第25話 あの山へ飛べ

 月給は三十万円、各種社会保障完備。完全寮制で水道光熱費及び三度の食事は無料。契約期間は最低一年間で、希望により最長五年まで延長可。不慮の事態による契約期間内の除隊でも報酬は満額支給され、本人死亡の場合には遺族に相応の年金も出る。また配属部署により追加報酬もある。

 猶、これは【人類保全法】による強制徴用であるので拒否は認めない。

 呼び出しハガキに従って県庁を訪れた僕は、ポスターでしか見たことのなかった県知事にそう告げられた。君たちは人類を守る最後の壁なのだと、選ばれた事を光栄に思って欲しいなどと美辞麗句を並べ立てるそいつに、僕は第二次世界大戦に赴く若い出征兵士へ無責任に日の丸を振る政治家をぼんやりと思い重ねていた。

 つまり僕はこれから最低一年間、お国の為に戦うことを強制されるわけだ。それも極めて合法的に。

 始末の悪いことにこの人権無視について国は沈黙を貫いた。つまり、僕や僕と同じ立場の人々は全国民の為の捨て石になれと宣言されたわけだ。



 全国的に出現する脅威の前に、【人類保全法】が制定された事は記憶に新しい。

 脅威はさまざまな形を取って人類の前に現れた。巨大な怪獣、怪力や超能力を持った怪人。当初は警察や自衛隊がそれに対処したが、法律の施行でかつて世の中が平和だった頃にテレビや映画館を賑わした特撮ヒーローのような者たちがが防衛に当たり、脅威と戦い始めた。人々はその活躍に熱狂し、応援し、勝利を願った。



 そしてそんな埼玉県立防衛軍に、僕は強制徴用された。四十一歳の春、天才バカボンのパパと同じ年齢となった春のことだった。



 適性検査。病院で簡単な健康診断のようなものを受けた後、そのまま面接となる。

 「自動二輪の免許は持ってますか?」

 「いいえ、自動車もペーパーです」

 「なるほど」

 書類に何やらチェックを入れながら、中年の女係官は言葉を続けた。

 「何か武道とかスポーツの経験は?」

 「特にありません」

 「集団行動って得意?」

 「あまり」

 「ふむ」

 ぱたん、とペンを置いて女性は僕の目をまっすぐ見つめた。

 「U適性ですね。後で係が呼びますから、待合室で待ってくださいな」

 「ありがとうございました」

 僕は礼を言って頭を下げ、面接室を出て待合室に向かった。午後の病院には気怠い空気が漂う。その中を、安い緑色のスリッパをぺたぺた言わせながら歩く。

 日の光が暖かい待合室には、入院患者らしい老人が数名と忙しそうに歩く若い看護師しかいなかった。僕は手近なソファに腰を下ろして、呼ばれるのを待つことにした。

 しばらくして、数人の中年男性が待合室に現れる。僕と同じくらいの歳だろうか。僕と同じように徴用を受けたのだろうか。

 何にしても、あまりこの先良いことは無さそうだなと僕は感じた。U適性ってなんだろう?

 ぼんやりとそんなことを考えていると、先ほどの男性が僕の隣に座った。

 「どうも、あなたも徴用を?」

 「え、ええ」

 がっしりとした体格と日焼けし荒れた顔の肌からは、彼が肉体労働者かアウトドア趣味を持つ人間であろうことが予想された。

 「何をさせられるんでしょうね。私はR適性と言われたんですが」

 「僕はU適性だと」

 「ぱっと見の待遇はいいんだけどなぁ、私の知り合いも一昨年ここに徴用されて、期間終わったら戻ってくるかと思ったら田舎に引っこんじゃったんですよ。たまに趣味の集まりで出てくる以外は実家に引きこもっちゃって、電話にもなかなか出ないんですよね」

