UNO!7
手札が十七枚になったとき、しくじったと思った。
他三人はカードを何枚もドローしていたのだから、もう少し疑うべきだったのだ、と大石は思った。
それから手札を捨てていき、残りが十四枚になったとき、上代さんが『白いワイルド』を切った。そこで、上代さんから「大石君のおかげです」といわれたとき、大石は当時のやりとりを思い出した。
このときまで、自分が話したことすら忘れていた。
上代のことは高校一年のとき、自分に似た雰囲気のやつがいるなぁ、ぐらいにしか思っていなかった。そんなときに、話しかけられたのだった。
だれかのためなら頑張れる……。大石は過去の自分の言葉を反芻してから今までのプレイを振り返った。
今まではすべて自分が勝つことばかり考えていた。村井のチャレンジを誤ったときも、自分が勝つことだけを考えて、そのプレイにはなにかの裏があるに違いない、と思いこんでいた。大石は思った。
……俺は、だれも信じようとしていなかった。
先月ごろからどうにも広瀬の行動が不審だと思っていた。
あるときの放課後、広瀬が図書館に入るのを見て、大石は図書館前で待ち伏せした。広瀬が自分から図書館にいくことなど、これまでの人生で一度もなかったからだ。
少しして、広瀬がだれかと出てきた。あの大きなリュックを背負っているのは、村井だ。
二人は体育館裏に隠れて、なにかの話し合いをしていた。大石はその様子を目撃していた。
大石は、村井が広瀬といっしょに自分のことを
だが、今となってはそれは間違っていた、とわかる。
きっと、広瀬は俺を改心させるつもりなんだ、それも平等な『ゲーム』という最も俺が納得するやりかたで。
広瀬や村井が自分のためにここまで計画立てて助けようとしてくれていたのに、自分はその手を払うかのように、疑って信じなかった。
その結果がこのざまだ。大石は十四枚に膨れ上がった自分の手札を見た。
それは今まで自分が誰かを信じようとしなかったことから生まれた
だが、今さらそれに気づいたところでなにができる、俺はあいつらのためになんの恩返しができる?
手札には、白いワイルド、シャッフルワイルド、赤7・スキップ・リバース、緑5・8・9、黄4・6・9・スキップ、そして俺が一番好きなカード、場の色を変えられるワイルドが二枚。
カードをゼロ枚にしたプレイヤーが勝つ、つまり優勝できるのは一人だけ。
しばし考えて、大石にある案が思いついた。だが確実じゃない。少しでも間違えば大惨事になる。だが、今の大石にはこの方法しか考えられなかった。
大石は村井が赤2で自分にターンをまわしたとき、手札から『白いワイルド』を切った。
「大石選手が二枚目の白いワイルドを出しました! 次に場に出す色と効果を指定してください」
……もし、うまくいかなかったときは、俺の負けだ。手札は残り、大石十三枚、上代一枚、如月二枚、村井二枚。
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