第11話:フィナーレ

「その作戦… 私にやらせてください…!」


CICの門にいたマークスマンが話に割って入ってきた。

「マークスマン!?君はまだ怪我してるだろ!?」


「いえ、私にやらせてください!!この身体なら爆弾投下ぐらいできます」


「だが…」


「お願いです、私は所詮2年前の死に損ないです… 今ここで最後の戦いができるならそれでいい…」


「… ほんと君たちは、覚悟が決まりすぎてる… 分かった、許可しよう」


「ありがとうございます…!」


本当は彼には長生きしてほしかった。兵士を辞めて、地元の田舎でのんびりと暮らしてほしかった。だがこれは彼の決断だ。艦長として背中を押す義務がある。

「こちら空母ワケア、扇原、10分後に作戦決行だ」


(空母ワケア格納庫内にて)

「…コイツと共に逝けるなら…」


「おいマークスマン!アンタなに勝手に死のうとしてんだ!!」


「コルトか… 」


「テメェだけ死のうなんて思うんじゃねぇ!」


どっから聞いたのか… いや、艦長が知らせたのだろう。

「テメェ… ちゃんと生きて帰ってきてくださいよ…」


「ああ、案ずるな。では行ってくる」


エレベーターで甲板まで一緒に上がる、ハシゴで爆撃機に乗り準備をした。

「コイツとも長い付き合いだなぁ… 開戦時から改修を重ねて… 我が子のようだ」


彼の目には涙が溜まっていた。それを腕で擦り、前を向く。

「マークスマン、発艦する!」



作戦はこうだ、まず囮として扇原が戦艦クーを前進させる。この間、主砲などを撃って敵に注意をそちらに向ける。狙いは敵のマッハミサイルだ。あれは煙が出てから10秒で発射される、のでこれはギリギリの戦いになる。煙が出て10秒の間にマークスマンがグレネードを排気口に落とす。ミサイルを使わないのは、排気口が中で90度上に曲がってるからだ。この作戦を—

「『オペレーション・X-Wing』開始ッ!」


この作戦は一回限りの、博打な作戦だ。失敗すればあとは無い。

「こちら戦艦クー!全速力で行く!」


後退していく艦隊の中、一隻だけ前進してくる船、見過ごせるわけがない。

「1番から2番、主砲発射ッ!」


二つの発射口からなる主砲、威力は空母を貫通するほど。それを計4発同時に敵母艦に叩き込んだ。

「ハハハッ!流石に無視できないであろう!!」


敵は視認した、その新たなる脅威を。それに向け、マッハミサイルが用意される、発射口に装填され、点火した

「煙が出た!今だマークスマンッ!!」


その機会を逃さんと、雲の中から急降下して突っ込んでくる。

「うおおおおおおおおお!!!」


急降下によるGで普通なら気を失う。だが彼は、ジョセフ・マークスマンは違った。気合いと覚悟と経験でGの壁を乗り越え、排気口に突っ込んでいく。

「こ… ここ… ここだッ!!」


十分に近付いた瞬間に、レバーを引き、爆弾を投下する。見事な操縦能力で爆撃機の頭を上げ、母艦スレスレでなんとか逃げ切った。

「爆破ぁぁ!!」


入っていった爆弾、数にして10個、全てが爆発し、見事にマッハミサイルにも連鎖した。発射口は大きく爆破され、下の方にも連鎖していった。恐らく他のミサイルにも連鎖していったのだろう。

「やった!!やったぞ!!!」


艦橋内では大歓喜だった。だがコントロールを失った戦艦クーはそのまま母艦に突っ込み爆破した。母艦はその後、沈黙し、完全に戦闘不能になった。俺たちは勝利したんだ。

「やったな、綾風」


「迫水…!生きてたのか!?」


「ああ、本当に間一髪だったよ」

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