第11話 第二部 アミメオトメエイさん
ランタンフィッシュさん達にお礼とお別れを言って、私はボトルさんと また漂い始めました。
教えられたように東へ東へと流れていくとだんだん暑くなってきました。海の水が熱いのです。私はちょっと不安になりました。ボトルさんは大丈夫だろうか、溶けてしまわないだろうか?それをボトルさんに言うと『北極海では凍ってしまわないかって心配して、今度は溶けてしまわないかって心配するの?』と言ってるように見えました。そして『自分はとっても強いボトルだから何も心配することはないんだよ。』そう言ってるようにも見えました。
しばらく流れていくと大きなエイを見つけました。私はもしかしたらマダラトビエイのエイヤさんにまた会えたのかと思って近づいてきました。スエズ運河のところで、自分たちはここまでの海域だからねと言っていたけど・・・マダラトビエイさん、と声をかけるとそのエイは
「何言ってんの?あたいはマダラトビエイじゃないよ。あたいはアミメオトメエイって言うのさ。アミメオトメエイ、可愛らしい名前だろう!ほらよく見てごらんよ。背中の模様がマダラトビエイとは全然違うだろぅ?あんたは何て言うの?」
「私はメールボトル19と言います。ここはインド洋ですか?」
「いいや、まだアラビア海だよ。もっと南下したらインド洋だよ。」
「あなたはエイですよね。でもアミメオトメエイって言うんですね。私は前にマダラトビエイさんに会いました。お仲間ですか?」
「そうたくさんの魚がいて、たくさんの種類がいて、仲間たちはたくさんいるけれども、それぞれ泳いでいるところも違うんだ。あたいはこのあたりを泳いでるよ。」
「みんなそう言いますね。私は何も知らなかったので沢山の魚さん達に会って、住むところが違うことを知りました。」
「そうかいそうかい。で、あんたはインド洋に来たかったのかい?」
「いいえ、そうじゃないんです。私は暖かい国にたどり着きたいのです。でもなんだかここは暖かいというよりものすごく暑い感じがします。」
アミメオトメエイさんは大きな声を上げて笑いました。
「そりゃそうさ。ここは赤道だもん。」
「 赤道って何ですか?」
「本当に何も知らないんだね。地球のことは知ってるのかい?」
「はい地球は丸くて玉ねぎみたいに上と下があって、少し斜めになっていて回っています。回りながら太陽の周りを回っているんです。」
私はちょっと自慢気に言いました。知っているって分かって欲しかったのです。
「それぐらいは知っているんだな。うんそれは当たりだよ。それからあとは何を知ってるんだい?」
「玉ねぎの頭の方に北極海があってラップランドがあって、とっても寒いところです。」
「それから?」
「それからあとはわかりません。」
私は正直に言いました。アミメオトメエイさんはまた笑っていました。
「そうかい、そうかい。そこまでなんだね。あんたはあたいと出会ってラッキーだったよ。あたいはこの辺りでは一番の物知りなのさ!
北極の反対は南極って言うんだよ。あんたの言う玉ねぎのお尻の方。そしてここはまあるい地球のちょうど真ん中になるんだよ。一番暑いとこなんだ。一番暑い所を赤道って言うんだよ。熱帯っていう言葉もあるよ。」
「だからこんなに暑いんですか?」
「そう、その通り。でさぁ、赤道から北は北半球って言って赤道から南は南半球って言うんだよ。」
「わかりました!じゃあこの赤道から北に行ったらだんだんだんだん寒くなるって言う事ですよね。」
「当たり!」
「じゃあこの赤道から南に行ったらだんだんだんだん熱くなるんですよね。」
アミメオトメエイさんはまたまた大きな声で笑いました。
「それが違うのさ。ここから南に行ってだんだんだんだん地球のお尻の方に行くと、どんどん寒くなっていくんだよ。」
「えーじゃあどっちに行っても寒くなるんですか?」
「そう言う事。で、ここが一番暑い所。ここからは北へ向かって行っても南に向かって行ってもどんどん寒くなるんだ。覚えときなよ。あんたはどっから来たんだい?」
「フィンランドと言う寒い国からです。冬には雪がいっぱい降るところ。」
「ああ、地球タマネギの北のはずれの方だね。そう雪がいっぱいらしいね。あたいは行ったこと無いけど。行ったら死んじゃうしねえ。それで地球タマネギのお尻の方、ずっと南、そこも雪がいっぱい降って氷だらけの海もあるのさ。行ったこと無いけどね。行ったら死んじゃうし。」
「・・・・北と南・・・同じなんですねえ・・不思議だこと。」
アミメオトメエイさんは私の言葉が可笑しかったのかゲラゲラ笑いました。
「ああ、それからもう一つ教えてあげるよ。あんたがまたまたびっくりするような事。北半球と南半球じゃ、季節が真反対なんだよ。」
私はとっても驚きました。季節が反対?
