第41話 非常事態(原因は主人公)

「ひくっ……ひくっ……鳥さん達、ごめん(´;ω;`)」


「ほら、鼻かんで」


「ぷぴー!(´;ω;`)」


 タナケンオリジナルつりざおの斬撃によって、結界と魔王城と背景の山を破壊してしまった俺は、山に生息していた動物達に謝りながら街へ帰っていた。もう釣りどころじゃないし、シャルに慰められているし、とんでもなくダサい一日である。


「た、大変だー!!!」


 街を歩いていると、あちこちから「大変だ!」「やばい!」と声が飛び交う。しかし、俺達含めて大半の住民はなにがヤバいのか理解していなかった。


『皆さん! 緊急事態が発生しました! 今すぐ広場に集まってください!』


 街のあちこちに設置された野外スピーカーから案内が流れ、街の人達がどんどん広場に向かう。というか野外スピーカーとか世界観どうなってんの(・ω・`)


「なんだろうね?」


「とりあえず、俺達も行ってみようか(´・ω・`)」


 広場に辿り着くと、市長らしき偉そうな髭を生やしたおっさんと、白髪でメガネをかけたおじいさんが立っていた。


「皆さん、落ち着いて聞いてください」


 市長らしきおっさんは深刻そうな顔で、住民達にそう言った。


「ついに結界が破られてしまいました。破られたのは湖の近くです」


 市長がそう伝えると、住民達から悲鳴があがった。


「そんな結界が破られるなんて!?」


「湖ってすぐ近くじゃないか!!」


「おでんツンツン勇者はなにやってんだ!」


 周りの人達は驚き、俺も内心でビビりまくっていた。


「あわわ……俺が結界を破ったせいで凄いことになっちゃっている。正直に話したら許してもらえるかな(´;ω;`)」


 俺は手を挙げて正直に話そうとしたが、誰も気づかないまま市長は話を続けた。


「緊急事態ということで、モンスターに詳しいモンスター博士に来てもらいました。博士、お願いします」


「うむ」


 白髪のメガネをかけたおじいさんが一歩前に出てくる。


「先程、わしは破れた結界を見てきたのじゃが、アレはモンスターによる攻撃で間違いないじゃろう」


「博士、それはつまり……」


「うむ。ついに恐れていた人類滅亡のときが訪れてしまったということじゃ」


 それを聞いた住民達は言葉を失い、膝から崩れ落ちる人も何人かいた。あわわ……(´;ω;`)


「しかし、博士! 聞いた話によると、近くにある魔王城も崩壊していたようですが、人間による攻撃の可能性はありえませんか!?」


 市長! 当たっています! 俺がやりました!(´;ω;`)ノ


「ありえるわけないじゃろ!!!!!!」


「ひぃ!」


 モンスター博士は論破されかけたことによってブチ切れてしまい、市長は怯えた。ついでに俺も発言するタイミングを逃した。


「人間がやったのなら結界を破壊する必要はないじゃろ! あれは見せしめに間違いないのじゃ!」


「見せしめ……ですか?」


「うむ。これまで結界によって街に侵攻できなかった魔王とモンスター達はついに結界を破ることに成功したのじゃ。そして、魔王城は必要なくなったと判断して、あえて破壊したのじゃ」


「魔王達は自ら城を破壊したというのですか!?」


「そうじゃ。これは我々に対するメッセージでもあるのじゃ。『人間達よ、この城の残骸が見えるか? 次はお前らがこうなる番だ』とな」


 博士の発言によって、住民達から啜り泣く声が目立つようになった。


「すぐに魔王の部下達がこの街にやってくるじゃろう……。死にたくない者はさっさと逃げるのじゃーーーーーー!!!!!!!!」


 モンスター博士はそう叫びながら走り出し、集まった住民達を押しのけて一人でどこかに行ってしまった。


 ……博士はどこに?(´;ω;`)


「「「うわあああああああ!!!!」」」


「ちょ、危ない!(´;ω;`)」


 ぎゃふん!(´;ω;`)


 一斉に住民達は博士の後を追い始めた。みんな逃げることに夢中で、俺とシャルは何度も人とぶつかり、転びまくった。


 そして5分後、街から人の姿が消えた。


 街にいるのは、俺とシャルだけ。


 空き缶がコロコロと寂しい音を立てて転がる。


「どうしてこんなことに……俺はただ夕飯が食べたかっただけなのに(´;ω;`)」


 しくしく泣いている俺にハンカチを差し出すシャル。


「タナケンも早く逃げた方がいいよ」


「逃げた方がいいってシャルはどうするの?(´;ω;`)」


「私はここに残って戦うよ。少しでもモンスターの足止めをして、住民が遠くに逃げられるように時間稼ぎしてみせる」


「シャル……これまでの実績からして一秒も稼げないと思う。というか一回もモンスター討伐しているところ見たことないし(´;ω;`)」


「なっ!? 私は戦えますぅー!」


 シャルはぷくっと頬を膨らませる。いやいや、無理だって(´・ω・`)


