・`)」
モノシリ・デスは遠くに見える丘を凝視していた。気になってしまい、俺もそっちに視線を向ける。
「うおおおおお!! 魔王を倒してくれ!!」
「たなぴょん! 倒すのじゃ!」
「ピギィー! ピギィー!」
「タナプン! 負けるな!」
「タナスケ! 頑張れ!」
丘には街の人々が集まっており、拡声器で俺達を応援していた。爺さんとウサ太郎の姿もある。おそらく街の人々を呼んでくれたのだろう。知らない人ばかりだし、俺の名前間違えているけど(´・ω・`)
それでも……みんな応援してくれている……(´;ω;`)
でも、ぶっちゃけ遠くから応援するより加勢してくれた方がありがたい(´;ω;`)
『人間とは弱い生き物だ。あのように群れて何になると言うのだ?』
「なんだと!? 人間を馬鹿にするな! あと全知全能の魔王なのにさっきから語尾に?が多すぎだろ!(´・ω・#`)」
俺は堂々と魔王に向かってブチギレる。みんな見ている。これが主人公の威厳だ。このままカッコよく魔王を退治してチヤホヤされるぞー!(´・ω・`)←邪な気持ちの主人公
再びタナケンオリジナルつりざお(セカンドバージョン)を構える俺。もう誰にも止められない。ここで魔王を倒し、世界の救世主となって、記者の人達に囲まれて「魔王を倒したタナケンさん! 一言お願いします!」とインタビューを受け、「あれれ? また俺なにかやっちゃいました?」と答えて、本当の異世界生活が始まるのだ!
「うおおおおお!!!!!!(´・ω・`)」
「ま、待って!」
「ほへ?(´・ω・`)」
後ろから呼び止められる声がした。
俺を呼び止めたのは、おでんツンツン勇者だった。
「あの……おでんツンツン勇者さん、今良いところなので下がっていてもらえますか(´・ω・`)」
「ダメ。魔王を倒すのは勇者である私の役目だから」
「えぇ!? さっきまで『おうち帰るー!』と泣き喚いていたじゃないですか! そもそも勇者はクビになったんじゃ……(´・ω・`)」
「炎上はしたけど、それでも私は勇者なのよ。木の棒で魔王に立ち向かおうとする一般人を見捨てて、私だけ逃げられるわけないじゃない!」
「おでんツンツン勇者……(´・ω・`)」
後ろでシャルが「勇者かっこいい!」とテンション上がっているが、ぶっちゃけ俺の活躍する場がなくなってしまうから、おでんツンツン勇者は下がっていてほしい(´・ω・`)←チヤホヤされたい主人公
『貴様……あの忌々しい結界を作り出した勇者だな?』
「そうよ。さあ、かかってきなさい! 私の結界スキルで返り討ちにしてあげるわ!」
おでんツンツン勇者はポケットにしまっていた杖を取り出し、魔王を挑発する。杖をよく見てみると、おでんの串だった。コンビニでおでん一式を買い取ったときに余ってしまったんだろうな(´・ω・`)
『ほう、我の攻撃を跳ね返すと? 面白い』
「くるわ! みんな下がっていて!(ふふふ、みんな見ているわ。ここで魔王を倒せば私の信頼は一気に回復するはずよ。『おでんツンツンとか言ってごめんなさーい!』と村人達が謝ってくる姿が想像できるわ。そして、私は勇者に戻って、将来なりたい職業ランキング一位も勇者に戻るのよ。さらに記者の人達に囲まれて「魔王を倒したおでんツンツン勇者さん! 一言お願いします!」とインタビューを受け、「あれれ? また私なにかやっちゃいました?」と答えて、私のチヤホヤ生活が始まるのよ!)」
おでんツンツン勇者、なんかニヤついていて怖いな……(((´・ω・`)ソソソッ
『その前に一ついいか?』
「ふん、なにかしら?」
『何故、おでんをツンツンしたのだ?』
「なっ……!? なんで魔王がそれを知って……!?」
おでんツンツン勇者の顔が真っ青になっていく(´・ω・`)
『お前、SNSで炎上していたぞ。我でもあんな非道なことは思いつかないから正直引いたぞ』
「ぐふっ!」
あ、おでんツンツン勇者が吐血した!Σ(´・ω・;`)
『ぶっちゃけお前みたいなのが勇者で、人間達は大丈夫なのか?』
「ぐはっ!!!!!!」
おでんツンツン勇者はモノシリ・デスの精神攻撃により、倒れてしまった!
