第13話 会いたかった人
川沿いを歩いてみるけど、崖は一向に登れそうな場所が見つからない。
こんなときどうすればいいのだろう。実際森なんて初めてだったから、どうしたらいいのか思いつかない。
私は心細くなってその場にうずくまった。
こんなことならテントを抜け出して森なんて歩くんじゃなかった。
せめてテントのすぐ近くで焚き火でもしていれば良かった。
そんな後悔ばかりが私を襲う。
こんな時クラウスが側にいてくれたら、怖いものなんて何もないのに。
私、クラウスに会いたい。幸せがどうとか、そんなのどうでもよくて、ただただクラウスに会いたいと思った。
「クラウス……助けて……怖いよ……」
私はうずくまったまま更にギュッと膝を抱えた。
⸺⸺その時だった。
「シェリー!?」
ずっと聞きたかった彼の声がする。
「え、クラウス? どこなの?」
私はすぐに立ち上がって辺りをキョロキョロする。
「上だ。今行く!」
私が上を見ると、クラウスが崖から滑り降りて来るところだった。
「クラウス!」
私は彼の胸へと飛び込む。彼はそれをキツく受け止めてくれた。
「私、クラウスに会いたかった……! すごく、怖かったの……」
自然と流れ出る涙。
私ってこんなに涙出るんだ。
「シェリー……もう、大丈夫だ……!」
彼は私を抱きしめたまま、ずっと頭を撫でてくれていた。
⸺⸺
「落ち着いたか、シェリー」
クラウスが私を少し離し、顔を覗き込んでくる。
「落ち着いたら……離されちゃうのね……。じゃぁ、私まだ落ち着かない」
私はそう言ってまた彼に顔を埋めた。
「シェリー!? わ、分かった。冷えるから、一旦焚き火の用意をさせてくれ。お前に風邪を引いてほしくないんだ」
「分かった……私も手伝う」
私たちは2人で焚き火の用意をし、無事に火が灯る。
「暖かい……私、こんな冷えてたのね……」
私はしゃがんで両手を焚き火にかざした。
「ほら、シェリー。ここなら暖かいから……おいで」
その言葉にドキッとして彼を見ると、焚き火の前であぐらをかいて、その膝をポンポンと叩いていた。
ここに来いという合図だ。
「うん……」
私は彼に向かい合うようにして、彼の足の上でお姉さん座りをした。
すると、彼がすぐに私を抱きしめてくれる。
「こうで……いいか?」
「うん……」
「シェリー……心配したぞ」
「ごめんなさい……でも、何で気付いてくれたの?」
「
「そう、だったの……。ごめんなさい……」
「お前が無事ならそれでいい。だが、なぜこんなところまで?」
「それは……」
私は悩んでて足を踏み外してしまったことを話した。
「幸せについて悩んでいた? そうか……俺の一言が、お前を苦しめてしまっていたのだな……すまなかった」
「ち、違うの。苦しんでなんかない。悩んでただけだもん……」
「答えは……見つかったのか?」
「ええ。最初は分からなかったけれど、こんなことがあってはっきり分かったことがあるの。聞いてくれる?」
「あぁ、もちろんだ。聞かせてくれ」
私は、クラウスに私の想いを全て伝えることにした。
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