第22話 暴食王者になるのは君だ!
「ようこそ! 大食い選手権へ! 暴食王者になるのは一体誰だ!?」
俺達三人は賞金1億ゴールドを手に入れるため、大食い選手権の会場に来ていた。
街外れににある大きなスタジアムで開催されており、大会MCと思われるちょび髭生やした男性が会場を煽っている。会場内には参加者が数えきれないぐらいうじゃうじゃいて、俺らはその一部と化していた。
「暴食王者になりたいかー!?」
「「「おー!!!!!!!」」」
クロは周りにいるモブ達と一緒に拳をあげて叫ぶ。俺も一応「お、おう……」な感じで、その場のノリに合わせておいた(ノリが悪い主人公)。
「アイリも声出そうよー」
クロは他人のフリをしていたアイリの腕を掴んで無理やりあげさせようとしている。
「嫌よ! 恥ずかしい!」
アイリは耳を赤くさせながら、腕をすぐに下げる。
「というかなんで私とタナケンも参加するわけ!?」
「延滞金を支払う期限は明日までなんだ。念には念を入れて総力戦で挑むしかないだろう」
参加費5000ゴールドは痛いが、数日前からなにも食べていないから食べ放題のお店に行ったと思えば割と良いかもしれない。なにより……
「それにもし払えなかったら……タナケンハウスは解散だからな……最後の思い出作りにでも……」
「歓迎会からたった二話で解散なんて言わないでよ!」
アイリはメタ的なツッコミを入れる。俺だって悲しいわい。
「いいか、クロ。俺達の命運はお前にかかっていると言っても過言ではない。必ず勝ってくれ! あとドカ食い気絶スキルは大会が終わるまで預かっておくから」
「クロは賞金なんていらないよ。沢山食べれれば、それでいいのー」
「ある意味心強い発言だが、賞金がなければお前も大変なことになるんだぞ」
「へ? なんで?」
クロは呑気に首を傾げる。なにもわかっていない様子だ。
「いいか、差し押さえになったら奴隷も競売にかけられてしまうんだ。アイリの立場に関しては俺もよくわかっていないが、お前は一応奴隷扱いになっているからな」
「競売にかけられたらどうなるの?」
「俺と離れ離れになって昼寝なんて一生できない。地下に送られて毎日よくわからない装置をグルグル回りながら押すだけの人生になる(大袈裟)」
「そ、そんな……」
クロはカビーンと言いたげなほどショックを受けている。そんなに俺との生活を気に入っていたのか(※)。
(※昼寝がしたいだけ)
「はーい! ミンミンだよー! 今日は大食い選手権の応援ガールとして皆さんを応援しまーす!」
うわ、出やがった。ぼったくりアイドル。
「ミンミンちゃんの挨拶も終わったということで、これより第一回戦を始めよう!」
MCがマイクを持ちながらテンション高めに声を上げると、参加者(めっちゃ多い)も歓声を上げた。うるせー。
「第一回戦はこれだ!」
スタジアムにある大きなモニターにハンバーガーの絵が表示された!
「ジャイアントハンバーガー10個早食い対決ー!!!!」
ドンドン! パフパフ!(太鼓とかラッパとかそういう感じの音)
ハンバーガーか。早速10個食べなきゃいけないなんて、なかなかハードな大会だ。
「こちらは街でも有名なヒトデバーガーさんで販売されているジャイアントハンバーガー! 一個2000ゴールドと販売価格も凄まじいものの、成人男性の拳四つ以上の大きさは圧巻だー! ちなみに使われている肉はヒトデの肉という噂もあったり」
一個2000円ゴールド……参加費5000ゴールドだから3個食べるだけで元が取れるのか。なかなか良心的な大会だ(手のひらを返しながら)。
「参加者は2万人! ジャイアントハンバーガー10個を食べ切った先着1000人が第二回戦へ進出できるぞ!」
一気に20分の1まで減らすのか……つーか参加者多いな!
「よし、クロ、アイリ! 絶対勝ち抜くぞ!」
「おー」
「だから私はやらないってば!」
アイリはまたクロに腕を上げられそうになり、慌てて手を振り解く。
ドン!
「いてっ……誰だ?」
誰かが後ろからぶつかってきて倒れかけた俺は後ろを振り返る。
そこには身長2メートルを超えているであろう大男が立っていた。
「なんだ、お前らは? まさか参加者とか言わねーよな」
「なんだはこっちのセリフじゃ、ボケェ! 参加者でわりーかよ!」
俺は主人公にあるまじき暴言で返すが、大男は「これは笑えない冗談だ!」とか言いながら爆笑しはじめた。思いっきり笑っているじゃねーか。
「大食いは遊びじゃねぇ! 半端な気持ちで参加しているのならさっさと家に帰りな!」
大男は怒鳴りつけるように怒鳴った(某構文)。
「半端な気持ちだと!? 勝手に決めやがって! 俺らがどんな思いで参加しているのか教えてやろうか!?」
今度はこちらが怒鳴りつける。大男はニヤリと馬鹿にするように笑った。
「ほう……そこまで言うのなら、教えてもらおうじゃねぇか」
「俺は明日までに滞納金9000ゴールドを返さなきゃ差し押さえで人生詰むんだ! 俺らは大真面目だぜ!!!???」
俺が大きな声で言うと、大男は後ろに一歩だけ後退りした。
「ほう、それは……え? というか滞納金9000ゴールドあるならこんなところにいて大丈夫なんですか?」
俺達の必死さが伝わったのか、いきなり敬語になる大男。
「流石にあんちゃんじゃ優勝は難しいだろうし、後ろの女の子達もねぇ……。滞納金って払えない場合、どこかに申請すれば待ってくれる的な話を昔聞いたような気もするが……すまねえ、俺はそういうのあまり詳しくないんだ。ま、まぁ……滞納金を返せるといいな、頑張れよ……」
大男は俺達に何も参考にならないアドバイスを言い残して去っていった。
なんだよ、意外に良い奴じゃねぇか……。
「んじゃ、俺は自分の席を探すから二人とも頑張れよな!」
「沢山食べるぞー」
「はぁ……やれるだけやるわよ」
こうして俺達の命運をかけた大食い選手権が始まった。
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