第24話 男装

女子に変身してかれこれ1年以上がたつわけだが。


「なぁ山田よぉ」イケイケギャルの綾が美里との会話に入ってくる。

「あに?」

「あのさ、こないだな愛が、美青さんって元男だし男装させてみたいって

 言うんだけど、やってみないか愛の前で」

「男装?」

もはや何がなんだか・・・男が女になって、その女が男装するって。


土曜日学校終わりに綾の家へ行ってみると

「あ!美青さんお久しぶりです」

「愛ちゃん」


その部屋には男だった時に来ていたのと同じ制服が吊り下げられている。

なんだか懐かしい気分になったのは当然か?


「美青さん、これ着てみて下さい」

「うん」


うんこれだよな、本来俺が着ていなくてはならないのは。


「じゃあこれも」と渡されたのはウィッグだった

そのウィッグは黒髪のナチュラルな刈り上げアップバングっていうタイプ。

もはやウィッグというよりも”かつら”にほぼ近いのだが。


「あーいいわ」


「おっ!やってるね」ギャルの姉、綾が入って来た。

「やっぱ似合うよな、元男だし」


綾と愛、姉妹にジッと見つめられる俺、もとい私。

このころに戻りたいなぁ・・・と思うのだが、それは敵わないのでしょうかね。


「ねぇこれで遊びに行かない?」

「いいけど」

「お!行ってこい!」


近所の公園を通って駅へ行く。

男装していると・・・でも何かもやもやするものがあるんだな。


「私、もともと男で今は女なんだが、男装している」

「変ですか?」

「おおいに変だと思わないか?」

「別に」


最初っから女性の姿の自分しか見ていないから、そう思えるのかもしれないな。


外から見ればただのカップルがデート中としか思えないだろうが、女子同士である。

今日は自分が男性役としているわけだ。


「今日は私の洋服を選んでほしいな」

「えっ?あっ、いいけど」


イ〇ンモールの中の、あるお店に入る

以前は店員に声を掛けられると、スッと引っ込んでしまう彼女が

「これとか試着してもいいですか?」

「今年の流行りの色とかって有ります?」積極的に聞いてるんだよね。

随分変わったものだな・・・


「愛ちゃん、よく話しかけることできるね」

「はい、お姉ちゃんや美青さんに教えてもらったからですよ」

「いやぁ自分は特に・・・」

「いやいや謙遜は無しですよ」


カフェにはいってお茶したり、またもカラオケ行ったり、

人見知りで引っ込み思案な愛ちゃんも、ここまで変われるんだなぁ・・・


「じゃあ今日はこれで」

いつもの女性の姿に戻って帰宅。

もはや家族も普通に接してくれている「おかえり」「お姉ちゃん、お帰り」


これが我が家の日常になんだ。


第24話 完


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