第10話 過保護な騎士団長様
私がクラウスと一騎打ちをしてから、騎士団の魔道部隊の士気も格段に上がり、強くなろうと私の元へとアドバイスを求める魔道士さんが増えた。
「あの、一体どういう訓練をしたらそんなに強くなれるのでしょうか」
私よりもずっと年齢が上の魔道士さんがそう尋ねてくる。
どういう訓練って……
そのためその質問に対しては「毎日10時間くらいひたすら魔法を撃ち続けたわ」と返していた。それも、嘘ではないから。
そして、騎士団本部には少し前までクラウスを尋ねてくる女性が多かったのに、いつの間にか私を尋ねてくる殿方が増えたそうだ。
そのせいか、クラウスの過保護が爆発する。
「クラウス、私ちょっと実家に忘れ物したから取りに行ってくるわね」
私は本部の騎士団長室で書類に目を通しているクラウスへと話しかける。
「待て、1人で行くな。俺も行く」
クラウスはそう言ってすぐに書類を置いて私を追いかけてくる。
「え? 実家よ? すぐそこだから1人で大丈夫よ」
「ダメだ。そうやって気を抜いて何かあったらどうする?」
「もう、私『魔道将軍』なのよ? 何かあったって大丈夫よ」
「お前にどんな実力があろうと、守らねばならないことに変わりはない。ほら、さっさと行くぞ」
クラウスはそう言って騎士団長室から出て行った。
「……ありがとう。クラウス」
騎士団本部の入り口には大勢の殿方が押し寄せていて、私1人じゃ到底突破できそうになかったため、私は更にクラウスに感謝した。
彼は入り口の人混みを全員返しその包囲網を突破すると、実家へ向かう道中でこう呟いた。
「ジョン王子に対してもこうできれば良かったんだけどな……」
「……してくれてたじゃない。10年前。『シェリーはまだ11です! あまりにも酷すぎます』って、最後まで言ってくれてたでしょ?」
「だが、あの時は結局守りきれなかった……」
クラウスは悔しそうな表情を浮かべる。
クラウス、もしかしてそれもあってこんなに過保護に?
「じゃぁ、次もしジョン王子がやっぱ返して、とか言ってきたら守ってくれる?」
「お前は、もしそうジョン王子が言ってきても嬉しくないのか?」
「全然。だって、10年一緒にいて好きなところが1ミリも見つからなかったもの」
「なら、守ろう。例え騎士団長の座を降りることになってもな」
クラウスはそう言って嬉しそうに微笑んだ。
「え? それってどういう意味?」
「そのままの意味だ。ほら、着いたぞ。俺はここで待ってるからな」
「……ええ、すぐ戻ってくるわ……」
私はクラウスの言った意味をぐるぐると考えながら探しものをしていたため全然見つからず、彼をかなり待たせてしまったが、彼は嫌な顔1つせずに私をまた騎士団本部まで送り届けてくれた。
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