第7話 新しい住居
実家でのやり取りを終えて、荷物をまとめて外に出ると、玄関先でクラウスが待っていた。
「クラウス! 遅くなってごめんなさい。あなたも中に入ってこれば良かったのに」
「せっかくの久々の家族団らんを邪魔するわけにはいかないからな。では、騎士団宿舎へご案内致します」
クラウスはそう言って当たり前のようの私の荷物を全て持ってゆっくりと歩き出した。
こういう紳士なところは昔から変わらないのね。
「ありがとう、クラウス」
私はクラウスに付いて行き、騎士団本部の奥にある宿舎を目指した。
⸺⸺騎士団宿舎⸺⸺
宿舎に入るなり、騎士の皆は大騒ぎだった。
「ヴェルマー団長が美人と一緒に帰ってきた……」
「おい、例のディアノーグ家のご令嬢じゃないか?」
「うわぁ、すげー美人だなぁ……」
クラウスははぁっとため息をつく。
「お前らうるさいぞ! この方は国王陛下の妹君のご息女、シェリー・ディアノーグ様だ。王族だが訳あって騎士団に身を置くこととなられた。失礼のないようにしろ!」
「はっ、申し訳ございませんでした!」
あんなにざわついていた宿舎のロビーが一瞬で一つにまとまり、静かになる。
クラウス、信頼されてるんだなぁ……。
と、私もちゃんと挨拶しないと。
「皆さん初めまして。シェリー・ディアノーグと申します。私は一応魔法が使えますが、実力など皆さんの足元にも及ばない新人騎士です。どうかそうかしこまらずに、騎士団のことを色々と教えてください」
私は深く頭を下げた。
「わぁ……なんて親しみやすそうな方だ……」
「魔道士なんだ……もしかしたら俺、一緒の部隊になれるかも……?」
再びざわつく騎士の皆。そして、なぜか拍手
昇降機を使って最上階の5階へと上がる。そのフロアは大きな部屋が2つあるだけのフロアだった。
「こっちが俺の部屋。それでこの向かいの部屋がシェリーに使ってもらう部屋だ」
え、この階でクラウスと2人きりってこと?
「わ、私、入っていきなりそんな特別扱いでいいの? っていうかこの部屋、誰か使ってたんじゃなくて?」
「ここは元々副団長の部屋だったが、ディアノーグ家のご令嬢を守るためにさっき喜んで下の階に移っていったぞ。急いで掃除にも入ってもらったから大丈夫だと思うが……何か気になるところがあれば言ってくれ」
「そんな、副団長さん追い出しちゃったの!? 私、あとで謝りに行きたいわ……」
「そんなの気にする必要ないのに。まぁでも、そういうところがお前の良い所だな。なら後で一緒に副団長の所へ行こう」
「ええ、お願い」
「それでお前の役職なんだが……。当面の間、騎士団長補佐として、俺と共に行動してもらう」
「クラウスと?」
「あぁ。これが1番近くでお前を守れる方法だと思ったからな。少し窮屈かもしれないが、我慢してほしい」
「もう、窮屈な訳ないじゃない。また昔みたいに一緒にいられて嬉しいわ。よろしくね」
私が満面の笑みを送ると、クラウスは頬を赤らめながら「あぁ、こちらこそ!」と、大喜びしてくれた。
もう、そういう反応されると、何だか期待しちゃうから困るな……。
こうして私の新しい生活が始まった。
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