第36話 異世界転移
「ピギィー! ピギィー!」
俺は目を疑った。ふざけたマスコットキャラクターみたいな二頭身のウサギが中指を立てながら俺を挑発していたからだ。
「つーか、ここはどこだ……ん?」
なにか嫌な予感がした。理由があったわけではない。ただ背後から嫌な気配を感じたのである。俺は立ち上がりながら後ろを振り返った。木と木の間にある茂みから気配を感じる。俺の後ろでは「ピギィー! ピギィー!」とキモいウサギがぴょんぴょん跳ねているが、そんなことよりも気配の方が気になる。
カサカサ!!!!!
茂みから音がした。草木は大きく揺れて、大きな生き物がそこにいることが一目でわかった。
「ピギィ?」
後ろのキモいウサギも気づいたのか、ようやく静かになった。
次の瞬間、とてつもなく嫌な予感がして気づいたときには体が動いていた。茂みから距離を取ろうと後退りしてから数秒後、茂みから大きな熊が出てきた。
『グォオオオオオオ!!!!!!』
大きな咆哮をあげた熊は見たことない大きさ……というかそもそもリアルで熊を見たことなかったけど、明らかに記憶の中にいる熊とは別次元の大きさだった。俺の数倍……7メートルぐらいはあるだろうか。とにかく熊ってレベルじゃない大きさだった。
こういうときは……(´・ω・;`)
死んだフリだ!!!!!( ˘ω˘ )スヤァ……
「ピギギ!? ピギィー!」
ん?
後ろにいたキモいウサギは慌てて逃げ出している。しかし、二頭身の短い足では歩幅が狭く、逃げるスピードはかなり遅い。
『グオオオオ!!!!!』
キモいウサギが逃げたことで巨大熊は戦闘モードに入ったと言いたげな咆哮をあげる。
……( ˘ω˘ )
逃げた方が良い気するわ( ˘ω˘ )
俺は慌てながら起きて逃げようとした。
「キモウサギ! ま、待ってく……ぎゃふん!」
恐怖による震えで躓いてしまった。後ろから巨大熊の大きな足音が聞こえてくる。トラックに轢かれたばかりなのに今度は熊に襲われるなんて聞いていない(´;ω;`)
俺は顔を守るように両手をクロスさせつつ、本日二回目の死を覚悟した。
……が、死ぬことはなかった。
俺の腕に噛みついた巨大熊は涙目になっていた。
「へ?(´・ω・`)」
巨大熊がゆっくり口を開くと、ポロポロと大きな牙が砕け落ちた。
『くーん! くーん!』
巨大熊は子犬みたいな鳴き声をあげながら茂みの方に逃げていった。
噛まれた腕を見てみたが擦り傷すら負っていない。
「逆に怖い!!!!!(´;ω;`)」
なんで無傷なの!? 俺の腕どうしちゃったの!?(´;ω;`)
……ま、助かったしいいか(´・ω・`)←情緒不安定な主人公
「ピギィー! ピギィー!」
「あのキモいウサギ、まだ逃げているぞ」
俺は両手をぶんぶん振りながら逃げるキモいウサギを追いかけて、垂れた耳を掴んで捕まえてみた。
「ピギィー! ピギィー!」
「こら、暴れるな。助けてやったんだから大人しくしろ(´・ω・`)」←助けたわけではない
俺はキモいウサギを片手に掴んだまま、森を抜けることにした。こんな危険な場所にいられるか! 俺はこのウサギと一緒に森を抜けるぞ!(´・ω・;`)←一人だと心細い主人公
巨大熊が逃げた方とは真逆に歩き続けると、森を抜けた。しばらく草原を歩き続けていると、町が見えてきた。
「お主、見かけない顔じゃが?」
街の入り口でヨボヨボの爺さんに話しかけられて俺はなんて返事するか悩んだ。町もヨーロッパみたいな雰囲気だし、爺さんも白くて長い髭でファンタジー感が漂ってきているし(´・ω・`)
もし、これで「別の世界から来ました!」と答えて、「なんじゃと!? このよそ者が!」的な感じで村八分にされたらどうしよう……うーむ(´・ω・`)
「最近ここに引っ越してきたタナケンです」
「ほう……タケケンさんか」
「いえ、タナケンです」
「変な名前じゃのぉ」
