園田くん(10)
少しの時間、それだけでもとオレはまず三島と例の件について休憩時間に話し合っている。
オレのクラスにも野球部はいるけれど、結局三島の方が腹を割って話せるので、三島のクラス近くまで行き、廊下で落ち合った。
「…ま、完全な喧嘩になる前に、こうした打開策を出せて良かったよな。」
いまだに野球部内の空気は良いものとは言えないけれど、佐久間先生が部長や副部長に声を掛けた事がきっかけで、先輩達から言葉でどうにかしようと動き始める。
最初は先生が気になる生徒に声を掛けようとしたけれど、それでは時間が掛かり過ぎるし、先生はあくまで最終手段として待っていて貰い、先輩であるオレ達が動くべきだと三年生の見解は決まり、それがそのままオレ達にも頼まれる事となって今に至った。
「勿論時間は掛かるかもしれない…けれど、動かないよりは動くべきだ。」
三島の言葉にオレは静かに頷く。
「オレ達も…きっと先輩達にこうして迷惑を掛けて成長してきたもんな。」
「きっとかよ!」
確信を持てなかったのできっとを付けたのに、それが三島のツボを刺激してしまったらしく笑われる。
そのぽよぽよとした腹を突きながら、オレは話を続けた。
「とにかく!…ムカつく奴もいるけど、仲間として…ちゃんと受け入れる。」
「くっくく…無理に受け入れなくていいだろ。」
その答えにオレは目を丸くすると、そのにやけた表情は変えずに三島は言い切る。
「お前野球に関してはなあなあな状態は嫌だろ、全部とは言わねぇから鞭役に徹しとけ。」
背中で語るくらいの硬派を気取っていた方がエースっぽいだろ~とかふざけた事を口にするけれど、的を射た発言をされてオレは咄嗟に返事が出来なくなった。
「その代わりオレは飴役に徹して後輩人気を獲得してやるから!」
「…お前はそういう奴だよな。」
こういた所が部内でも潤滑油的な役割が出来る貴重な選手なんだなと、調子に乗るから口には出さないけれどありがたい存在だと思う。
「分かった、頼む。」
「おう!…お前は昼休み頑張ってこガフッ!」
それでも余計な一言が多いから誉め言葉が出せないんだ、という思いを込めて腹に拳を一発かました。
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