第3話 3次元vtuber降誕!!
「別に全員集まれと言った覚えはないぞ」
今日こそ多くの民草が見る雄大にして荘厳にして壮観な配信をするぞと心に決めパソコンの前に腰掛けたのが10分前。頼んだ品を持ってくるようにデミューラを召喚すると、何故か軍団長が全員玉座の間に集まってしまった。
「我々はただ魔王様の素晴らしい配信を1番近くで拝見したいだけでございます。既に軍団長としての職務は全て済ませて参りました」
「それは殊勝な心がけだがニューよ。何かわしに言いたいことがあるのではないか?」
いつものようにわしの前に跪くニューだったが、今日はなんだか顔色が悪く見えた。
「滅相もございません。我らは魔王様のご意向に従うのみです」
「そうか。他のものもわしに言いたいことがあれば遠慮せずに申すのだぞ」
これまで言うとわしは部下たちから目を離しパソコンの画面に集中する。今は昨日ヒメちゃんから教えられた待機画面というものを作っている。上に適当に『ダンディ魔王様のお悩み相談室』と書き込み、中央にデカデカと姫ちゃんが描いてくれたわしの似顔絵を持ってくる。全てヒメちゃんの入れ知恵だ。昨日は徹夜してパソコンの操作方法を勉強したからな。今のわしならこのくらいの編集、勇者をひねるくらい容易にできるのだ。
「では始めるぞ。刮目せよ!我が渾身の生配信のスタートじゃ」
『こんまお〜!ダンディ魔王様のお悩み相談室、はっじまるよー!』
ヒメちゃんは言った。「可愛い話し方をすれば人気が出るよ」と。だからわしは考えられる中で最上のもえごえ?というやつで挨拶をしてみたわけだが。画面からは相変わらず反応がないので、チラッと部下の様子を浮かべるとみな両手を地面に突き膝をついていた。特にメアとセラなんて完全にうずくまってしまっているぞ。そんなになるほど今のわしはステキなのか?
『今日はみなのお悩みにこのわ、あたしが直々に答えてやる、あげるぞ!だから、遠慮せずにコメントを送って欲しい』
どうしたらコメントがもらえるか、その答えが視聴者参加型のお悩み相談だ。昨日ウミというアイドルの雑談配信を見て思いついた。さて、これでコメントが来るといいが。
『コメント』
・こんまお〜!
『おお!早速コメントが来たぞ!こんまお〜!ぞ』
初めてのコメントがきたぞ!年甲斐もなく大声を出してしまった。もっと人間と話してみたくなってきた。
『コメント』
・こんまお〜!
・こんまお〜!
・こんまお〜!
『うむ。どんどん来たぞ。その調子だ。あと、挨拶も嬉しいが、お悩みはないのか?わしだったら貧困も飢餓も戦争もどんなことでも解決することができる。魔王軍全軍をあげてそなたらのお悩みを解決してやる』
記念すべき初の雑談配信だからな。これくらい大盤振る舞いしてやらないといけない。
『コメント』
・本当に魔王様なんですか?
・おま!?
・それはやばいって……
・最初からそれ聞くなよ!!
・↑全員口を慎まないか!
早速来ると思っていた質問が飛んできたな。しかし、怯えの色が見えるな。何度も言ってるが、わしは楽しく人間と話がしたいだけなのだ。
『そう怖がることはないぞ。あたしは寛大な魔王だからな。それにわしを魔王と疑う気持ちもわからなくない。長らく人間の前に姿を見せていなかったからな。おそらく今の世にわしの姿を見たことある人はいないだろう。しかし、案ずることはない。わしはヒメちゃんからとっておきの秘策を教えてもらったからな!早速実践するとしよう』
わしはデミューラが持ってきた
「ま、魔王様!一体何をなさるおつもりですか!?というかそのお姿はなんですか!??」
セラが慌てて近づいてきたがわしはそれを手で静止する。
「案ずるな。ちょっと3Dライブをしてくるだけだ。これで皆にわしが本物の魔王だと知らしめてやるぞ」
「「「は?」」」
「みなも画面をよく見ておくが良い。わしが力を振るうのは50年ぶりだぞ」
「「それだけはおやめください魔王様!!!」」
双子ダークエルフが止めに入るがわしは2人を無視して画面に語りかける。
『あーあー。聞こえておるか?今から緊急3Dライブを開催するぞ!
