第5話 ザギンで変身

日曜日

美里に選んでもらった洋服を着て

待ち合わせの駅前に行くと、すでに美里は待っていて・・・

「おはよう、こうたん」

「おっす」

「じゃあ行こうか」

「今日はどこへ行く?」

「ザギンよ」

「ザギン?」


電車を乗り継いで、やってきましたザギンでございます。


銀座ですよ、俺は初めて来たんだが、美里は何度か来ているとか。

「ここよ」

ここよ!って言われて入ろうとした建物はライオンで有名な某老舗百貨店

「実は、こうたんを呼んだのは、私の姉なの」

「美里のお姉さん?」

「そう」


美里のお姉さんは、この老舗百貨店の、あるブランドの美容部員だとか。

「その姉が、こうたんの話を聞いて、一度来て欲しい!って言ってたんだ」

「そうなんだ」


老舗だけあって、客層が比較的高齢のご婦人や紳士然とした人たちばかり


中へ入っていくと、ある美容ブランドの前で

「あ!美里!こっちよ!」

「お姉ちゃん!連れて来たよ!」

「康太くんの面影、全然ないよね?まるで別人だわ」

美里のお姉さんは、かなり昔、ちょっと見かけた程度だったけれど、

近所では有名な美人姉妹だったのだ。


「じゃあ、ここに座ってね」

「あ、はい」


しばらくすると

「はい!OKよ」

「あー、ヤバい、可愛すぎる・・・」

「どんな感じよ」

お姉さんが鏡を持ってくる。

その鏡を見た俺は、正直のけ反った。


「うっわ!マジで俺?」

「いやぁ、さすがお姉ちゃんね!」

「ありがと美里!男性じゃなくて女性メイクなら、いつもやってることだしね」


「じゃあ銀座を、じっくり堪能してね」

「ありがとお姉ちゃん!」



なんかねぇ・・・すれ違う人たちが俺をジッと見てくるんだよね、

ガンつけてんのか?てめえら!

「こうたん、どしたの?」

「なんかガンつけられてるような気が・・・」

「ううん違うと思うよ、こうたんが可愛すぎるからよ」

「そうかなぁ・・・」


ばあちゃんは、

若いころに銀座をぶらぶら歩くことを【銀ブラ】って言うんだってと言ってた。

「銀ブラね、じゃあそうしよ!」


美人JKの美里と、超絶可愛いJKに変身した俺

やっぱりすれ違う人たちが、振り返って見るレベルなんだと実感するわけだ。


「じゃああそこで、ご飯にしない?」

と美里が指さす先には、小洒落たレストランが。

「なぁ美里、この店高そうじゃない?大丈夫?高校生の俺たちが入れるレベルか?」

「大丈夫よ、ママとお姉ちゃんと来たことあるからさ」

美里んちは俺んところとはレベルが違うんだよなぁ・・・銀座で食事なんてないもの

せいぜい駅前の商店街が銀座通りっていうけど、そこの中華料理店に入るくらいだし


ハンバーグステーキは美味すぎるし、お店の雰囲気も ”高級感”しかないし

美里が良く来るってのは、なんとなく解るなぁ。


「いやぁマジウマだったよ」

「そう?こうたんが喜んでくれてよかったよ」


人生初の銀ブラデビューなのに女の子の姿でって言うのは良かったのか悪かったのか


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