第2話 幼馴染は騎士団長
「そこのあなた、少し良い?」
「はい、いかがなさいましたか?」
兵士さんは礼儀正しく私へと身体を向けてくれる。
「クラウス・ヴェルマー騎士団長様とお話したいのだけれど、忙しいかしら?」
私がそう言うと、兵士の彼は苦い表情を浮かべた。
「ヴェルマー団長とのお話は、少し難しいかもしれません……」
「あら、どうして?」
「その……ヴェルマー団長は、重度の女性嫌いなのです……」
「女性嫌い!?」
「はい……」
まさかの回答に私は目をパチクリとさせた。
10年前は私とも普通に話していたのに。この10年で一体があったの?
「えっと、私、彼の古い友人なのだけれど……それでもダメ?」
「ここを尋ねて来られる女性は皆さんそうおっしゃいます……。しかし取り次ごうとすると、ヴェルマー団長は決まって『そのような知り合いはおらん』とおっしゃるのです……」
「な、何それ一体どういうことなの……」
もうこうなってしまっては余計に彼のことが気になってしまう。
「ねぇ、お願い。シェリー・ディアノーグが会いに来た、と、騙されたと思ってそう取り次いでほしいの。お願い……!」
「はぁ……分かりました。少しここでお待ち下さいね……」
兵士さんは諦めたように本部の中へと入っていく。
「ありがとう! 感謝するわ!」
私はその彼の背中に手を振って見送った。
⸺⸺その10分後。
「シェリー!?」
私の幼馴染のクラウス・ヴェルマーが、はぁ、はぁ、と息を切らして本部から飛び出してきた。
「クラウス! 良かった、あの兵士さんちゃんと取り次いでくれたのね」
私がホッと一息つくと、さっきの兵士さんも血相を変えて飛び出してくる。
「先程は疑うような態度を取ってしまい、大変失礼致しました!」
彼は鋭角に頭を下げる。
「あはは、良いのよ。ちゃんと取り次いでくれてありがとう」
クラウスはそんな私たちのやり取りもお構いなしに、私の肩をガシっと掴み、すごい形相で詰め寄ってきた。
「シェリー、一体何があった? あの王子に何かされたのか!?」
「く、クラウス、落ち着いて……」
そんな私たちを見つめて口をあんぐり開ける兵士さん。
「ヴェルマー団長が……女性に触れている……!」
「! す、すまん……本部の中に案内しよう」
クラウスは恥ずかしそうに頭を掻きながらそう言った。
「ええ、ありがとう」
私は彼に続いて騎士団本部へと入っていった。
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