第40話 タナケンオリジナル

 気づいたら、真っ白な空間にいた。


「ん? ここは?(´・ω・=・ω・`)キョロキョロ」


「タナケン、勇者グランプリ決定戦にエントリーするのです」


「アンタは前に夢で見た銀髪の女性!Σ(´・ω・`)」


「夢ではありません。世界に危機が迫っているのです。マッチョタンポポとか小学生みたいなこと言っていないで、早く五大スキルを駆使して勇者になるのです」


 銀髪の女性にそう言われて、俺はついに五大スキルを思い出した。つーか夢じゃなかったのか(´・ω・`)


「五大スキルってなにができるんだっけ? ウーパールーパーが凄いことしか覚えて……」


 俺がそう言いかけた瞬間、全身に凄まじい衝撃が走った。



 ********************************



「ぐえー!!!!!(´;ω;`)」


 目が覚めると、ボロい天井が見えた。


 俺の上にはベッドから落ちてきたと思われるシャルがすやすやと寝ていた。寝顔もかわいい……とか言っている場合じゃねぇ!(´・ω・`)


「シャル! 起きてくれ! 衝撃の事実が判明したんだ!」


「う、う〜ん?」


 シャルは俺の上で寝ぼけながら起きた。


「世界に危機が迫っていて、マッチョタンポポはマッチョタンポポじゃなくてウーパールーパーだったんだ!(´・ω・;`)」


「ふわぁ……タナケン、なに言っているの?」


 シャルはそのまま俺の上で二度寝した。俺も変な夢見て目覚めが悪いから二度寝するか。


 ドッカーン!


 !?Σ(´・ω・;`)


 いきなりドアが開かれて、ごつい婆さんが入ってきた。


「家賃払いな!!!!!」


 ここの大家さんである。


 異世界転移した俺はシャルと一緒にホームレス生活を続けていたが、なんかいろいろと厳しかったので、モンスターを倒しまくり、その金で家を借りることにした。


 身分証を持っていなかった俺達が家を借りるのは大変ではあったが、この大家さんはそんな俺達を見捨てなかった女神である。逆に言えば、足元を見てぼったくり家賃を請求してくるヤバい婆さんである。


「大家さん! 家賃はもう払いましたよ!(´・ω・`)」


「うちは昨日から週払いになったんだよ! 早く払いな!」


「えー! 今、お金持ってな……あっ!」


 大家さんはちゃぶ台に置いてあった財布から全額抜き取った。


「チッ、足りないが今週はこれで許しておいてやる。あと契約内容変更で明日から日払いにするからちゃんと用意しておくんだよ!」


 大家さんはそのままドアを思いっきり閉めて帰った。


「そ、そんな……(´;ω;`)」


「ふわぁ……魔王が征服する世界になって人々も気性が荒くなっているようだね」


 シャルはあくびをしながら言った。なんて厳しい世界なんだろうか。


 ちなみに契約者は俺だし、家賃を払っているのも俺だが、流石にシャルを一人だけホームレスとして置いておくわけにはいかないので同居させている。どういうわけか家賃二人分払うことになったが(´;ω;`)


 こうして借りた家は『タナケンハウス(二代目)』(※)と名付け、俺とシャルの拠点となった。


(※初代は現実世界で投資したワンルームマンション。)


 俺は紳士だからやましいことは考えていない。でもシャルは何も考えずに生活しているからラッキースケベ的なことが起きる。この間も「きゃー! えっち!」とシャワー中に悲鳴があがった。


 ちなみに悲鳴をあげたのは俺。寝ぼけて入ってこないで(´・ω・`)


 そんなこんなで大家さんによって一文無しになった俺とシャルは今日のメシを手に入れるため、街へ出かけた。


「タナケン〜、お腹すいたよ〜」


「我慢するんだ。家から持ってきたパンの耳二切れが俺達の最後の食糧なんだ。ここぞという時まで温存しておくんだ」


 とはいえ、俺も最近まともに食べていないからフラフラだ。


「くっ、またモンスター討伐しなければいけないのか。いくら無傷でも襲われるのはなかなか怖いんだよな……ん? あれは……(´・ω・`)」


 街を歩いていると、道端に少女が倒れていた。異世界転移した日に見かけた奴隷の子だ。


「おなかすいた……」


「またお腹空かせている(´・ω・`)」


「大変! これ食べて!」


 シャルは家から持ってきたパンの耳を少女の口に突っ込んだ。


「ムシャムシャ(咀嚼音)」


 一瞬で食べ終えた少女は目を開けると、全身が光り始めた。前回と同じように少女は習得したスキル玉を取り出すも、字が読めないようだ。


「これ、なに?」


「どれどれ、ドカ食い気絶スキル(レベル2)だって」


「レベルが上がった……(´・ω・`)」


 少女は「お昼寝しようかな」と言い、スキル玉を体内に戻した瞬間、寝てしまった。そこへサングラスの男がやってくる。


「また脱走して! 食費が他の子の5000倍かかっているのに言うことも聞かないとは……このままでは大変だ! 値下げしてでも売らないとニコニコ奴隷商会は潰れてしまう!」