 短く刈り上げた頭をさすりながら彼は続けた。

 「ニュースや新聞で出てくる防衛隊って若いのばっかりじゃないですか。私らおっさんに何しろって言うんでしょうね」

 「あんまり役に立てそうにないんですけどね」

 「それは私も同じですよ」

 「バイクに乗れるかどうか聞かれましたよ僕」

 「ああそれ私も聞かれましたわ。趣味でリッターバイク乗ってるって言ったら、じゃあR適性だと。まさかこの歳で仮面ライダーってことかな」

 「じゃあ僕のUってウルトラマンですか」

 彼はふうとため息をついて、両手を頭の後ろで組んだ。沈黙が待合室を支配してしばらく経ち、何やらタブレットを片手に持った看護師が誰かの名前を呼ぶ。

 「はいはい」

 彼は立ち上がり、僕に人懐こい笑顔を向けて「じゃ」と言った。僕も「どうも」と軽く頷いた。

 それから数分後にようやく僕の名が呼ばれたので、僕は重い腰をソファから上げた。



 「皆さんようこそ、埼玉県防衛軍・大宮ベースへ」

 壇上の男は、低いがよく通る声でそう言った。

 「私が現場指揮官の山本です。これから一年間、埼玉県民の安全と財産を守るため共に戦いましょう」

 ぱちぱちぱち、とまばらな拍手が起こる。安物のパイプ椅子に座らされていた僕たち十人も慌てて立ち上がり、手を叩く。山本が身振りで拍手を制止する。

 「皆さんたちは強制徴用されました。お仕事やプライベートなどで不満のある方もいらっしゃるでしょう。ですが我慢して頂きたい。誰かが必ずやらねばならない仕事なのです。全国的に発生している【脅威】との闘いを避けることはできないのです」

 山本はぐるりと僕らを見回す。

 「防衛出動は多くて週に一回ですが、法則性は無いので常に待機をしていただきます。昼夜を問わないので、体調管理は万全に願います。戦隊五名、、ライダーとウルトラがそれぞれ一名。残った三名は補充要員です。配置についてはこれから副官が説明します」

 壇の脇から若い女性が山本に歩み寄る。

 「初めまして、副官の如月です。ではみなさんの配置について説明します」


 こうして僕こと佐橋祐一は、埼玉県のご当地ウルトラマンになった。




 まず行われたのは、隊員全員を集めての変身訓練だ。それぞれに変身グッズが手渡され、所定の変身ポーズをスムーズに行えるまで繰り返させられる。とは言っても実際にまだ変身はしない。というのも、一度変身してしまうと次に変身できるまでのインターバルに約二日かかるというのだ。つまりその二日は完全オフとなる。

 「このポーズと名乗りに意味はあるんすかね」

 戦隊のレッドに指名された青年が不思議そうに尋ねる。

 「現場は封鎖されてて、誰も見てないんでしょ?」

 「セキュリティです」

 事もなげに副官は答える。たぶん毎年出てくる疑問なんだろう。

 「ポーズと声紋認識で、変身者を確認するんですよ。だからと言って、デバイスは失くさないでくださいね」

 「ふーん」

 戦隊の五人はそれぞれ右腕に手甲のようなデバイスをつけていて、めいめいに自分のデバイスを眺めたり突っついたりしている。この五人は皆大学生くらいの若者だ。

 ライダーに指名されたのは前に病院で会った日焼け男だった。彼は黒のライダースーツに身を包んでおり、本格的なバイク乗りといった風体だったがただひとつアンバランスなのは、腰に派手で大きなバックルのベルトをしている点だった。なるほどあれが変身ベルトか。

 「なんでこんなオモチャを」

 「スポンサーとの協議の結果なんですよ」

 また副官はさらりと言う。スポンサーねえ。

 「グッズ収入も仕事のうち。基本的に人前で戦うことはありませんが、その様子は撮影されて放送されます。見たことはありますよね?」

 「ニュースでなら」

 彼は言って変身ポーズを取った。

 「これ動きは上半身だけだけど、バイクに乗りながらでも行けるのか?」

 「大丈夫ですよ」

 「ライダーになれて嬉しくないわけじゃないが……仮面ライダー堅干(ケンピ)っていう名前はどうにかならんのかね」

 「名前は各地の地元特産や名物から取るって知事会議で決まってますし、もうグッズの生産も始まっているので今からは変えられません」

 「あーそう」

 彼は数回ポーズを取って、ため息をついた。

 「まあやるっきゃないのか。で、俺は格闘技の経験なんてないんだが」

 「僕らもですよ」

 戦隊の五人も集まってくる。男三名女二名、これは標準なんだろうか?

