第6話 別世界③
瞑っていた目を開くと見慣れた場所に出た。
「・・・・あれ?」
転移先は先ほどのラウンジを抜けたエレベーターだ。つまり自分の部屋に向かった際に使用した転移石のあたり戻ってきたのだ。
アリスとの部屋でのやりとりは正味2時間程度だったろうか。何人か先ほど居た人物もこの場に残っていた。
日が少し傾いたようで、黄色にオレンジ色織り交ぜた日差しが降り注いでいる。
「どうかしました?」
アリスが無表情な顔を傾けながら聞いてきた。
「いやいや、なんでもないです!」
気構えした自分が無意味だったと思った。
「そういえば・・・転移石は同じ場所の行き来に使うんですが?」
「それは、転移石の種類や発現のさせ方、構造式によりますね。」
「『構造式』とは何ですか?」
もはや僕の知力は赤子並みだ。ならば、アリスはわが母君??いや違う。
「転移石も元はただの魔石に分類されます。転移する構造式を付与することで、転移を効率的に発現させる物体と成しえています。構造式は、『廻路』と『術式』で構成されています。この二つを調整することで、特定の場所への行き来のみ、一方通行、不特定の場所への転移など様々なジャンプ地を設定することが可能です。」
アリスは眼鏡をかけていないが、眼鏡がキラっと反射しているように感じる。
どうやら模範解答として上手くいったようだ。
これは結構大事な話に思える。レプリケータ以外にもこの転移装置、他にもこの施設には様々なそれらに属する装置が存在しているようだが、基本的な仕掛けは恐らく共通しているのだろう。エネルギー源となるのはやはり魔力なのだろうか。
「先生のラボからラウンジ、そして自室と移動してきました。メビウス自体はとても広大な施設です。この世界の中枢としての基幹施設であり、居住区でもあります。人口はメビウスには約5000人が生活を共にしています。」
「当然、外部には街もあるのですが、この施設は外界とは断絶された施設です。3日間猶予があるのでその間に街にも行ってみましょう。」
僕はアリスとメビウスの中を見て廻った。
アリスが先導しその後をレイが追従するように歩いていった。
時折アリスが解説を加えてくれる。よくわからないこともあったがとりあえず、聞き漏らさずしっかりと耳を傾けた。
この施設のメイン通路は同じ角度で円を描くように繋がっているいるようだ。
一番気になったものがある。これはどの窓からも大体視野に入るものだ。
「あのー、あれはなんですか?」
巨大なジェットコースターのような建造物が中心にある。つまりメビウスはそれを囲むように円柱状に建物が形成されている。よく見ると、レール部分は光輝いている。この発光は見覚えがある。転移石の時と同じだ。色は違うが、発光し続けている。ということは何らかの発現が継続しているということを意味する。
助手という位置づけの通り、基本的に饒舌に語るアリスであったが、このことについても口を濁した。
「・・・色々と疑問はあるでしょうが、私は『あれ』に関する説明権限を与えられておりませんのでご質問にお答えできません。この施設におけるもっとも重要な構造物ですので。この施設内にいる者も概要こそ知れど、一部を除いて詳細は知りません。ご自身の目でまず確認してください。詳しくは3日後、先生、、いえスミスから説明させて頂きます。」
「そ、そうですか、ははは。」
スミスは重要人物なんだな。この前のゴブリンとの戦闘では正直いい気持ちはしなかったが、これからお世話になるのであれば態度を改めないとな。
その後も二人でメビウスツアーに赴く。
緑も豊富でいたるところに木々が溢れている。元の世界と違うことは、面白いことに、有機体と非有機体が共生しているのだ。例えば、機械の上に木々が生えている。普通ではありえないことだ。木々というか植物自体はレイの認識のものと変わらない。つまり『機械』と捉えているものが異なるのだろう。
日光浴をしているのだろうか?時折、目を瞑り微動だにせず、木々の間で立ち尽くしている人もいる。中には体中に蔓が巻き付いてる人物もいた。
(いやどれだけ長い間瞑想しているのか・・・、そんなことあり得るのか。)
『機械』だけではない。そもそも建築材が金属とも石とも言えない素材のように思える。構造物は建物の至るところに存在しており、それを人は活用しているようだ。元の世界が機械で生活を豊かにしているように、ここでは、構造物と人を魔力が繋ぎ共存しているようだ。