「うるせー(´・ω・`)」
ひとまず、怪しまれずに済んだようだ。ひとまず、わからないことが多いし、ここで情報収集でもしておくか。
「むぅ? お前さん、その手に持っているモンスターは!?」
「ん? ああ、さっき森で捕まえたんですよ」
「ピギィー! ピギィー!」
俺に耳を掴まれているキモいウサギは変な鳴き声をあげながらジタバタと暴れている。
「間違いない……ガントバシウサギじゃ」
「ガントバシウサギ?(´・ω・`)」
「お主は若いから知らなくても仕方ないのぉ」
若い? 俺は民家の窓に映っている自分を見てみると少し若返っているように見えた。そう、高校生時代の俺だ。あの特に青春らしいこともなく、ぼっちだった頃の俺だ……うぅ(´;ω;`)
「しかし、まだ生き残っていたとはのぉ……」
「このウサギ、そんなにレアなモンスターなんですか?」
「うむ。昔は沢山いたんじゃがのぉ……魔王があちこちに現れてから凶暴なモンスターが増えてしまって、ガントバシウサギはどんどん捕食されてしまったのじゃ」
「雑魚モンスターっぽい見た目していますしね(´・ω・`)」
「ここ何年も発見報告がなかったから絶滅したと噂されていたが、まだ生息していたとはのぉ……。わしが子供の頃はよく狩っていたから懐かしいのぉ……」
「絶滅しかけているのって人間のせいじゃない?(´・ω・`)」
と話している間もガントバシウサギは暴れまくっていて、宙を左右に揺れている。
「元気なウサギじゃのぉ……。そうじゃ! ニンジンをやろう」
爺さんは家からニンジンを持ってきて、暴れているガントバシウサギの口に突っ込んだ。
「ピギィ〜! ムシャムシャ……」
ガントバシウサギはそのままニンジンを完食しておとなしくなった。
「うーん、森に戻してきても捕食されてしまうみたいだし、爺さんにあげますよ」
「おお! 別に飼いたいわけじゃないし、どちらかと言えばいらねぇ寄りじゃったが、せっかくだから飼うかのぉ」
俺がガントバシウサギを離すと、そのまま爺さんの頭の上に乗った。どうやらじいさんに懐いたようだ。ニンジン一本でペットになるとはプライドのないモンスターだ(´・ω・`)
「お前は今日からウサ太郎じゃ!」
「ピギィー! ピギィー!」
「森の中にいるよりは安全だろうし、良かったな」
「そうじゃ。無理やり押し付けられたような気もするが、お礼としてアレをやろう」
爺さんは家から分厚い本を持ってきて、俺に渡してきた。
「モンスター図鑑じゃ。これを読めばモンスターのことがなんとなくわかったような気になれるぞぃ」
「ありがとうございます。あんま期待できなさそうですけど、こういう感じのアイテムが欲しかったので助かりました!」
モンスター図鑑を手に入れた俺は歩き読みしながら町を探索していると、後ろから大きな声が聞こえた。
「大変だー! 大変! 大変!」
「うん?」
「勇者が! 勇者がおでんをツンツンして炎上してクビになった!!!!!!」
「勇者?(´・ω・`)」
俺がはてなマークを浮かべていると、周りにいた人間達は「なんだってー!!!」「そんな……」「もう終わりだ、モンスター達に支配される……」と驚きだったり、絶望だったりとなんか凄いことが起きてしまった感じが伝わってくる会話が繰り広げられる。
そのとき、一人の男が言ったことを俺は聞き逃さなかった。
「新しい勇者に期待するしかない」
……そういや、銀髪の女性が勇者になれとか言ってきたような気する(´・ω・`)
「ひょっとして俺のこと?(´・ω・`)」
俺の一言に周りの人達の会話は一旦途切れる。
「誰だ、おめー」
「こいつ、知っている?」
「知らん」
「本当に誰なの、アンタ」
…………(・ω・`)
布団に潜りたい(´;ω;`)
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