「おでんツンツン勇者ーーーー!!!(´;ω;`)」
『我、なにもしていないのに倒れたぞ!?』
「き、貴様ァー!! 許さねー!!(´;ω;#`)」
俺は三度目の正直としてタナケンオリジナルつりざお(セカンドバージョン)を構えた。やはり主人公が活躍するべきであり、読者も望んでいるのだ。やれやれ、魔王を倒しちゃいますか。
「うおおおおおおーーー!!!!(´・ω・`)」
魔王に向かって走り出した俺は出来るだけカッコいい絵面になるように剣を振る姿勢へ移行する。
しかし、決めポーズと決め台詞を考えることに夢中になってしまい、足元が疎かだった。
「あっ(´・ω・`)」
小石に躓いた俺はそのまま盛大に転んでしまう!
「ぎゃふん!!!!!(´;ω;`)」
ポロっ!! ポロっ!!
転んだ衝撃で、俺の体から二つの玉が飛び出てしまう。眩しい光を放ちながら……いや、下ネタじゃなくてスキル玉のことだよ。
「ってやべぇぇぇぇぇ!!!!!(´;ω;`)」
スキル玉は転がりながら、どんどん離れていく。つまり、今の俺はなんか凄い衝撃波を出せる剣術スキルも、ウーパールーパーみたいになれるスキルもない無防備な一般人になってしまっている。
「あわわわわわ(´;ω;`)」
俺は慌てながらスキル玉を回収しようとするが、モノシリ・デスが火の玉を放ってきて行く手を阻む。
『何をしようとしているのかは知らんが、阻止させてもらうぞ』
こんな一般人相手に……なんて用心深い魔王なんだ(´;ω;`)
「タナケン! 危ない!」
「うわっ!(´;ω;`)」
いきなりシャルに掴まれて、そのまま瞬間移動する。その瞬間、俺が立っていた大地はモノシリ・デスの炎によって粉々に吹き飛んだ。
「あぶねーー……ってシャル?(´;ω;`)」
どうやら森の中に逃げ込んだらしく、シャルは近くの木にめり込んでいた。やっぱり瞬間移動って慣れないと難しいよね(´・ω・`)
おでんツンツン勇者(ショックで気絶中)と奴隷の子(ドカ食い気絶中)も一緒に避難してくれたようで、ひとまず全員無事だ……ん?(´・ω・`)
コロコロ……。
あの湖の方へ転がっているスキル玉二つは一体?? それにめちゃくちゃ光っているぞ(´・ω・`)
転がっているスキル玉二つは俺が落としてしまったスキル玉の近くで止まった。
光り方が五大スキルと同じだけど……ま、まさか!!! シャルも木にぶつかった衝撃で瞬間移動スキルと第六感スキルを落としてしまったというのか!?(´・ω・;`)
ということは……五大スキルのうち四つが使用不可な状況ってコト!?(´;ω;`)
『どこいった! 出てこい!』
モノシリ・デスの声が響き渡る。俺達は森の中にいるから居場所はバレていないようだ。しかし、スキル玉が転がっていった湖近くは木など隠れるようなものがない。
一般人があそこまで行ってスキル玉を回収するのは……無理だ。スキル玉を回収する前に攻撃されてしまう(´;ω;`)
……と言っても俺にはまだ五大スキルの一つが残っている!(´・ω・`)キリッ!
奴隷の子に貸した『神の絶対防御(ゴッド・アブソリュート・ディフェンス)スキル』があれば、無傷でスキル玉を回収できる!
「奴隷の子! 起きてくれ!(´・ω・`)」
「ふわぁ……朝ごはん?」
「もう昼だけど……じゃなくて、君に押し付けた自己防衛スキルを返してくれ!(´・ω・`)」
「じこぼうえい? なにそれ?」
「寝ているときに押し付けたスキルだよ。見慣れないスキルがあるはずだから出してくれ」
奴隷の子は眠たそうな顔をしながらスキル玉をぽんぽん放出する。
「なにこれ?」
「それ! その一番光っているやつ!(´・ω・`)」
「これ、食事系スキルじゃない。いらない(ポイツ!)」
「ええええ!!!???Σ(´・ω・;`)」
なんと奴隷の子は『神の絶対防御(ゴッド・アブソリュート・ディフェンス)スキル』をポイ捨てしてしまい、そのまま俺達が落としたスキル玉四つと同じところまで転がってしまう。
「な、な、なにしてくれとるんじゃーーー!!(´;ω;`)」
「ふわぁ……もう少し寝よ(すやすや)」
奴隷の子は俺の話を聞かずに寝てしまった。
……(´;ω;`)
完全に詰んだ!!!!!(´;ω;`)
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