「そもそも、本当にモンスター達は来るの? 魔王城も崩壊しているし(´・ω・`)」


「あの魔王城にいたモンスター達は全滅したと思うけど、他にも魔王はいるからね。多分、すぐに穴が空いていることが知られて、どんどんモンスターが入ってくると思う」


「……俺はなんてことをしてしまったんだ(´;ω;`)」


「でも結界自体はまだ完全に崩壊していないし、タナケンが開けた穴からしか入ってこれないから、元勇者が結界を修復してくれればなんとかなるかも!」


「……修復できるの?(´;ω;`)」


「そうだよ。だからタナケンは早く逃げて!」


 俺は恐怖でブルブルと震えながらも、シャルの言葉を聞いて覚悟を決めた。


「俺はここに残る。シャルは逃げてくれ(((´;ω;`)))」


「えっ!? 急にどうしたの!?」


「こうなったのは全部俺のせいだ。足止めするのは俺の役目だ(((´;ω;`)))」


 俺は全身震えながら、かっこつけた。歯がガタガタするぜ。


「それに俺には五大スキルがある……らしい。剣から衝撃波が出るやつとウーパールーパーみたいな再生能力のやつと……残りは忘れたけど、なんとかなるかもしれない(´;ω;`)」


「そんなの無茶だよ! 五大スキルがなんなのか知らないけど、タナケン一人じゃ瞬殺だよ!」


「どこまで戦えるかは分からん。けど、少なくともシャルよりは戦えるはずだ(´;ω;`)」


「なっ!? さっきから私のことを甘く見ていない!?」


「いや、真面目に嘘偽りなく本当に冗談抜きで本音を言って、シャルは足手纏いになるから逃げてくれ(´;ω;`)」


「あー! 私のことを馬鹿にした!」


 シャルは俺を指差して子供っぽくワガママを言い始めた。頼むから早く逃げてクレメンス……(´;ω;`)


「いいから早く逃げろ!!(´;ω;`)」


「なにそれ! かっこつけているつもり!? そんなに震えちゃって……説得力ないよ!」


「なんだと!? これは武者震いだ!(((´;ω;`)))」←大嘘


 俺とシャルはこんなことしている場合ではないのに言い合いになってしまう。お互い頑固なのである。


「タナケンっていつもそうだよね! かっこつけようとして無茶ばかりして! この間も『モンスター討伐は俺に任せておけ!』なんて言っておいて、泣きべそかきながら人類平等ライオンに食べられかけたし!」


「ななな泣いてねーし! そっちこそ勇者になるって言っておいて、いつもニンジンを残しているじゃないか!(´;ω;`)」


「はぁ!? それは関係ないでしょ!? タナケンだってピーマン残しているよね!?」


「うぅ……(´;ω;`)」


 俺が論破されかけているとき、近くにあるスーパーから「ガタッ!」と大きな音がした。


「ひっ!(´;ω;`)」


「きゃっ!」


 俺とシャルは反射的に抱きついてしまい、数秒後にお互い恥ずかしくなって光の速度で離れた。


「も、もうモンスターが!?(´;ω;`)」


 おそるおそるスーパーの中を覗いてみると、何かが動いていた。


 俺は近くに落ちていた箒を手に持って、スーパーの中に入った。


「ムシャムシャ(咀嚼音)」


 そこにいたのは、いつも腹を空かせている奴隷の子だった。


「……君、なにやってんの?(´・ω・`)」


「お菓子食べているの、ムシャムシャ(咀嚼音)」


 呑気にお菓子売り場に置いてあったチョコ棒を食べる奴隷の子。まさか逃げ遅れていたとは。


「いつものサングラス野郎はどうしたの?(´・ω・`)」


「なんか慌ててどっか行っちゃったの」


 あのサングラス野郎、一人で逃げたな(^ω^#)


「ダメだよ、店のモノを勝手に食べちゃ」


 シャルは奴隷の子からお菓子を取り上げる。


「あー! 返してー!」


「ダメ! それよりも早く逃げないとモンスターが来るよ?」


「モンスター? なにそれ、美味しいの?」


 奴隷の子はなにもわかっていないようで、お菓子売り場からポテチを持ってきて食べ始めた。


「シャル、早くこの子を連れて逃げるんだ!(´・ω・`)」


「ちょっと! タナケンがこの子を連れて逃げるんでしょ! また泣き虫に戻る前に」


「誰が泣き虫だ! 何度言ってもわからないクソ勇者志望者め!(´・ω・#`)」


「あー! 暴言吐いた! 泣き虫タナケンが女性に暴言吐いたー!」


「だから俺は泣き虫じゃねー!(´・ω・#`)」


 俺とシャルが小学生レベルの喧嘩をして、奴隷の子がキャンディを舐めていたときだった。


 ひゅ〜〜〜ドスン!


 なにかの衝撃で棚に並べてあった商品が落ちまくり、お菓子の箱が奴隷の子の頭を直撃した。


「きゅぅ〜〜〜バタッ!」


「お、おい! 大丈夫か!?(´・ω・`)」


 奴隷の子は気絶してしまったようで、彼女の頭の上には三羽のヒヨコがグルグル回っていた。ギャグ漫画みたいな演出だ(´・ω・`)


「クソッ! 一体、何が……!」


 俺はスーパーを出て凄い音が聞こえた方を見た。


 そこには建物よりも巨大な三つ首のドラゴンがいた。四足歩行の胴体には大きな翼が生えており、これまで見てきたモンスターの中でも一番大きい。


 真ん中の首が俺の存在に気づいたのか睨みつけてくると、左右の首も同時に睨みつけてきた。そして、大きく口を開ける。


『グオオオオオオオオ!!!!!!』×3


 凄まじい咆哮。地面に落ちていた空き缶は突風に飛ばされたように吹き飛んでいった。


 ……(´・ω・`)


 ……え? 俺、アレと戦うの?(((´;ω;`)))

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