格好を変えたからだろうか、ラボから出たときほどの視線は感じられない。あの時は、正確にはわからないが自分が顔を出した瞬間に場の空気が一変したように思えた。多種多様な人種が徘徊する建物内で、僕の容姿は珍しいものではないらしい。眼のしたのイボも気にせず歩ける。
・・・・・とその時
「よう、アリス。そいつが例の特異点ってやつだろ?」
筋肉隆々の大柄なスキンヘッド男がこちらを見ている。取り巻きが二人居る。どちらも屈強そうだ。
アリスの動きが止まった。
「あなた、誰から聞いたの?・・・・だとしたら、なんなの?ジャイ。」
(アリスがめちゃくちゃ怒っている・・・)
「いや、一部では噂になってんのよ。このジャイ様の情報網をなめちゃいけねぇな。」
ニターっとした表情を浮かべるジャイとやら。その言葉に呼応するように。
「キシシシシ」
と声に出しているが言葉になっていない同調を示す取り巻き二人。
「なーに、このジャイ様が、品定めしてやろうと思ってな。」
(ところで、自分のこと様付けで話すやついる?こいつやばい、怖い。いじめっ子代表格な感じ。でもある意味アリスの方が怖い、感覚的なものだが)
なんだろう、この威圧感は・・・二人から何かを感じる。
・・・そうこれは波だ。さざ波が押し寄せている揺らぎ・・・
転移石で感じた、風が吹き抜ける感じや空気の振動とも似ているが少し違う。
「おいおい、お前ら何やってんだ?」
「団長!!!いえ、なんでもありません」
全員が団長と呼ばれた男に敬礼している。
「ああ、彼が例の人か・・・興味が沸くのも無理ないが、団員として配慮に欠ける行動は慎め。団員同士の戦闘はご法度だ。」
そういうと団長はレイの肩に触れ、そして横目に例の背後の空虚な空間を眺めた。
「ははははは!!・・・また近いうちに会おう!!」
そう言い残して、去っていった。
団長と呼ばれたその人は、一段と大柄な男だった。身長は2mを超えているだろう。がっしりとした体格で、盛り上がった筋肉がはち切れんばかりだった。レイと同じ黒いスーツを身にまとっていたが、アリス、そしてジャイ達、もちろんレイとも違うデザイン。何より特徴的だったのは肌が露出している部分は傷だらけだったことだ。その傷は頭にも至るようで、左側半分の頭部が1/3程度深く傷ついており、髪が無くなっていた。
『隊長』という言葉から察するに、アリスやジャイ、二人の取り巻きは兵士なのだろうか。そうするとその隊長の傷跡は激しい戦闘によるものなのかもしれない。
「チッ」
周囲に大きく聞こえるような大げさな舌打ちが響き渡る。
「チッ」「チッ」
取り巻きもそれに合わせて舌打ちをするとジャイと一行は立ち去った。
「・・・さ、一旦部屋に戻りましょうか。」
アリスは冷静さを取り戻し元居た部屋へと促した。
「先ほどの人達は?」
「そうですね。きっとレイ様は深い付き合いとなると思いますので、戻りながら話しましょう。」
「メビウスには調査団が編成されています。団名は『マザーズ』。彼らはその団員達です。まず、図体がデカいだけの禿げずら無能が『ジャイ』という団員になります。一緒にいた背の高い方が『ヒョロ』、小さいデブが『ブッチャ』です。三人まとめて『漆黒三連星』と名乗っていますが、星に失礼ですね。そして、私たちの間に入ってくれたのが、我が団長『ガセット』。
強靭なん強さを誇り、先生・・・スミス先生に匹敵する頭脳。団員だけでなく人類、そして星への愛。あーーー、私は団長に着いていきます!!!・・・・失礼しました。私の最も尊敬する団員です。ちなみに私もマザーの団員です。入団してから3年になります。」
団長を語るときのアリスは憧れのスポーツ選手に出会えた子供のような表情だった。普段固い表情なのに、崩れる時は、一気に崩壊するんだな。
部屋への帰路の途中、マザーズに関すること色々と聞いた。スミスからの制限はないのか、かなり細かい部分の話も伺えた。
「さぁ、今日はゆっくりおやすみください。」
寝れないかなと思ったが、気を張っていたせいか、いつにない強い睡魔に誘われて、その日は幕を閉じた。
夢のなかだろうか、光の塊と何か話していたような気がする。
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