第12話 私の幸せ

 私はひとり、夜の森を歩く。


 幸い魔物は昼間に倒したおかげでまだ新たには湧いておらず、気配もなかったため思う存分物思いにふけることができた。



 私の幸せって何だろう。そんなの考えたことなかった。


 両親は、ジョン王子でなくとも将来的に私をどこかへ嫁がせるつもりでいたため、私は小さい頃からそういう教育を当たり前のように受けてきた。


 実際両親に悪気がある訳でもなく、父と母も私と同じように政略結婚で結ばれた。

 ただ私との違いは、順番は逆になっても結婚にちゃんと愛がついてきたということだ。


 私は10年も猶予がありながら一向に愛がついてくる気配はなかった。

 ジョン王子の方はイマイチ良くわからなかったし、彼の気持ちを知りたいとも思わなかったけれど。



 多分こうなった以上、ヨゼフ国王陛下も両親も無理にジョン王子のもとへ私を返すことはないだろうと思う。


 そうなったら私はどうすればいいんだろう。


 ずっとクラウスのことが好きだったし、今も好きだ。

 この国に帰ってきたときは真っ先に彼の女性事情が気になり、実際恋人等はいなさそうだった。


 じゃぁ、今からクラウスと恋をして、上手くいったら結婚するの?

 結婚って普通そういうものなの?


 分からない。


 それに、クラウスが未だに結婚していない理由も分からないまま。何でそんなに女性嫌いの噂を流してまで女性を遠ざけたのか。


 もしかしたら結婚には興味がなくて、ずっと独身でいたいのかも。


 もしそうだとしたら、彼に気持ちを伝えたりしたらきっと迷惑だ。


 きっと私が女性でも遠ざけないのは、幼馴染の情けで、国を守る騎士団長様だからだ。



 あれ? 何で私、こんなネガティブになっているんだろう。


 彼の気持ちが分からなくて不安だから?

 もし仮に両思いだったとしても、彼が結婚を避けてきた以上、結婚が幸せとは限らない。


「あぁ、もう分からない! 誰か教えてよ……」


 何だかムシャクシャして、前も良く確認しないままに歩いていく。



 そして私は、少し高さのある崖から足を踏み外し、下の川辺まで滑り落ちてしまった。

「わっ、きゃあぁぁぁぁぁ!」



 大変。何mか落ちてしまった。


「いったたたたた……」


 滑り落ちた時にできた擦り傷は幸い傷は回復の魔法で治せるけど、もうこの崖から上に戻るのは不可能そうだ。


 どうしよう、早くみんなのところへ戻らないと。


 私はとりあえず川沿いを上流に向かって歩いていくことにした。


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