第43話 剣になるもの

「ムシャムシャ(咀嚼音)」


「おぉい! なに食べているんだ!(´;ω;`)」


「チョコ棒だよ」


「知っているわ!(´;ω;`)」


 奴隷の子がチョコ棒を食べてしまい、手元に剣っぽい物がなくなってしまった。辺りを見回してみるが、剣っぽい物はありそうにない。


「ふふふ、やはり私の出番のようだね」


 シャルがニヤつきながらドラゴン八兄弟と終焉をもたらすデスバードに立ち向かおうとした。


「まてぇい!(´;ω;`)っ」


「ちょっと! タナケン、離してよ!」


「無理無理無理! シャルじゃ瞬殺だよ!(´;ω;`)」


「え? 私が強すぎて?」


「いや、瞬殺される側だよ!(´;ω;`)」


「また私のことバカにした!」


 俺とシャルがわーわーと喧嘩していると数秒後に今立っている場所が吹き飛んでいるビジョンが脳内に流れた。


「もうイヤー!!!!!(´;ω;`)」


 激おこぷんぷん丸なシャルと隠し持っていたポテチを食べ始めた奴隷の子を抱えて瞬間移動した。その直後、ドラゴン八兄弟のブレスがさっきまでいた建物を粉々に吹き飛ばした。


「剣っぽいやつ! 剣っぽいやつはないかー!?(´;ω;`)」


 瞬間移動しながら探すが、剣になりそうな物は見つからない。でも地味に瞬間移動が上手くなっていて嬉しい(*´ω`*)←そんなこと言っている場合ではない


 こうなったら一度、湖とは逆方向にある森へ逃げてタナケンオリジナルつりざお(復刻バージョン)を作ってくるべきか。できるだけモンスターがいないところにシャルと奴隷の子を置いていけば立ち回りも楽になりそうだし……ん?(´・ω・`)


 そのとき、ガチャっとドアが開く音がした。


 音がした方を見てみると、民家からヨボヨボの爺さんが出てきた。


「今日もいい天気じゃ。ウサ太郎、散歩に行くぞぃ」


「ピギィー! ピギィー!」


「アレは異世界転移した日に出会った爺さんとキモいウサギだ!Σ(´・ω・;`)」


 シャルと奴隷の子を抱えながら爺さんのところへ瞬間移動した。


「わっ、なんじゃ!? 急に人が現れた!? ついにお迎えが来たというのか! わしはまだボケておらんぞ!」


「違うわ! 早く逃げるんだ!(´・ω・#`)」


「ん? お主はわしにウサ太郎を押し付けてきた……えー名前はなんだったかのぉ。ああ、そうじゃ! タコドンじゃ!」


「タナケンだ! 思いっきりボケているじゃねーか!(´・ω・#`)」


「なんじゃと!? 目上の人を労うことを知らんとはなんてクソな青年じゃ!」


「ピギィー! ピギィー!」


 爺さんとキモいウサギは中指を立てながらブチギレてくる。なかなか鬱陶しい絵面だ(´・ω・#`)


「いや、こんなことしている場合じゃない! アレから逃げるんだ!(´・ω・`)」


 俺が指差した方を爺さんとキモいウサギは見た。そこにはドラゴン八兄弟と終焉をもたらすもたらすデスバードが街を破壊していた。


「なななななんじゃ!? あの化け物達は!?」


「ぴぴぴピギィー!!!!????」


 爺さんは驚きすぎて腰を抜かしたのか、その場で倒れてしまった。


「爺さん!!(´・ω・`)」


「そうか……ついにわしもボケてしまったのじゃな。あんな化け物達の幻覚を見てしまうなんて、そうとしか考えられないのじゃ」


「都合の良いときだけボケ老人になるな! 逃げるんだよ!(´・ω・#`)」


 俺は奴隷の子を背負い、左腕でシャルを、右腕で爺さんを抱え、頭に飛び乗ってきたキモいウサギと共に瞬間移動した。


「お、重い……(´・ω・;`)」


「わし、空飛んでいる! これは夢じゃ! 夢に違いない! ウヒャヒャ!!」


「爺さん! キモい笑い方しないで!(´・ω・;`)」


 ひとまず、離れたところにお荷物3人とキモいウサギを置いて剣になりそうな物を探すしかない……ん?(´・ω・`)


 大通りに目をやると、女性が歩いていた。遠目からではわからないが、長い茶髪の若い女性だ。


「まだ逃げ遅れていた人がいたなんて! もう俺の定員はオーバーしているし、あの女性を救う代わりに老い先短そうな爺さんを諦めるかどうか悩むことしかできない!(´・ω・;`)」


