第37話 モンスターだらけの世界

「今まで何していたんだ?」


「えーっと、高校卒業後はタンポポのせまくり工場で〜」


「高校? タンポポ? お前は何を言っているんだ???」


 俺はハ◯ーワークみたいなところで、仕事を探してもらっていた。やはりこの世界は俺が住んでいた世界とは違うところらしく、俺が「ジャパニーズ!」と言っても住民は「ハァ?」と頭を傾げるだけである。


「そんでスキル欄に何も書いていないんだけど?」


「資格のことですよね。俺、会社のタンポポのせ検定では三級だったんですけど、プロフィールに書いていいのかわからなくて……」


「だからタンポポってなんだよ! スキルだよ! スキル!」


「スキル? そんなものないですよ(´・ω・`)」


「いや、なんかあるだろ! 水ジャバジャバとか筋肉モリモリとか」


 水ジャバジャバ……筋肉モリモリ……?


 なに言っているんだ、この人……(´・ω・;`)


「もうなんでもいいので仕事を紹介してください!」


「ん? 今なんでもって言ったか?」


「お金がなくてホームレスなんです! 本当になんでもいいので!」


「ふむ……なら、これなんてどうだ」


 ハ◯ワの職員はそう言って、俺に仕事を紹介してくれた。


『モンスターを討伐するだけの簡単な仕事です!』


 と書かれたチラシを渡された。チラシの端っこには地図が書かれており、そこへ行けば誰でも仕事が貰えるとのこと。どうやら日雇いの仕事で、面接も履歴書も不要という異世界転移した俺に打って付けの仕事だった。


 でもモンスターを討伐って不安だ(´・ω・`)


 一応、簡単な仕事ですと書かれているし、RPGゲームなら最初は弱いモンスターしか出てこないから、ガントバシウサギみたい雑魚モンスターを討伐する感じなんだろうけど、また熊みたいなのと遭遇したら嫌だなぁ(´・ω・`)


 俺は不安を抱きながら仕事が貰えるという城へ向かった。街では勇者がおでんをツンツンした話題で持ちきり状態。お先真っ暗な雰囲気が漂っていたが、それ以上に今日の夕飯代を稼げるかどうかの瀬戸際だった俺は清水の舞台から飛び降りる気持ちだった。


「ハ◯ワから電話があって話は聞いている。お前がモンスター討伐の仕事をしたいと言っていたタノノンか」


「タナケンです。是非やらせてください!」


 この世界って電話あるのか。意外と近代的なんだなぁ(´・ω・`)


「じゃあ、この誓約書にサインしてくれ」


「ここに名前を書けばいいんですよね」


 俺は言われた通りに名前を書いた。しかし、よく見ると「死亡してもウチらは責任負わないよ!」みたいなことが沢山書かれていた。


「それで家族に渡してほしいものはあるか?」


「渡してほしいもの?(´・ω・`)」


「遺書とか形見になるようなものさ」


「え……どういうことですか?」


「おいおい、モンスター討伐だぜ? 生きて帰ってこれる保証はないんだぜ?」


「……でも簡単な仕事って書いてあったし、基本的には死にませんよね?(´・ω・`)」


「ははは、何言っているんだ。この数年間、討伐に出て戻ってきたのは勇者達ぐらいだぜ?」


 …………(・ω・`)


 ブラック企業ってレベルじゃねーぞ!(´;ω;`)


「嫌だ! おうち帰る!(´;ω;`)」


「うわっ! こいつ、いきなり情けない顔になりやがった!」


「当たり前じゃ! 死にたくないわい!(´;ω;`)」


「誓約書にサインしたんだ! もう引き返すことは許されない!」


「そんなー! 労基に相談してやるー!(´;ω;`)」


「おら! 意味わからんこと言っていないで来い!」


 こうして俺は依頼人に引きずられながら、街の入り口まで連行された。


「ぎゃふん!」


 街から追い出されるように放り出された俺は尻餅をついて変な声が出た。


「モンスターを討伐するまでは戻ってこれない契約だ。期待していないが頼んだぞ!」


「嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!(´;ω;`)」


「駄々こねるな!」


 俺が駄々をこねていると、町側から「おーい」と声が聞こえた。俺の依頼人と同じ服装をしたおっさんと女性が小走りでやってくる。


「どうした?」


「俺のとこにもモンスター討伐の仕事がしたいって言う奴が来たんだ。せっかくだから、そいつも連れていってくれ」


「ほう、同じ日に二人も志望者が来るとは珍しいな」


 やっぱり誰もやりたがらないブラックな仕事なんだ(´;ω;`)


「ほら、あの泣きじゃくっている情けない奴がお前のパートナーだ」


「情けない奴で悪かったな(´;ω;`)」


 そんな俺の前に歩いてきたのは、(異世界転移後の俺と)同い年ぐらいの少女だった。長い銀髪がとても綺麗で、整った顔つきはどこか外国人っぽい雰囲気がある。


「ふふっ、よろしくね」


 少女は鼻水を垂らしている俺に微笑みかけてきた。可愛らしい笑みで、一瞬だけ恐怖が和らいだ……気がするけど、多分気のせいだし、めちゃくちゃ泣いた(´;ω;`)


「んじゃ、シャルロット。このタナポンとかいう男を連れてモンスターを討伐してこい」


「はーい。ほら、行くよ」


「嫌だー!(´;ω;`)」


 俺は少女に引きずられながらモンスターの住処である森へ向かうことになってしまった。


 そう、これがシャルとの出会いだった。


 ……おうちに帰りたい(´;ω;`)

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