第6話 アンカードという国


 国王陛下は長年他国と交流する中で垣間見た、アンカード王国の異様な一面を暴露する。


「この『シュトランゼ大陸』の中でも、最東端のアンカード王国は最も領土の小さい国だ。それは皆も知っているね」


 皆はうんうんとうなずく。


「更にその西隣にリーテン王国という小国が、そしてその2つを囲いこむように我々のステリア王国が領土を構えている」


 私は「はい」と相槌あいづちを打つ。


「我が国はすぐ隣のリーテン王国と同盟を結び友好を築いてきた。それが形となっていたのがシェリーとジョン王子の婚約だ。だが、アンカード王国に関しては、その国自体が閉鎖的な国家であり、今の今まで我が国とはほとんど関わりがなかったのだ」


「そうですわね。アンカード王家をパーティにご招待しても1度もご参加くださらないわ」

 と、ナターシャ王妃。


 それは私も聞いたことがある。

 他国との関わり合いを極力避け、小さな領土で細々と暮らしている国だ。


「それが最近、アンカード王国の港に謎の商船が多数行き来しているといううわさが入ってな。ついに他国との交流を開始したのかと思い、うちとも商品の取引をしてはどうかと書状を送ったことがあったが、それに対しての返事はなかった」


 それに対し私も意見を述べる。

「それはリーテン王国からしても同じでした。今回のエイダ王女の件に関してリーテン国王が会談の場を設けたいと交渉を続けているのですが、何の音沙汰もありません。エイダ王女本人に聞いても『あたしはジョン王子を愛しているから来た、それだけよ』と、言っておりました」


「なるほど、暗駆あんくの派遣先はアンカード王国ですか」

 と、アルフォンス王子。それに対しヨゼフ国王陛下はこくんとうなずいた。


「左様。ただエイダ王女の思惑も探るため、リーテン王国にも数人派遣をする。そうすればきっとシェリーの無実の証拠も掴めよう」


「ありがとうございます、国王陛下」

 私はサッと頭を下げる。


「良い。もしリーテン王国がシェリーを返してほしいと言ってきても、暗駆あんくからの情報を得るまでは渡す訳にはいかぬ。そのため、シェリーはひとまずクラウスの率いる騎士団へと身を置いてもらいたい」


「わ、私が騎士団に……?」

 どうしよう、クラウスと一緒にいられるってこと?


「自然に過ごしているように見せかけて、この国で1番安全なところで保護をするのだ。役職等はクラウスに一任する。クラウスよ、何がなんでもシェリーを守るのだ」


「はっ! お任せ下さい!」

 クラウスは勢い良く立ち上がりながら敬礼をした。


 クラウス張り切ってる……ちょっと、嬉しいな。


⸺⸺


 王族による会議は一旦区切りが付き、私は荷物整理のために実家を訪れ、両親ともゆっくりと話をした。


 2人とも、私をリーテン王国へ送り出したこと、すごく後悔をしていた。

 そんなの仕方がないことなのに。でも、私は両親から確かな愛情を感じ、帰って来て良かったと思ったのであった。

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