第38話 後片付け2
庶民への炊き出しの後は、崩壊した庶民外のがれき撤去と復興作業をしている兵士の皆さんへの差し入れを持ってきた。
主な差し入れは、ジャーキーと石鹸とコーンで作ったお酒、消毒用のアルコールに包帯、ブイヨンやベーコンとポトフのレシピ、あとはポプリ用のフルーツで食べ切れなかった物をつぶしてジュースにしたミックスジュースに炭酸水だ。
炭酸水は酒を割ったりビタミンの補給に使ったりするのに便利なんだ。
「おつかれ~、そろそろ今日の作業は上がりだと思って差し入れ持ってきたぞ~」
作業をしていた顔見知りの兵士が、俺の持ってきた大量の差し入れを見て、疲れ気味だった兵士が大きな声でみんなに声を掛けた。
「お~い、作業終了!レイショ騎士爵から差し入れと炊き出しが来たぞ~。
本日の作業終了!焦らず迅速にに道具を片付けるように」
「「「「「おおおお!」」」」」
それから二〇分ほど、出来上がったポトフと酒、飲めない兵士にはミックスジュースを配っていると、落ち着いたのかポッドがやってきた。
「もう大丈夫なのか」
「あぁ、いつまでも引きずってはおれん……封印中とはいえ魔王じゃからな」
「わかった、じゃあ酒とミックスジュースの好みを聞いて、この炭酸水で割って提供してくれ。
原液を小さいお玉一杯入れてから炭酸水で希釈だ」
「心得た」
その後全員で晩御飯を食べてから、傘型テント二式を二つ連結させた風呂に入ってもらう。
騎士団本部は屋敷が破壊された貴族街と平民街の境目に住む貴族の臨時避難所として使っているので、騎士たちの一部はテント暮らしになる。
さて、風呂の話だが、二つ繋がったテントの手前が更衣室で、更衣室の奥に浴槽を設置している。
傘型テント二式のいいところは、テントとして使うだけでなく、多目的に変形して使用できる拡張性だ。
側面にある目隠し用の布を二カ所開放してつなげることで、縦に何個でも連結できるし、さらに大きな面積の布を外して隣接させ円形に並べれば、野戦病院や作戦本部にもなる特大テントもできる。
王国騎士団にも使ってみてもらい、有用性に気づけば購入してもらえることを期待している。
王都の復興に関しては動き出したから、あとは国王たちに任せておけばいいだろう。
残りの後始末といえば、北辺境派の元貴族領の再配置になるが、これもムセイらに丸投げして逃げている。
「レイショ、これはいいテントだな……」
「気に入ってくれたか、キルデス」
「あぁ、俺は移動しながら各地で野営をしているが、これなら武具も身体も手入れをしやすそうだ」
「よければプレゼントするよ。新しい不二流の後継者の門出に」
「かたじけない。
謀反に参加していたのに俺は大した咎も負わなかったが、それもレイショが?」
戦闘中の頭の切れもすさまじかったが、やはり頭は悪くないんだな。
ちなみにキルデスは酒が苦手なのか、酔いたくないのか知らないがミックスジュースをおかわりしていたと付記しておく。
「そうだともそうじゃないとも言い難いな。
減刑は願い出たが、そもそも王家直属の調査で謀反の中心人物としてではなく、戦力として雇われただけだと調査がついていたそうだ。
国王も元々重い罪にする予定は無かったということだ」
「そうか。では、国王より拝命した王都復興により一層励まねばなるまいな」
「それが終わったら、不二流の十大奥義を全部覚えて欲しい。
そして二年後にお互いの考えた十一個目の奥義を戦わせて、正式な後継者を決めような」
「ふふっ、それは楽しみだな」
いいところだったが、後片付けを終えたポッドが戻ってきた。
「お前さんよ。炊き出しは終わったからメイド達と屋敷に帰ろうぞ」
「あぁ、わかった。すぐ行く。じゃあなキルデス。また明日会おう」
「うむ、また一緒に汗を流そう」
屋敷に帰ってから風呂に入り、就寝の準備をしているとポッドがやってきた。
「のう、此度の戦いでは、何故かワシが昔よりも圧倒的に強くなっておった。
封印されてからの一年近く、メイドとして働くだけで戦闘などしておらんにもかかわらずじゃ。
それに魔族は使えないハズの聖属性魔法……王都決戦直前にお前さんに言われて使えると分かった魔法じゃ。
こういう本来使えないハズのスキルが勝手に増えることが、お主の言っておったスキルリンクの力か?」
「あぁ、そうだな。それこそがスキルリンクの力だ。
ふむ……実際に見せるから。ポッド、念のため俺のスキルの数を見てくれるか?」
「ふむ……今は161じゃな……む?筋力がAAAA+?見たことない表記じゃが……。
それにお主いつの間に剛剣なんて手に入れたんじゃ?これはキルデスとか言う男のスキルじゃ?」
「そのとおり、今日使えるようになった。
ちょっとお前のスキルも見るぞ。うん、スキル数144に筋力AAAA-だな」
「封印される前よりも圧倒的に増えているな。理由は何じゃ」
「スキルリンクは言うなれば絆の力さ。自分の仲間になった相手の能力とスキルを借りて自分のスキルとして使えるのだ」
「仲間の力のう?」
「俺は人々を救うことでその支援を得る、魔王であるポッドは強さで魔族を従えることで、仲間を増やして自信を強化できるのさ」
「それが"百才"の正体か」
「二人合わせた三百歳だぞ」
「じゃかーしい」
そう言ってポッドは出て行ってしまった。
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