第21話 第二部 ここはどこ?

手紙さん達は床の上でしょうか。どさっと置かれました。しばらく経つと自動車に乗せられたようです。その揺れが前の日にサムハさんのお父さんの車に乗ったときと同じ感じがしました。けれどどこまで行くのでしょう。

 ずいぶんと長く走りました。1日じゃないような気がしました。2日か3日か、もしかしたらもっと長かったかもしれません。手紙さんは真っ暗な中でボトルさんに話しかけました。大丈夫。ボトルさんは私は強い子と言ってるように感じました。

 何日走ったのか本当によくわかりません。道はガタガタでそれは波の揺れとは全く違いました。ただ思い出すのはニャーモさんとモーターサイクルで走った時、普通の道を走ると時々こんな揺れがあったことを。


何日経ったか分からない頃、手紙さん達はどこかの床に乱暴に置かれました。揺れはもうなくなっていましたので、自動車から降りたことはわかりました。大勢の人の声が聞こえました。みんなインドネシア語を話していました。最後にサムハさんがインドネシア語で話しかけてくれて、自分もそれに答えることができたけれど、ほんの一言二言だったので、周りで話している人たちの言葉は理解できませんでした。

 そこにやはり長い間置かれました。次々と同じような小包が届いているのか、どさどさと床に置く音が聞こえていました。それからしばらく経つと大きなドアでしょうか?ガッシャーンと閉まる音が聞こえました。

私たちはいったいどこにいるのだろうね。全く分からないね。ボトルさんも少し不安そうでした。手紙さんも不安だったけれども、サムハさんがしてくれたことだからきっと大丈夫と自分に言い聞かせていました。


何時間経ったでしょう。また大きなガシャンという音がしてドアが開いたのが分かりました。たくさんの人々が中から荷物を運んでいるようです。手紙さん達の小包がふわっと持ち上げられて人の手が持っていることがわかりました。どこへ連れて行かれるのだろうかと考えていると、まるで怒鳴るようにインドネシア語が聞こえてきました。何て言ってるのかさっぱり分からなかったけれど、何か急かしてるような、急げ急げと言ってるような感じがしました。

 メールボトル19の小包はまた床の上に置かれました。その隣にもその隣もどんどんと同じようなものが置かれていってるような気がしました。沢山の荷物一緒に運ばれるのかな?そう考えている時にまたまたガシャンとドアの閉まる音がしました。私たちはあっちに行ったりこっちに行ったり、本当にこれでニャーモさんの所に帰れるのかしら?なんだかおかしな所に行ってしまうんじゃないかしら?不安を消そうと一生懸命に努力しました。やっぱり周りが見えないのはとても怖かったのです。海の中を漂っている時もたくさんの不安はありました。けれど周りが見えているのと見えていないのでは不安の大きさが違ったのです。


ガチャンと再び大きな音がした後、少し経って静かに動いてるような気がしました。何か乗り物に乗っているのかもしれない。本当に静かに動いています。揺れも何もありません。なんだろう?手紙さんは考えていました。

 その動きは一瞬止まりました。でも次の瞬間とんでもないことが起こりました。大きな音が始まりました。それは嵐の時の風のような音でした。ごーごーごーごー、とんでもなく大きな音でした。そのとたんに自分たちが後ろに後ろに物凄い力で引っ張られてるような感じが始まりました。引っ張られているだけじゃありません。斜めになっていることがわかりました。どんどん斜めになっていきます。後ろにズルズルズルズルと滑って行きそうでしたが、手紙さん達だけじゃなくて他の荷物もあったからか、滑っては行きませんでした。けれどものすごい力とその斜めの感じはしばらく続きました。

 ボトルさんはちょっと震えてるようでした。手紙さんはボトルさんを励ますように、

「なんだかわからないけど絶対大丈夫だから。絶対大丈夫だから。そうだボトルさん思い出して。ニャーモさんがモーターサイクルで高速道路を走った時、こんなにひどくはなかったけど、少しだけ後ろに引っ張られるようなそんな感じがした事があったよね。思い出して。」

 ボトルさんはそれを思い出したようです。これはモーターサイクルではないだろうけど、同じような感じはほんの少しですが味わったことがあったのです。ボトルさんも少し落ち着いてきたようでした。


斜めになった状態がしばらく続いた後、だんだんとまっすぐになっていく感覚がしました。あー、ちゃんと平らなところに置かれている。もう斜めじゃないし後ろに引っ張られるような感じも無くなった。止まっているんだね。そう、それはまったく動いてないように止まっているように感じられました。あの大きな嵐の風のような音も全くしません。ずっと止まっているようで、一体これは何なのだろう?ただただ不思議なだけでした。

 上の方で人が歩いているような音と気配がしました。何人もがバタバタと歩いている感じが伝わってきました。ここはどこ?

 手紙さんもボトルさんも何日も車に揺られていたし、訳の分からない所に置かれていたり、こんな妙なことが起こったりしてずいぶんと疲れていました。それでいつのまにかうとうとと眠ってしまいました。全く揺れもありません。とっても静かです。だからぐっすりと眠っていたのです。


が、突然ガガガガガガガッガッガ!!まるで何かが壊れてしまうような音がしました。しかも今まで感じたことのないような揺れが起こりました。右に左に上に下にもうぐちゃぐちゃです。いったい今度は何が起こったの?目を覚ましたメールボトル19は心底怯えました。そのとたんに今度はすとーーーんと落ちてしまったのです。本当に落ちてしまいました。一体どこに落ちたのだろう? でも自分達の居る場所は同じままです。

 私たちはモーターサイクルに乗った。海の中を漂った。船にも乗った。自動車にも乗った。これはいったい何?そう考えているとまた動きが静かになりました。静かになって止まっているように感じられるようになったのです。


そうしているうちに今度はまた妙なことが起こりました。最初と反対に前に引っ張られてるような感じがしたのです。前に斜めに下がっていくような感じがしたのです。

「今度は前に引っ張られているよ。それになんだか斜めに落ちていくみたいな感じ。一体何なの?一体何なの?誰か教えて!」

 手紙さんは叫び出しそうでした。ついにドッカーンというとても大きな音ととても大きな揺れが来ました。他の荷物たちも少し飛び上がったようです。手紙さんやボトルさんの箱もやっぱり少し飛び上がったようでした。でもその後静かに動いているのが分かりました。そしてぴたっと停まりました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る