則井先生(12)

最後はなんだか気まずい別れとなってしまった。

ぼおっと…寝起き頭でこの前の昼休みを思い返していると、ぴぴぴぴと隣で目覚まし時計が鳴る。

「目覚まし時計より早く起きちまう…年取ったな。」

眠りも考え事をしていた事もあるだろうが、深く寝付けなかった様に思う。

あれから日が過ぎ、世間はゴールデンウィークを迎えて、テレビを点ければお出かけ特集だの、グルメだの、過去のドラマの再放送だのを繰り返すお気楽極まりなラインナップばかりになり、近所ではそれに煽られたのか、旅行する為車がずっといない近所の家も多数増えている。

(どれだけ浮かれても、どこも人だらけになってストレスしか湧かなくなるのに…よくやるもんだ。)

俺は昔から外に行くよりは家に籠りたい人間なので、外で遊んで楽しむ人間とは相容れない。

決めつけだろうと笑う奴もいるが、俺という人間は今更もう変えられないのだから仕方がないだろう、とつまらない事ばかり考えていたので、そろそろ布団から起き上がる事にする。

改めて音を止めた目覚まし時計を見ると、いつもの起床時間はとっくに過ぎていて、休みだからと気が抜けている自分に笑えてきた。

世間は連休、祝日なのだから生徒だけではなく、勿論教師も休みになる。

久し振りのまとまった休み、何をしようという訳では無いが、自分一人の時間が好きな俺にとってはありがたい限りだ。

だがしかし、教師、そして生徒全員がそうとは限らない。

今こうして俺はゆっくりしているが、一方その頃働いている連中がいる、それは。

 

主に、部活に参加している奴等だ。

 

「アイツは今…合宿中だろうな。」

この連休を使って、日頃は対戦出来ない高校まで行き、数多くの練習試合をこなしたり、山の近くまで行き体を鍛え上げたり、同じ部活の仲間と寝食共にして仲を深めたり…など、特に運動部の連休は悲鳴を上げる人間は多い。

これが女も居る共学ならまた違った内容だったのかもしれないが、生憎ウチは男子校だ。

スパルタとまでは言わないが、大層キツイ内容の練習が待っていることだろう、しかも全国制覇を目指す目標を掲げているからには尚更。

「…ま、この期間があの気まずい時間を忘れさせるきっかけの一つになりゃ、言う事は無いがな。」

ある意味良いタイミングだったのだろう、そう思うのと同時に腹がくぅと小さな悲鳴を上げる。

何はともあれ腹ごしらえをしなければ始まらない。

俺は冷蔵庫の方まで行き、すぐ手軽に食べられる食材を漁る事にした。

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