第75話 彼女の告白と再生

大久保沙耶は相変わらず人気者だ。

つやつやの黒髪ロング、いわゆる”天使の輪”がはっきり出来ている

休み時間になれば彼女の周りには男女問わず人だかりがあり、誰とでも

笑顔で話をしている。


それを遠目で眺めている江田千聖

「沙耶は人気者、でも私のことを大切な友達って言ってくれている」

それが嬉しい。


昼休み、沙耶からLINEが来た【放課後屋上へ来て!】


「千聖!こっちだよ」

ベンチに腰かけている沙耶が呼んでいる

「どうしたの?」

「たまには二人っきりで話しようと思って」

(うれしい・・・人気者の沙耶がわざわざ私と話しようなんて)


とりとめのない話。

でもそれが千聖には嬉しかった。

いつの間にか沙耶が千聖の手を握っている。

えっ・・沙耶・・・


黒髪セミロングの前髪をよける感じの手つき

沙耶がキスしてきた・・・

(ちょっ・・・沙耶・・・どうしたの)

「本当はあなたのことが好きだったのよ。

 私ね、紗英先輩にも告白した事あるの、でも先輩はそのままでいましょうって」

「紗英先輩は彼氏がいるし・・・まぁいろいろあって友達でいた方が良いって

 考えたんだよ。でもあなたは違う。同じクラスだしね。ずっと一緒にいようね」


それからも教室では多くの生徒に囲まれる人気者の大久保沙耶だが

放課後の屋上では千聖と二人っきり。

ずっと手を握り締めて、たまにはキスをしたりして。千聖にとり夢の様な一時だ。




そのころ。

Team DOMINATEは3x3,Extreme Tour'Sに加入し初戦を制し、後は連戦連勝。

圧倒的な実力を見せつけ、Spring Stageを首位で終了していたのだった。


今日は事務所で社長の山本さん主催のパーティ。

「まだ春シーズンだけでしょ?秋のシーズンもぜひ頑張ってくれよな!」

ウォームアップスーツを着たメンバーを代表してキャプテンの有紗さんが。

「ありがとうございます!皆様の応援のおかげです!感謝してもしきれません!」

社員さんも全員出席しているらしく、あちらこちらで乾杯!が行われている

メンバー全員が、多くの社員さんから祝福を受けている。

「でも秋シーズンは今まで以上に厳しい戦いが待っているから、気を引き締めて!

 勝ちに行こう!」森井マネがはっぱをかける。


社長の山本さんが

「そう言えば最近、ウチの会社に引き合いが結構来てるんだよ、仕事の依頼がね。

 ユニフォームにさ、会社のロゴ入れているのを見てくれているのかもね」

と言う事は私たちの活動が会社の経営にもいい影響を与えていると言うことか。


美青は華と一緒にいた。

理沙も来ているのだが、森井マネのアシスタントとしてパーティをバックアップ中。

社長でありチームオーナーである山本さんが

「そうだ美青ちゃんさ、妹さんをうちで雇えないかなぁって思うんだけど、どう?」

「それって理沙に話ししました?」

「いやまだなんだけど、彼女さえ良ければ。森井さんもOK出してるしさ」

「それはいいお話です。私より直接社長から話されても良いのでは?」

「そう?じゃあ折を見て話しとくよ」

理沙の働きぶりを森井マネから聞いていたのだろうか、将来に悩んでいた理沙には

いい話であろうと思うのだ。


パーティも終わり森井マネから

「来週一週間は休みましょう、いままで結構厳しいゲームが続いていたしね

 何をしてもOKよ。完全休養するもよし、筋トレでも、みんなに任せるからね」


美青は筋トレや練習を怠らないようにしていた。

結局、メンバー全員が事務所のジムやコートで汗を流すことになってしまったのは

ご愛敬。


「美青さん、聞きました?」

「何の話?」

「解散したらしいですよ、SHADOW Sniper」

「えっ?ホント?」

「はい。紗英ちゃんから聞きました。再結成するかは検討中と言ってます」

自分たちが立ち上げたチームが解散するというのは、ある意味ショックではある。

「残念だね、紗英ちゃんたちが決めたんだし、尊重した方が良いね」

「ですね、私もそう思います」


美青は考えていた。残ったメンバーをDOMINATEで引き取れないか?

「有紗さん、どうでしょう?」

「私は良いけど森井さんがどういうかだね」

あまりメンバーを増やしたくないと聞いたことはあるんだ。

今は誰が残っているのか?自分の知っているメンバーなのだろうか?

あっ!優斗が知っているか?


【チーム解散したって?】

【そうなんだ。仕方ないけどね】

【残念ね、それはそうと残っているメンバー、優斗知ってるよね?】

【知ってる】

【私知ってる子かなぁ?】

【おそらくね、今残ってるのは紗英、沙耶、千聖、大地かな】

【千聖って子以外は知ってるけどね】

【一度来てもらおうか?】

【じゃあアポとってみるわ】


やる気があれば一緒にバスケをやって欲しいと思っている美青。

同じ大学に入学した華がいつも一緒にいるのだが

「美青さんが、そう言うなら華は反対しません!それでいいと思います!」


【とりあえず来週の日曜日行けるって言うから、駅の改札前に来るように

 連絡しといたぞ!】





「美青さん!華さん!お久しぶりです!」

人懐こい笑顔で近づいてきたのが福田紗英だった。

「またバスケが出来るって聞いたので来ました!」

ひときわ長身の女子は大久保沙耶「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

竹田大地も来ていた。「女子チームと聞いたので無理かと思いますが」

「まぁとりあえずついて来て」


DOMINATEのミーティングルームに入ると

「おはよう美青」

「おはよう!そちらの方々は?」

キャプテンにかいつまんで連れてきた経緯を話すと

「そうだったの?ウチの練習は厳しいと思うけど、やる気があれば問題なしよ。

 じゃあ、着替えて3階へ行ってね」


結局トレーニングに付いて来れそうなのは紗英と沙耶のみ。

千聖って子は今のところはまず無理っぽい。


森井マネも見ていたらしく。

「そうね、入っても良さげなのはあの2人だけだね」


「じゃあ福田さん、大久保さん。お二人はとりあえず合格です。

 あとはウチのチームと契約するかどうかはあなた達に任せますが、

 竹田くんと江田さんは、ちょっと今のところは難しいですね」



数日後、二人は契約することになったのだが、不合格だった江田千聖が

私も何かの形でチームに入れてもらえないですか?と連絡してきたのだった。


「何か出来ないですかね?森井さん」と聞いていたのは美青だ。

「うーん今は、ちょっと難しいかな、でも何かしたいという気持ちはうれしいね。

 じゃあ何か考えとくよ」


第75話 完












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