 サングラスの男は嘆きながら寝ている少女を引きずって去っていく。


「かわいそうに……魔王がいなければ普通に暮らせていたのに……」


 シャルは自分の無力さを嘆くように呟いた。でも、あの子は割と脱走していたり、結構ご飯食べさせてもらっているような気する(´・ω・`)


「しかし、シャル。貴重なパンの耳をあげてよかったのか?」


「いいの。誰かが腹ペコになるぐらいなら自分が腹ペコになった方がマシだ……ってね」


 キリッとかっこつけるシャルだったが、腹から音が聞こえてくる。


「仕方ない。このパンの耳でギャンブルをするか」


 俺達は街の近くにあるモンスターが出てこない森に行き、その奥にある湖に向かった。


「よし、着いた(´・ω・`)」


 とても大きな湖で、視界いっぱいに広がっている。水面には青空が浮かんでおり、俺達の他に誰もいない平和な光景。


 ……なんだけど、湖の先には禍々しい魔王城が聳えているし、その上空は夜のように真っ暗で稲光が走っている。こえー(´;ω;`)


 一応、湖と魔王城の中間部分にクビになった勇者が作った結界が展開されている。なんか水に浮かんでいる油みたいな感じで光っているからわかりやすい。


「タナケン、湖でなにするの?」


「まー見てなって(´・ω・`)」


 道中で拾った木の棒に、家から持ってきた糸と針を取り出す。セロハンテープでペタペタとくっつけて、最後に針を隠すようにパンの耳を刺した。


「できた! タナケンオリジナルつりざお!(`・ω・´)」


「そんなので釣れるの?」


「そんなのとか言うな! これで釣れなかったら今日の夕飯は抜きなんだぞ!( `ᾥ´ )」


「私達の未来はそのボロいつりざお次第なんだね」


 俺はシャルにカッコ良いところ見せようと思いっきり、両手でつりざおを構えた。剣道の上段の構えみたいにタナケンオリジナルつりざおを天に突き上げる。


 そして、思いっきり振り下ろした。魚がいそうな遠くに針が飛ぶように!( `ᾥ´ )


 その瞬間、タナケンオリジナルつりざおから衝撃波が発生した!!!!!!


 衝撃波によって湖は真っ二つになり、道のような陸地が生まれる。そのまま衝撃波は結界を突き破り、魔王城を切り裂いた。


 ドッカーーーーーン!!!!! ガシャガシャガシャ!!!!!


 魔王城は木っ端微塵になり、さらに後ろの山を貫通しながら衝撃波は遥か遠くまで進み続けた。


 …………(・ω・`)


 …………(´・ω・)


 …………(´・ω・`)


「なんなの、今の!!!???(´;ω;`)」


 俺は恐怖のあまりにタナケンオリジナルつりざおを落としてしまった。地面に叩きつけられたタナケンオリジナルつりざおはポキッと折れてしまう。


「凄いよ! タナケン、今のもマッチョタンポポによる技なの!?」


「……シラナイ(´;ω;`)」


「え?」


「オレ、アンナノシラナイ(´;ω;`)」


 俺は目の前の壊滅的な状況を見て、後退りした。そして、そのままコケた。


「ぐえー!(´;ω;`)」


 ポロン! コロコロ……。


 転んだ衝撃で、俺の体内からめちゃくちゃ発光する光の玉が飛び出た。


「タナケン、大丈夫? スキル玉落としたよ」


 シャルは俺が落とした超眩しいスキル玉を拾い、偶然持っていたサングラスをかけてスキル名を読み上げた。


「無敗の一刀両断(Undefeated Cut in two swords)スキル……これ、マッチョタンポポじゃないよ!?」


「それは夢の中で貰った五大スキルの一つ……!? やっぱり現実だったのか!?(´;ω;`)」


 確か剣術系のスキルだったはず。まさかあのボロいつりざおが剣属性の武器として判定されてスキルが発動したのか!?(´;ω;`)


「それにタナケン! このスキル、レベル999だって!」


 …………(´;ω;`)


 いや、めっちゃインフレしているやんけ!(´;ω;`)

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