映像虫に合図を送ると飛び上がり、目から扇形の光を発した。この虫はカメラの権能を有していてパソコンと繋ぐことで虫の映像を画面に表示させることができる。わしは似顔絵を横にずらして、その映像を拡大して視聴者に見せる。
『コメント』
・な に こ れ
・どなたですか?
・フェイクだよね!?
・本物の魔王キター───O(≧∇≦)O────
・た、大変高度なCG映像ですね……
・いやまさか本物なワケナイヨネ
・↑ここまで誰も奇妙なお面に触れていない
『お!同接が1万を超えたな!たくさんの人が見てくれて嬉しいぞ。うむ。しかし、まだわしを疑っているな。今日のわしは気前がいい。特別にわしの力の一端を見せてやるぞ。瞬きせずパソコンに齧り付きながら刮目するのだぞ!』
楽しくなってきた。これが人間の反応か。感情豊かで大変よろしい。もっと驚かせて反応を見てみるとするか。
『
転移先は砂漠。最近人間から献上された領土だが、使い道がなくて持て余していた。ここならわしが力を使っても誰にも迷惑がかからない。
『一回しかやらないからな!いくぞ。
わしは両手を空に突き上げ頭上に拳大の小惑星を召喚し、思い切り地面にぶつけた。無理やり引きつけられた反動で空間が歪みそうになるが、それでは地球が壊れてしまうのでこの衝撃はわしが殺し、単純な衝突エネルギーのみを見せつける。小惑星が纏った超高温の炎と膨大な衝突エネルギーが引き金になって大爆発が起き岩盤が捲り上がり、地面が唸る。その光景に満足しながら中空で腕を組んでいると、舞い上がった砂塵でカメラが映らなくなっていることに気づく。
『ま、まずい!
わしは咄嗟に風魔法を放ち、邪魔な砂塵を吹き飛ばした。しかし、威力が強すぎたのか、衝突部から勢いよく吹き出していた岩石やマグマも一緒に全て飛ばしてしまい、後には地面にぽっかり空いた巨大なクレーターを残すばかりだった。
『や、やりすぎちゃったゾ⭐︎てへ』
流石にやりすぎたことを自覚したわしは精一杯の可愛いポーズで誤魔化す。うまくウィンクできたかな?
『と、ともかくこれでわしが本物の魔王ということがわかったはずだ。では戻るぞ!』
魔王城に戻りパソコンのカメラに切り替えて配信を再開しようとするが、両腕にセラとミラがしがみついてわしの動きを止めてくる。
「お待ちください魔王様!これ以上は本当に取り返しがつかなくなります!!なぜ、お姿を露わにしてしまったのですか?!」
「何をそんなに大袈裟に騒いでおるのだ?ちょっと地面に穴を開けただけじゃないか。それに別に顔を見せたわけじゃない。わしは世界に名が轟く魔王なのだぞ。身バレ程度心配いらぬわ」
完璧な説明に感銘したのか2人はわしから手を離し、その場にへたり込んでしまった。はやく視聴者の反応を確認しなくては!!
『もどったぞ!早速コメントを読み上げて……』
『コメント』
・魔王様が顕現なすったぞ!!
・魔王様!!
・魔王様に栄光あれ!!
・↑何この反応??
・魔族の反応と思われ
・ワイ人間、困惑であたままっしろ
・上に同じく
・オレはまだ信じないぞ!
・目の前にヨウジョが!温度差で◯ねる
・ヤ バ す ぎ て 草 が 吹 き 飛 ん だ www
・う、嘘だよな!?嘘だと言ってくれ!!
・あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!いきなり筋骨隆々の変なお面被った人が現れたと思ったら急に砂漠に飛んで隕石落ちてザワーだ。で気づいたらでっかいクレーターが見せて腕組み魔王様が降臨したぜ。あゝマオウサマバンザイ!!!
『は、反応が良さそうで何よりだ』
凄まじい速度でコメントが流れていく。その大半が「ヤバい」だの「すげーwww」で埋まっている。
『ど、同接100万!?!?!?』
0が二つほど増えた同接人数を見て、顔を画面に額が当たるほど近づけて見入ってしまう。
『と、取り乱してしまったな。しかし、わしとヒメちゃんであれば当然のことぞ。うわっはっはっは!!』
魔王たるもの泰然自若をじでいかねばならぬ。コメントを読み飛ばしていると気になるものを見つけた。
『twatterを見てみろ?……ほう』
早速twatterを開くと、通知が山のように入っていた。フォロワー50万人!?昨日作ったばかりなのに。これもヒメちゃん命名の惚れ惚れするアカウント名のおかげか?そこには「3次元vtuber魔王様ch」と書かれたアカウントに50万という法外な数のフォロワーがついていた。おまけにトレンドもわし関連のワードで埋め尽くされている。
『でかしたぞ!そなたら。ここまでしてわしのことを応援してくれるのか!これはわしも皆の期待に応えねばならぬな』
『コメント』
・3次元vtuberってそういう意味だったのか……
・まさか実写配信するとは思わないよな……
・フォロワー増えて喜ぶ魔王様のFAはよ
・喜ぶバ美肉魔王様概念
・草
・明日も配信続くのかこれ?
・これ以上はカロリー過多よwww
『もちろん配信は続けていくぞ!なんなら毎日配信してもいいくらいだ!わし意外と暇だからな』
たった2日間の配信でこんなに喜ばれるのだから、毎日配信すればすぐにでも人間と友達になれそうだ。
『そろそろヒメちゃんの夕食を作らなければならない。よって今日の配信はここまでだ。みな楽にするが良い!あと、これだけは言っておくが、この配信を見た人間は須くわしの友だちだからな!おつまお〜!』
『コメント』
・お、おつまお〜!
・おつまお〜!
・おつまお〜!
・魔王様と友だちwww
・ワイ祝脱ぼっち
・友だち100万できるかな()
・ワイ明日からどうなちゃうんだろ……
・みんなまおうさまとともだちになればもんだいなし(思考放棄)
配信を〆てパソコンの電源を落とす。今日の配信は大成功じゃないか。一仕事やり終えた後のこの開放感、たまらんわい。
「今日のわしの配信どうだった?」
部下にも意見を仰ぐことにした。彼らの方がインターネットの先輩だからな。
「す、素晴らしい配信でしたよ!魔王様の威厳が十分人間どもに伝わったことでしょう!」
真っ先に声を上げたのはニュー。背中の黒翼をはためかせてわしを誉めてくれた。
「そうかそうか。それはよかった。いや〜。配信というものは実に面白い!なにより人間の反応は新鮮で心躍るな」
「「満足いただけて何よりです魔王様。我ら配下はこれからも魔王様の配信活動を全力で応援させていただきます」」
「うむ。明日からは精を入れて配信活動を行っていく。みなのもの覚悟してかかるように」
「「「「はっ!」」」」
魔王様は気づかない。部下たちの諦観した生暖かい視線に。阿鼻叫喚、恐怖、興奮がごちゃ混ぜになった人間たちの混乱に。今日の配信が
__________
ここまでお読みいただきありがとうございました!!
魔王様!配信の時間ですよ!!〜娘のガワした最強魔王様の生声配信なんてバズるに決まっている!!〜 まるメガネ @mArumegAne1001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔王様!配信の時間ですよ!!〜娘のガワした最強魔王様の生声配信なんてバズるに決まっている!!〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます