第3話:襲来(3)
『なーんもねぇすよ、この海』
『太平洋なんてこんなもんだ』
『でも宇宙船がどっかにあるんでしょ?』
空母の周りを飛行するマークスマン小隊の攻撃機。
「引き続き偵察を頼む。些細な違和感も逐一報告するように」
『了解した』
艦橋内にてジョーンズが呼びかけていた。
「あと数十分で交代するか」
「それではアインズバーク小隊に発艦準備命令を出しておきます」
「ああ頼んだ」
ジョーンズが艦内アナウンスをした。俺は引き続き何もないだけの広い海を眺める。
『なぁ艦隊長さんよ』
「アダムか、何用だ」
『この宇宙人とやらに接敵した際の行動ってのを聞かせてくれないかのぉ?』
「今考えているのはとりあえず攻撃してこなさそうなら一定距離を保ちながら全体図を把握する。攻撃してきた場合は構わず逃げる」
『逃げ腰かよぉ、カッカッカ!』
アダムが高々と笑う。
『ほら艦隊長言ってたでしょ?命大事!ってだから雛たちはそれに従わないといけないよ?ダムダムぅ!』
『カー!ったくその名で呼ぶなっつてんだろ?ちゃんとアダムさんって呼びやがれ』
雛が回線に乱入してきた。
「ほんと賑やかだなぁ、うちの艦隊は」
『あ!?賑やかだと?戯言言ってんじゃねぇぞ艦隊長!』
毎回思う、アダムは歳上だが階級的には俺の方が上、なのになんでこうにも怒鳴られるんだろうな。まぁ、気を遣わなくていいとは言ったが。
『えへへ… 賑やかなのは雛の取り柄だからぁ… 艦隊長に褒められちゃった』
『この嬢ちゃん… つくづく艦隊長のファンだな』
雛とは同じ時に入隊したが、何故かずっとこうなのだ。妹ムーブってか、厄介ファンってか、そんなもんだ。
『艦隊長、あたしは恥ずかしいよ… うちの艦隊にはまともな奴が少ない』
「その方が個性的で楽しいじゃないか」
ここで会話を聞いてたミラーノが割って入ってきた。
『だよねぇ!』
とミラーノの毛を逆撫でする。
『特にこの能天気ときたら…』
『ったく、まともなのは俺だけじゃねぇか』
『あん?あたしがまともじゃないみたいな言い方じゃないか、麻雀馬鹿』
『じゃあなんだ?てめぇの自室に飾ってあるあの大量の人形は普通だってのか?あれはどう見ても悍ましいだろ』
『う、うっさいわね!別にいいじゃない、人形ぐらい…!』
おおと、ミラーノのウィークポイントをアダムが突いた。
「俺はいいと思うぞ?人の風味なんて人それぞれだ」
『ですよねぇ!雛もいいと思いますよ!アンドリュー・イワンソン(俳優)、かっこいいですもんね!』
おおおと、雛が火に油を注いだ。
『やめて… もう… 生き恥…』
第五艦隊は実に面白い場所だった。最初はみんな怖いと感じたけど、みんな面白い一面を持ってる優しい人たちだ。こんな仲間に巡り会えたのが幸運だ。
『艦長!異常事態!』
偵察に向かったマークスマン小隊からだった
「どうした!」
『小隊長の機体が火を吹いてる!緊急着陸を行います!』
「敵からの攻撃か!?数は!?」
『分かりません!急に空が開いて… 追跡弾らしきものが命中!フレアは通用しません!』
「空が… 開いた…?とりあえずアインズバーク小隊を応戦に向かわせる、マークスマン小隊とは入れ違いに空母に着陸だ」
『ラジャ!』
空が開いた?割れたとかじゃなくて開く?どういうことだ。フレアの通用しない追跡弾という事は熱源を頼りに追跡はしてないってことになるな。ありえるならオートマチックか手動での追跡だが、たかだか航空機一機にそんな高級なもんを使うか?いや相手は宇宙人だ、それぐらい当たり前かもしれない。そうだ俺らが相手してんのは人間じゃねぇ、地球上の常識が適用するなんて考えない方がいい。
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