「わしが老い先短いじゃと!? こやつ、主人公らしくない外道なことを言いおって!」


 爺さんと喧嘩しているうちに、女性はドラゴン八兄弟達がいる方へ歩いていく。


「なっ!? あの女性、なに考えているんだ!?(´・ω・;`)」


 俺は悩んだ末、あと一人ぐらい背負えると判断して女性の元へ瞬間移動した。


「おい! 早く乗っかれ!(´・ω・`)」


 女性の目の前に瞬間移動した俺は膝を曲げて背中に乗っかるように説得する。既に背中には奴隷の子がいるがなんか寝ているみたいだし、多少圧迫することになっても我慢してもらおう。


 しかし、女性は俺を鋭い眼光で睨みつけて、そのまま素通りしてしまう。なんて冷たい目をしているのだろうか。目つきは悪いが、顔立ちは整っているし、これといって見た目は普通の女性ではある。しかし、これまで出会ってきた人間の中でもかなり怖い雰囲気を感じるのだ。


 まだ少し離れているが、その先に待っているのはドラゴン八兄弟達だ。死にに行くようなものである。


「そっちは危険だ! 戻れ!(´・ω・;`)」


「……なきゃ」


「へ?(´・ω・`)」


 女性は小さな声でなにか喋った……と思う。


「今なんか言っ……あ、ヤバいわ、これ(´・ω・`)」


 第六感が発動した。数秒後、ここら周辺はブレスによって破壊されるビジョンが見えた。


 もう女性を抱えて逃げる余裕はない。しかし、るこのまま見捨てることもできない。そうだ、俺は現実世界でも優柔不断だった。そんな頼りない俺だから初めてできた彼女にフラれて……とか懐古している場合じゃねぇ!(´;ω;`)


『グオオオオオオオオ!!!!!!』×8


 優柔不断な俺が作ってしまったスキは大きく、目の前にブレスが飛んできていた。俺は五大スキルで助かるかもしれないが、シャルと奴隷の子と謎の女性、ついでに爺さん、オマケにキモいウサギは助からない。


 くそっ! ここまでか!(´;ω;`)


 目をぎゅっと瞑り、ブレスを正面から受けることを覚悟する。


 だが、数秒経ってもなにも感じなかった。痛みも、振動も、音も。


 俺はそっと目を開けると、さっきの女性が目の前に立っていた。


 女性の前には大きな結界が展開しており、さらに先にはドラゴン八兄弟の残骸があった。


「な、何が起きたんだ???(´・ω・`)」


『ピヨピヨ! ピヨピヨ!』


「終焉をもたらすデスバードがこっちに飛んでくる!Σ(´・ω・;`)」


 終焉をもたらすデスバードは翼から黒炎の槍を複数本飛ばしてきた。ちょっとカッコいい! ……じゃなかった! ヤバい!


 しかし、黒炎の槍も結界によって防がれて、そのまま終焉をもたらすデスバードに跳ね返った。


『コケコッコー!!!』


 終焉をもたらすデスバードは断末魔を上げて、そのまま消滅した。


 なんて高性能な結界なのだろうか。そして、しんな結界を作り出したと思われる目の前の女性は一体……(´・ω・;`)


「ふわぁ……」


「あ、奴隷の子が起きた(´・ω・`)」


「おなかすいた」


「君、さっきお菓子食べたでしょ(´・ω・`)」


 奴隷の子は「ご飯探さなきゃ」と背中から降りて一人で歩き出す。あ、待て! 今はそれどころじゃない!


「ぎゃっ!」


 ご飯を探し出した奴隷の子は勢い余って目の前に女性にぶつかり、尻餅をつく。


「急に走るから(´・ω・`)」


 俺が駆け寄ると、女性は振り返った。怒っているのか、転んだ奴隷の子を睨みつけるように見下ろす。


「あ、テレビで見たことある人だ」


 奴隷の子は女性を指差して、そう言う。


「え、君。この人が誰なのか知っているの? つーかテレビ見ているの?(´・ω・`)」


「うん。部屋にテレビがあるから」


「タナケンハウスにはテレビないけど、実は奴隷の方が良い生活送っている???(´・ω・`)」


 そもそもなんで異世界にテレビがあるんだよと思いつつ、奴隷の子に訊いた。


「そんでこの人は誰なの?(´・ω・`)」


「おでんツンツン勇者だよ」


 ……(´・ω・`)


 いや、アンタかよ!(´・ω・`)ノビシッ!

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