 「それは大丈夫です。変身後のスーツは貴方たちの思念波に同調して動きますから、カッコ良く戦う自分を思い浮かべて戦うだけで大丈夫です。バック転もジャンプキックも思うままですよ」

 「じゃあ」

 僕は手元の四角い物体に目をやった。これをカチカチと伸ばし形を変えて掲げて変身をするのだ。

 「飛んだり光線撃てたりもするんですか」

 「ウルトラの人はできますよ。怪獣の大きさに合わせて、自分の身長も変えられます」

 「そりゃ便利なこと」

 副官は。戦隊各員に渡されている銃と同じものを手に取った。

 「そして、これは戦隊の皆さんに支給されている銃です。が、これには銃口はありません」

 その未来的なフォルム……オモチャっぽい銃身の先を見て見ると、確かに穴がないのっぺらぼうだ。

 「発射可能な銃は、銃刀法違反になるので携行できません」

 ええっ、と戦隊メンバーから失望の吐息が聞こえる。

 「ですが、変身後はデバイスの力でエネルギーを撃ち出して攻撃できますよ。これはウルトラの人の光線と同じで、思念波を利用した攻撃です。撃ち過ぎると精神的に疲れるので、使い時に注意して下さい。それと」

 今度はもう少し武骨な銃を取り出す副官。これにもやはり銃口がない。

 「これはライダーの方の武器で、同じく変身後のみ使用可能です。ただ、ライダーの方が相手をする【怪人】は防御力が高いものが多くて、恐らく効果は薄いでしょう」

 「つまり、思念波を乗せたキックだのチョップだので倒せと」

 「はい」

 ライダーの彼はブーツの踵をトントンと床に打ち付けて、ふっと笑った。

 「戦いに赴く中で重要な注意があります。変身スーツの防御力はとても高いですが、それでも怪我を負うことはあります。最悪、単純骨折くらいの怪我を負った場合、ある程度治るまでは補充要員としばらく交代の上で療養に専念していただきますが、入院加療が不要な場合は多少の怪我でも任務について頂きます」

 皆真剣に聞いている。命に関わるような事態は御免だと僕も思う。

 「敵の正体も、本当の目的もまだ謎のままで判っていません。ただひとつ判っていることは、とにかく命を奪おうとしていることです。それは人、動植物の区別なく、全ての命が対象のようです。この世界の全ての命を守るために戦うことが、あなた方の使命なのです」

 変身訓練はそうして終わり、僕たちは待機任務に入る。基地施設の中で、いつ現れるか判らない敵の予兆をただひたすら待つのだ。県庁に設置された亜空間ソナーには、敵が出現する三十分ほど前にその位置、規模が表示される。その情報を元に、戦隊かライダーかウルトラが出動するのだ。



 「脅威発生予告。秩父市武甲山付近に三十メートル級怪獣の出現予兆あり。対応者は直ちに出動準備に入れ。繰り返す。秩父市……」

 来た。これが初任務だ。僕は変身デバイスを手に、指令室へと急ぐ。出現の予兆と規模は三十分前に判るので、まずは指令室で副官から情報をもらうのだ。小走りに指令室に入ると、既に副官が現地の地図をスクリーンに出して僕を待っていた。

