第22話 第二部 トゥルクへ
少ししてからガシャンとまた音がしてドアが開きました。
そのとたんに手紙さんもボトルさんも、ここはフィンランドだ!と思いました。ドアが開かれた途端にとっても冷たい空気が入ってきて、箱の中にいるにも関わらず、冷たい寒いと感じたのです。
それまでは暑いインドネシアにいたのに今は間違いなくフィンランドです。人々の声も聞こえてきました。荷物を降ろしているようです。フィンランド語です。
「間違いなくそれぞれのところに運んで。それぞれの車に乗せて。間違うなよ。ちゃんと運ばなきゃいけないんだからな。」
そういうことを話しているのが手紙さんにははっきりとわかりました。
「ここはフィンランド!ここはフィンランド!ボトルさん私達帰ってきたのよ。」
一体どうやって帰ってきたのかわかりませんでしたが、外で話している人たちの声は聞こえました。
「こんな天候の中よくこの飛行機降りられたなあ。よかったよ。今日は最悪の天気だから、どこかよその国の空港に行ってしまうんじゃないかと思って心配してたんだけど、降りられて良かった良かった。パイロットの腕が良かったんだな。」
その話を聞いて手紙さんはやっとわかったのです。自分たちがいたところは飛行機の中だったのだと。
あの妙な音や妙な引っ張られる感じ、斜めになる感じ。すとんと落ちたりガガガと音がしたり。何もかも初めてのことだったけど、私たちは空を飛んでいたんだ。
飛行機に乗って空を飛んで、とうとうフィンランドに帰ってきたんだ!!
懐かしいフィンランド語がいっぱい聞こえてきて、手紙さんは『ああここが私達の居場所なんだ』と実感しました。懐かしい。懐かしいという思いは自分の居場所に感じるものなのだ。そう思いました。
男の人の声が聞こえます。
「そっちはヘルシンキに運ぶ荷物。あーそっちはラップランドまでだからロバニエミ行きの飛行機に乗せるように。」
それから、と、メールボトル19の入ってる箱を持ち上げました。
「これはトゥルクだ。トラック間違えるなよ。」
トゥルク懐かしい名前です。ニャーモさんが住んでいるところです。手紙さんは思いました。私とボトルさんはトゥルクからニャーモさんのモーターサイクルに乗って、そして船に乗ってお隣の国に行ったんだった。私たちはそこから出発したんだった。ああ、もうすぐトゥルクに帰れるんだ。
トラックに乗せられてトラックが走り出しました。真っ暗だったけれども、また自動車の中だったけれども、メールボトル19はワクワクしていました。どこへ連れて行かれるのだろうとか、いつまで走るのだろうとか、そんなことはもう考えていませんでした。この車が止まったらきっとトゥルクの郵便局だよ。そう考えていました。
そして車は止まりました。とても寒かったけれども温かい建物の中にはいれてそこに置かれました。するとほどなく郵便配達の人が、じゃあこれ運んでくるからと言ってまた別の車に乗せました。それはほんの少しの時間でした。車が止まりました。郵便配達の人はメールボトル19の入っている箱を抱えてドアをノックしました。
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