第78話 大切な友だち

【ひさしぶりに会わない?】

美青のLINEにコメントしてきたのは、美里だった。

【ああ!美里!久しぶりだね!いつ会える】

【次の土曜とか空いてる?】

【夜なら空いてるんだけど?いい?】

【OK!じゃあ駅の改札口で】


その日も午前中はAutumn Stageのゲーム。当然のようにKO勝ち。


せっかく美里と会うのにジャージでは行けない。

一度家に戻り、シャワーを浴び、ヘアスタイルを整えメイク直し。

お気に入りのスキニーとパーカーを着て鏡の前に立つ。これでよし!


美里と会うのは本当にしばらくぶりだった。

「美青!!元気だった?」

「うん、美里も元気そうだね」

美里の髪は以前よりも明るく染めていたし、メイクも上手になっていた。

「ホントにきれいになったね美里」

「そう?美青の方がきれいだしカッコいいよ!わたし惚れ直しちゃうな」

「やめてよw」


メイクもファッションもあか抜けていた。

ファッション系の専門学校に通っていると言っていたが?

「うん、そうよ、もう少ししたら卒業かな、でね美青聞いて」

「なに?」

美里は卒業後、あるアパレルメーカーに就職することが内定しているらしい。

「そのメーカーってわたしが以前から良いなぁ!っておもってたブランドなの」

「そう!良かったじゃない!おめでとう美里」

「ありがと。でもね就職決まったら、この街を離れることになるの」

「そうなの?」

そのアパレルメーカーは東京にあるから、ここから通う事は出来ないし・・・

「そうなんだ、別れちゃうのか・・・寂しいね。そう言えば圭は?」

「いっしょに行ってくれるって!」

「あー良いんだ!羨ましいなぁ。二人で東京で暮らすんでしょ?」

「うん、まぁそう言うことになるかな」

幼馴染と一緒に東京で暮らすという美里、

羨ましいという感情と同時に、自分はバスケに集中しなきゃと思いなおす美青。

「バスケ頑張ってるんだってね。聞いたよ。今度応援に行くね」

「ありがとう美里」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



次の日曜日

Team DOMINATEはゲームが無く、一日完全休養日となった。

とは言え、事務所でトレーニングや筋トレに励むメンバーたちの中で

ひときわ精力的にトレーニングメニューをこなしているのは千聖と英美里の二人だ。


「最近の千聖ってさぁ、シュートがよく入るよね?ヤバくない?あの確率は」

「それな。前とは全く別人だわ」

「早いし。あのスピードは無敵だな」

「じゃあ今度、華と勝負しよ!千聖!」

「えっ?私とですか?勝っちゃいますよ?私が」

メンバーともすっかり打ち解けて、ジョークをかます余裕さえ出てきた。


沙耶から見ていても千聖の上達ぶりには目を見張るものがあるようだ。

「千聖、ホントに上手になったよね、誘って良かったよ」

「沙耶と一緒だから頑張れるの。それだけよ」


練習が終わり、シャワーを浴びる千聖の身体をまさぐる沙耶。

「うん、キレイよ千聖・・・」

そしてキス・・・千聖にとっては夢を見ているような感覚なのだ。


「一緒に帰ろ?」

「私も一緒に」と言ってきたのは英美里だった

「じゃあ、先に帰ります!」

「おつかれ!」



3人でたわいもない話をしながらの帰り道。

駅前の古びたカフェに入る。「ブラックで」「わたしも」


コーヒーを飲みながら、バスケの話や恋バナに花を咲かせている3人、

「次のゲームはいつだっけ?」

「土曜日だね、3ゲームのはずだから体調バッチリしておかないと」

「だね、でも出られるかどうか解らないし」

「まぁ沙耶は確実だし、英美里も」

「そうかなぁ?まぁゲーム展開次第だよね」

Team DOMINATEでは有望な3人組。だれがロスターに選ばれても不思議ではない。


「紗英さんや、キャプテンの有紗さん、優実さんと美青さん、華さん、 

 1対1やって勝てないとゲームには出られないかもね」

「そうだなぁ・・・厳しいかもね」

「でも練習あるのみだと思うけど・・・」

 土曜日のロスター5人に選ばれなかったら、またトレーニングしようよ」

「そうだね、やろう!」


英美里と別れて沙耶と千聖だけになった。

並んで歩くだけでも幸せな気分に浸れている千聖。

(こんなきれいな人が、私と一緒に歩いている・・・)


「ねぇ沙耶」

「なに?」

「私と一緒にいて何か言われたりしない?」

「なんで?」

「いやぁ私みたいな5軍女子と一緒にいて・・・なんか言われたら悪いなぁって」

「そんなこと無いよ?だって私は千聖のことが・・・」

「?」

「大好きだもん!」と言いながらハグしてくる沙耶

嬉しいやら街中で恥ずかしいやら複雑な気持ちではあるけれど・・・

(ホントに嬉しい・・・もう彼氏なんていらない!)


小柄な千聖の肩を抱きながら歩く沙耶

沙耶の身体に寄りかかりながら、家路につく千聖だった。



第78話 完










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