第4話 到着、レイショ騎士爵邸
翌日、俺は昨日飲み明かした奴隷商人達に挨拶をして預かる奴隷と貰う奴隷の契約書を交わしてから、夕方頃に二〇人もの大所帯でレイショ騎士爵邑に帰還した。
取り敢えず、奴隷たちは下賜頂いた旧ヴィゾン邸こと、俺の新居であるドーレイン騎士爵邸に全員を泊まらせた。
屋敷は前倒しに下賜いただいていたので、俺とポッドの二人で最低限の生活スペースは利用できるようにしておいたのだ。
ポッドも魔王になる前は上級魔族だったので、戦闘技能だけでなく貴族としての礼節などは身につけているのだが、それが嫌で飛び出して魔王になった経緯がある。
きちんとしていれば貴族として必要なことは一通りのことは出来るのだ。
メイドも全員を自分のパーティメンバーとすることで、これからスキルの把握や強化がしやすくなるので、教育期間は完全に仲間として扱っていくことにした。
そのため、まずは綺麗な食事の食べ方を教えるという名目で、しばらく食事は奴隷たちと同じ飯を同じ食卓で囲むことにした。
困惑されることもあったが、そういう命令だと言い切ることで無理やり慣れてもらった。
そして、俺はその翌日にポッドとともに奴隷たちの健康診断を行った。
貴族は使用人に身体を見られることは慣れているだろうが、先日まで奴隷だった彼女らの服の下を俺が確認するわけにはいかないから、傷の有無などを含めてポッドに点検させることにした。
夕方までかかったが、これも必要なことだから仕方ない。
その間に俺が消化に良い夕食を作り、全員揃って大食堂で食べてから、傷のあった者、病気がある者に関しては俺が面談し、改めて回復魔法や物理的な治療を施した後、念のため安静と言うことでベッドに寝かせた。
そういった健康状態に懸念のある者には医者を手配し、体力の回復に努めてもらう。
しかし、いまだに役割を与えられて居ないからか、奴隷たちが不安がっているのだ。
「体力が回復次第正式に仕事を与えるが、君たちにはその体力が足りてない。だから、まずは体つくりに努めてくれ」
と言い聞かせて、ポッドに奴隷たちの世話を命じて一週間ほど留守にすることを伝える。
さてさて、俺自身はまだまだ貴族らしさが足りないから、貴族と使用人について学ばなければならない。
まずは王都にとんぼ返りし、とある服を一着オーダーメイドする。
服なんて既製品で良かったのだが、俺のサイズがなかったのだ。
同じデザインの服でさらに四十着……これは奴隷たちに着せるものだ。
下着は村で買えるが、服はそうもいかない。
キチンとしたテーラーで作ってもらい、村のテーラーを屋敷に呼んでサイズのお直しだけお願いすることにした。
こうしておけば王都の店に型紙を保存してもらえるから、次から安く注文できる。
次は予め知り合いであるレイモンド子爵の上屋敷にアポイントメントを取って、貴族家にあるべき調度品やメイドさんの所作などについて学ばせてもらった。
ポッドも元魔族上級貴族のため、多少の知識はあるのだが人類式の礼儀作用は知らないから、代表して俺がメイドとしての心得や技術を学ぶことにしたのだ。
王都に努めるメイドさんは本当に上品で洗練されていた。
実はレイモンド子爵は、王家に昔から存在する対外国向けの諜報機関の役員だ。
故に子爵でありながら、辺境に領地を構え数人の辺境貴族と連携を技術に資金にと援助をしている。
そのため他の貴族との付き合いや応対の経験が非常に多く、パーティや賓客の扱いに関しては抜群の知識を持っていた。
そこで三泊させてもらい、ある程度の常識やパーティの準備と最中の動き、心構え等を叩きこまれた。
貴族邸に必要な家具や調度品の調達をリスト化し、王都の店で家具を注文する。
本当はオーダーメイドしたいのだが、急ぎであることを伝えて出来合い品や中古払下げの品で間に合わせた。
ヴィゾン騎士爵が調度品に拘らない清貧の騎士であったため、屋敷の調度品は応接室と玄関以外はほとんどなかった。
さて、あとは人数分の生活雑貨と掃除用具……調理器具もか。
本当に起業には金がかかる。
褒賞金の金貨はすでに半分を切ろうとしていた。
こりゃスレイに泣きついて騎士の仕事も貰わねば。
次は調味料の仕入れだ。
まだまだ一般家庭では塩と自家製ハーブ程度しか使えないが、貴族はスパイスに砂糖、ワインやビネガー、ワインなど多種多様の調味料を使う。
メイド達は貴族邸に貸し出すのに、庶民の味しか作れないとなれば問題だから、普段から食べなれさせておく。
小麦も買い込む。一等小麦と二等小麦をそれぞれ数十キロ。
マジックバッグと言う、容量が馬車一台程度ある大きな
何度か転移スキルで屋敷に戻り、荷物を屋敷に設置しては王都に戻り買い出しを終えた。
後の数日は村民や村にある職人達に、顔合わせをしつつ、村にいる大工に城の劣化具合と補修箇所を聞き出してから、補修資金を渡した。
幸い追加でもらった森には、まっすぐ生えて木目の詰まった硬い木や、現在建材に適した岩が多く存在したので建材は買わずに自分で切り出した。
さて、そろそろ研修に乗り出すとするか。
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