 「来ましたね」

 副官は笑顔で僕を迎える。

 「武甲山って、あのセメント工場がある」

 「ええ、ですがたぶん狙いは」

 地図上に赤くて太いラインが引かれる。

 「首都圏への高圧電線、奥秩父線の破壊だと思われます」

 「電線?」

 「そうです。他にルートがあるとは言え、電力の供給が一時的にでも絶たれたらどうなると思います?」

 そうか、住民の生活は混乱するし、もし病院が停電したら……

 「異次元からの【脅威】は必ず、この世界の生命を狙ってきます。今回はこの送電線を狙っていると見てまず間違いはないでしょう」

 「巨大怪獣でないとできないこと、か」

 僕は唸った。なんていうか、昔見た特撮とは一味違う。怪獣のくせに、まるで侵略宇宙人みたいな悪知恵とはっきりした目的意識がある。

 「さて、この場合ですが、どれだけ急いでも現地に間に合わせることはできません。怪獣の移動速度にもよりますが、ここで変身して飛んで行っていただきます」

 「飛ぶって……そんなに速く飛べますか?」

 「この基地からなら、県内どこでも一分以内に着けます。三十メートル級の怪獣ですと出現持続時間はおおよそ四分ですから、出現の一分後に変身して移動、できれば時間内に撃退といったところでしょうか」

 「二分以内に倒すか、電線を守り抜けばいいんですね?」

 「はい。ただ、怪獣の規模は予測できますが、どんな怪獣がどんな攻撃手段を取るかまでは判りませんので、現地においては臨機応変に戦って下さい」

 「了解です」

 なんだかえらいことになってきたな、と僕は思った。出て来たやつをただ倒すか時間切れまで相手をすればいいや、くらいに考えていたからだ。

 出現予想時刻までに、僕は副官から色々と注意を受ける。建造物などには保険が適用されるけど出来るだけ破壊してくれるなとか、道路はそっと歩けとか、飛ぶ時は離陸と着陸はそっとやれとか、そんな注意だ。そうか、テレビのウルトラマンは正体が誰か知られてないパターンが多かったから、器物破損・損壊について責任をうやむやに出来たんだな。でも僕はそうはいかない……

 出現予想時刻を過ぎた。空間が縦に裂け、中から四つん這いでのたのたと移動する怪獣がゆっくり姿を現した。眠そうな目、薄茶色の体色、頭には短い角が二本。

 「あの速度でも送電線まで三分で到着するでしょう」

 副官は現地からのデータをツールに入力しながら言った。

 「では、出動お願いします」

 「了解」

 僕は短く言って、指令室から裏の駐車場に出る。戦隊の若者たちが僕を見ている。ちょっと恥ずかしく思いながらも、変身デバイスをカチカチと変形させて頭上に掲げた。

 周囲が光に包まれる。第三者からどう見えているのかは知らないが、僕には自分の視点がぐんぐん高くなっているように見えるだけだ。手にしていたはずのデバイスはいつの間にか消失している。

 よし、行くぞ。

 僕は軽くジャンプをする。念じれば飛べる、という話の通りに僕の体はすっと空へ舞い上がり、見ていた戦隊の五人が歓声を上げる。けれど、その声はすぐに聞こえなくなった。一気に高度が上がったからだ。

 視界の隅にゆがみと言うか、ひずみのようなものが見える。あれが時空異常、つまり怪獣の出現ポイントだ。僕はそこへ急行する。風を裂いているという感覚は、ない。何の抵抗も感じない。こりゃ楽しいや、快適な空の旅だなんて思っているうちに怪獣の上空へと着いた。

 ガロローン、と怪獣は吼えて武甲山の岩肌を齧っていた。こいつ石を食うのか?食ってどうするんだ?とりあえずまだ電線までの距離は十分にあるので、進路を妨害して時間切れでも狙うか。

 「へやっ」

 僕は怪獣の顔に蹴りを入れる。掛け声は全く意識せずにそれ風な声になって響く。

 ギャロロロン、蹴られた怪獣は怒って尻尾を振り回す。びしっと太ももに当たる。実に痛い。

 畜生やりやがったな、と僕は怪獣の背に馬乗りになって、首の後ろから後頭部にかけてパンチとチョップを連続で見舞う。固い。あんまりやるとこっちの手が先に潰れそうだ。とりあえず角を一本もぎ取って放り投げる。

