幕間―或る男の葛藤―

 ――薄暗い部屋。

 PCの画面だけが光るその部屋で、一人の男が画面に向かっていた。

「駄目だ」

「駄目だ。また糞だ」


 男は虚ろな瞳で画面を眺める。

 幾度も、幾度も文章を消したり、足したりを繰り返し行っている。

 どうやら、男はゲームを作っているらしかった。


「こんな糞を世に捻り出すことは許されない」

「もっともっと、一文一文を究極的に」


 文章を消す。

 文章を書く。

 文章を消す。

 文章を書く。


 そうして繰り返された執筆の果てに書かれた文面。

 果たして、それは、男の望んだものであったのだろうか。


「もっとだ。もっと完全な作品を。

――『二銭銅貨』に負けない程の。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る