「じゃあ・・・」
「あんたはいつ頃海に流されたんだい?」
「夏の終わりぐらい、八月の終わり頃。」
「だったらあんたがいたところは今はもう冬だねえ。南半球は今は夏。それから熱帯地方、このあたり、赤道の付近は常夏って言ってね。年中夏なんだ。」
もう私は訳がわからなくなってきました。教えてもらったことを全部覚えようとしたけれど、地球ってすごいんだなぁ・・不思議なんだなぁ・・・とびっくりするばかりでした。 でも私はとっても素敵だなと思いました。地球というのは本当にすごいのだな。なかなか覚えられそうにもないけれど、少しずつ知っていこうと思いました
そしてこのアミメオトメエイさんは何でもよくしっているのだなと感心しました。
「海っていっぱいあるのですね。迷ってしまったみたい。」
「迷っちゃいないさ。それに海はいっぱい無い。一つだよ。地球上の海は全部繋がってるのさ。ここはまだアラビア海だけど南に行くとインド洋になる。だけど柵なんかないしね。
ううん。ついでにもう一つ教えちゃおう。大きな海には洋って名前が付いてるんだよ。地球には『7つの海』って呼ばれる大きな海があってね。さっき話した北半球には、北大西洋と北太平洋と北氷洋・・・・北極海とも言われるけど、それだけあるのさ。で、南半球には南大西洋と南太平洋と、南氷洋・・・南極海とも言われるのがあるんだ。で、真ん中あたりね、そこにインド洋がある。」
すごい!と私は思いました。
「私前にオホーツク海を通ってベーリング海に行ってそこから北極海に行きました。」
「ほう、、そうなんだ。そのあんたが通った『海』と呼ばれるところね、ここアラビア海もそうだけど、大きな洋の周りって言ったらいいか、陸地に近いところはそれぞれ『なんとか海』って名前があって、そりゃぁもう数え切れないぐらいあるのさ。」
地球は、海は、不思議でいっぱい。そしてこのアミメオトメエイさんがこんなに物知りなのは、きっとたくさんの事を見たり聞いたりして覚えたのだろうなと思いました。
私はアミメオトメエイさんに聞きました。
「私はこの近くの海岸にたどり着きたいと思っているのですけど、どこが一番いいですか?」
「どこが一番いいかなんてあたいには分からないよ。あたいたち魚が海岸にたどり着いたりしたらすぐ人間に捕まってしまうんだから、海岸なんかに絶対行かないしね。
だけど、、、ううん、もう少し東に行くとインドネシアっていうところがあるよ。インドネシアっていう国はね、たくさんの小さな島でできているんだ。そこのどこかの島にたどりつけばいいんじゃないかな。
だけど一番大きな島、そこはやめたほうがいいよ。海岸がガチャガチャしていて人間たちもガチャガチャしていて、誰もあんたを拾ってくれやしないよ。ゴミだと思ってポイと捨てられるかもしれないし、そのまま知らんぷりかもしれない。
その島を通り過ぎてしばらく行くとバリ島っていうすごく綺麗な島があるんだ。もちろんそこもインドネシアなんだけどね。どうやってそこまで行くかって?いいことがある。ずーっと流れていくと海の色が変わっていくんだよ。全く違うのさ。その海の色が変わっていったところあたりにバリ島がある。そこに着けばいいと思うよ。」
アミメオトメエイさんはそう教えてくれました。どんな海の色に変わるんだろうと聞いてみましたが、
「それはあんたの目で確かめなよ。まあびっくりするから。じゃあ、あたいは忙しいからこれでさよならするよ。ちゃんとあんたがバリ島に到着できるように祈っててあげるからね。バーイ!」
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