 とそこに背後から尻尾の強烈な一撃が僕を襲う。痛い。あまりの痛さに僕は怪獣の背中から転げ落ちた。こんにゃろ、僕はゴロゴロ転がって間合いを取り、立ち上がる。

 ガフガフガフ、と怪獣は口をバクバクさせた後に何かを吐きかける。その液体は僕の右足首に命中する。なんだ汚いな。

 しかしそれはただのゲ……吐瀉物ではなかった。どうも速乾性のセメント状物質のようで、右足が地面から離れない。あっ、岩食べてたのはこの伏線かよ!

 怪獣は明らかに僕を小馬鹿にしたように笑って、送電線へと進路を向ける。やばい、この足どうにかしないと!

 引き抜こうとしても抜けない。叩いても割れない。あんな鈍足でもこっちに来たのは、こういう手段があったからか!

 僕は考える。臨機応変に戦えって言ってた。なら!

 心を落ち着かせて集中する。目を閉じ深呼吸をする。

 よし。

 瞼の裏に、青い光が煌めいた。今だ!

 僕は両腕を十字に組んで光線を放つ。あの堅い皮膚ではあまり効果はないだろうが、あそこなら!

 もぎ取った角の傷口に僕は光線を捻じり込んだ。ギュワワワワ、と奴は悶える。足が止まる。苦痛に進むことができないようだ。

 「であっ」

 僕はさらに気合いを入れる。光線の幅が太くなり、次の瞬間怪獣は爆発して四散した。と次の瞬間、僕の足を固定していた物質もシュンと消えた。

 僕は肩で息をする。こ、これでいいのか。でももう時間切れだ、テレビで見たように空を飛んでは帰れないっぽい。

 変身時と逆に、今度は視点がどんどん低くなる。なるほど変身解除か。

 いつの間にか僕の手にはデバイスが戻り、疲労困憊な僕はその場にへたり込んだ。ああしんどい、たったこれだけの戦いでこんなに消耗するのか。

 周囲の非常線はあと三十分もすれば解除されるはずだ。僕はその前にここを撤収しなければならない。自費なら帰りにタクシーを使ってもいいという話だけれど、とりあえず電車で帰るか、県内の鉄道・バスが乗り放題の定期券は貰ってるし。よろよろと立ち上がった僕は、最寄りの駅を探してふらつきながら歩き始めるのだった。



 僕が一時間以上かけて基地に戻ると、ちょうど戦隊の若者たちがそれぞれのマシン……公道を走れるカートを改造したような車に乗って出動するところだった。そういえば外国人観光客がああいうのに乗ってるのは見たことがある。あれで間に合うくらいの距離の現場っていいな。

 とりあえず僕は指令室に戻って、副官に帰還の報告をする。戦いの現場は全てドローンで動画撮影されているので、簡単におさらいして書類にサインして終了。

 「どうでしたか?初任務は」

 「思ったより疲れました」

 「そうですね、思念波の消耗はとても激しいですから、光線技の使い過ぎには注意して下さい」

 「はい」

 僕のサインした書類をバインダーにファイリングして、副官は微笑む。

 「これで今週の出撃は完了です。明日と明後日は完全オフですので外出も大丈夫ですよ。三日後からまた待機をお願いします」

 「了解です」

 「はい、お疲れさまでした」

 指令室を辞した僕だったが、そういえば指揮官の山本氏をここ最近見てないな、などとどうでもいいことを考えていた。

 しかしまあ、色々と面倒な感じだ。こりゃ一年ごとに入れ替えるのも仕方がないのかもな。

 ズボンのポケットに変身デバイスの重さを感じながら、僕は自室へと戻る。

 心はもうこれからの二連休に向いていた。




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