第11話 魔物討伐遠征

 今日は西の国境付近の森まで魔物の討伐遠征に来ていた。


 クラウス指揮の下、30名ほどの小隊で任務に当たる。


 もちろん私もそこに参加していて、無事森までたどり着くと次々に魔物を討伐していった。


 森は平原等に比べると魔物の出現頻度だけではなくステータスも高かった。


 そんな国境付近の魔物を討伐して治安を保つことは隣国との友好な関係を築く上で絶対にかかせない。


 そのため私もやりがいを持って任務に当たっていた。


 

⸺⸺


 辺りも暗くなってきて、森にあった“天使像”の周辺で野営をする。


 この天使像の周辺は不思議と魔物が湧いたり寄り付いたりすることもなく、安全に野営ができ、私はこの天使像の有能さに感動した。



 私が温かいスープをすすっていると、クラウスが隣に並んだ。

「すまないな、お前にこんな野営なんかさせてしまって……」


 私は慌てて首を横に振る。

「ううん、そんな謝ったりしないで? 私これでも楽しんでるのよ。あの退屈な城じゃこんな経験も出来なかったから。それに、隣国との関係を保つためにやりがいも感じてるの。だって私は今、王族として何の役にも立ててなかったから……」


 私はジョン王子に一方的に追い出されたとは言え、リーテン王国との友好関係に傷を付けてしまったのではないかという罪悪感も一応感じていた。


 だから、せめて西側の隣国との友好関係に貢献したい。そう思っていた。


「お前が嫌に感じていないのなら良かったよ。だが、そんな風に自分を責めないでくれ。お前は王族の前にひとりの人間だ。もう10年も頑張ったじゃないか。だから、もういいんだ……」


 そんなクラウスの言葉がジーンと心に響き渡った。

「ひとりの人間……」


 そんな風に考えたことなんて1度もなかった。いつもいつでも、王族として、貴族として、国のためにできることを。そんな風に考えていたから。


「そうだ。俺は、お前がひとりの人間としてこの10年間幸せだったならそれでいいと思ってた。でも、お前の話からは到底そうは思えなかった。だから俺は、お前を王族としてではなく、ひとりの女性として守る。お前は自分がどうなることが幸せなのか、好きに考えたらいいんだ」


「クラウス……ありがとう……」



⸺⸺


 夜も更ける頃、私はクラウスの言った“ひとりの女性としての幸せ”をずっと考えていた。


 私はもし王族ではなかったら、貴族ではなかったら、一体何がしたかったんだろうか。一体どうなりたかったのだろうか。



 慣れない野営もあって一向に寝付けない私は、1人テントを抜け出して少し外を歩くことにした。

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