第3話 モテモテ騎士団長
私は本部最上階の騎士団長の部屋へと案内され、ふかふかのソファへ腰掛ける。
すぐに本部の使用人さんが紅茶とお菓子を持ってきてくれた。
「クラウス、去年のことだけど、騎士団長就任おめでとう。去年直接言えなくてごめんなさい」
「そんなこと気にするな。ありがとう。もう、10年ぶりか……」
クラウスも私の向かいに腰掛けながらそう話を切り出した。
「ええ、そうね……」
「その……」
クラウスは、頬を赤く染めながら言葉に詰まって入る。
「ど、どうしたの? クラウス」
「あ、いや……俺らが最後に会った時は……まだ子供で、その……綺麗になったな、シェリー……」
クラウスがそう言って顔を真っ赤にするもんだから、私まで頬が熱くなる。
「こ、子供の時は綺麗じゃなくて悪かったわね……」
「あ、いや、そういう訳じゃ……その、昔は、可愛らしかったから……」
「もぅ、クラウスったら……」
ここで私は話題を変える。
「そう言えばあなた、女性嫌いって聞いたけど……どういうことなの? 私のことは、なんか大丈夫そうだけど……」
「あぁ……そのことか……。前に騎士団員らと飲んだときに、妻どころか彼女もいないって話をしたことがあったんだが……」
奥さんも、彼女もいないのね! ちょっと、安心。
「それがどんどん広まったらしく、なぜか俺に求婚に訪れる女性が後を絶たないんだ……」
「あはは、モテモテじゃない」
クラウスは昔も今もイケメンだし、騎士団長様っていう地位があれば当然か。
「笑うなよ、俺は結構参ってるんだから……。それで、女性嫌いだからって追い返してもらうことにしてたんだ……」
「ふふっ、そういうことかぁ。ビックリした。女性嫌いなんて言うもんだから、私も跳ね返されちゃったらどうしようかと思っちゃった」
「お前を跳ね返すはずがないだろう……」
「あら、どうして?」
私がそう聞き返すと、クラウスは再び顔を赤くした。
「そ、それは……。隣国の次期王妃様に言うようなことじゃないさ……」
「あ、そのことなんだけど……私、婚約破棄されてリーテン王国から追い出されちゃった」
私はてへっと笑ってみる。
「……は!?」
まぁ、そういう反応になるよね……。
事情を話そうとしたその時、部屋の戸をドンドンとノックする音が聞こえた。
「ヴェルマー団長、ご来客中失礼します! 緊急事態です!」
「入れ! 何事だ!?」
クラウスは急に表情を変えて立ち上がる。
わぁ、仕事モードのクラウス、カッコいい……。
「失礼します! アルフォンス王子の
兵士さんは敬礼をしながら早口で報告をした。
「あぁ……えっと、もう着いて、騎士団長様のお部屋で
と、私が返事を返す。セバスチャン、報告してくれてたんだ。でも、一歩遅かったね。
「えええ、まさかあなた様が!?」
顔が引きつる兵士さん。
「はい。ヨゼフ国王の
私はニコッと微笑んだ。
「た、たたたた大変失礼致しました!」
鋭角に頭を下げる兵士さん。ここの騎士団の兵士さんは謙虚なお人が多いな。
「とにかくシェリーを連れて城へ行けば良いのだな? すぐ参るとお伝えしてくれ」
「はっ、承知!」
兵士さんはすっ飛んでいった。
「クラウス、多分、今からあなたに話そうとしていたことを聞かれると思うの。だから、あっちでみんなにまとめて話すわね」
「分かった。では、シェリー姫。お城までエスコート致します」
クラウスはそう言って丁寧にお辞儀をした。
「もう、クラウスったら。お姫様と騎士ごっこ、懐かしいわね」
「だろ? さぁ、行こう」
「ええ」
私たちは仲良く『ステリア城』へと向かった。
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