第18話 帰還

「つまりその勇者様についていけば王都に入れる訳だな」


「そう言う事になるな」


ローグとルークは久々に長距離通信で会話していた。

無論世間話等ではなく情報交換をしている。


「師匠、誰と話してるんですか?」


どうやら魔法には遠距離通信という概念が無い様だ。

扱うSVFも旧世代の物が多い上に補助する通信施設も無いのだから長距離通信できるSVFは限られる。

そもそも長距離通信という機能が備わってる事さえ気付いてない搭乗者が多いのだろう。

この世界の通信事情は未だに物理的な手紙や宅配便のみの世界である事からも発展していない事は伺える。

電話さえないのだから当たり前だが。


「気にするな。所で一人同行者が増えるが問題ないな」


「はい、師匠のお知り合いであれば大丈夫です」


シャインはどんな人なんだろうと楽しみにしつつ、

王都への道のりを進んだ。


―王都入口前


「さあ、ここが王都の入り口です」


シャインはキョロキョロと辺りを見回すが、ルークの連れらしい人物はいない。


「よ、こいつが噂の勇者様かい?」


シャインは背後から気配もなく肩を叩かれた。


「きゃあああああ!?」


「おっと悪い。癖になってんだよな、気配消すの」


「静かにしろ。今は注目を集めたくない」


「また守護者様に逃げられちゃ困るもんな」


「は、はい、分かりました・・・」


シャインは反省し小声で話をし始める。


「今日は守護者様が現れて新たにロードを貴族の方に授ける儀式を行う予定です」


「さすが勇者様の情報網だな。こっちの情報と一致してるぜ」


「母が王都の神官なものですから」


えへへと笑顔でローグに答えるシャイン。

だがルークは笑ってもいない。

あの赤いSVFに会った後の作戦はどうするかを悩んでいたからだ。


「そんなん簡単だろ。あの時と同じ状況を作り出してやればいいじゃねーか」


一番最初に場の沈黙を破ったのはローグだった。

”同じ状況”とは、現代で守護者をメガランチャーで撃ったあの瞬間である。

ローグもあの時守護者の近くにいたから巻き込まれたのだろう。


「守護者様を倒す!?本気ですか!?」


「だから声がでかいって」


ローグがシャインの口に手を当て、小声にする様戒める。

シャインは申し訳なさそうに何度も謝った。

しかし守護者という名前といい余程この世界では信仰されている存在なのだろう。

まあこの地にSVFをもたらした存在なのだから当然ではあるが・・・



「じゃあそろそろ行くか。入口の前でお喋りしてても怪しいだろうしよ」


「了解した」


「分かりました」


「・・・っと、俺はここでお別れだルーク。今更組織に戻る気も無いし、こっちの世界の方が性に合ってるんでね」


「そうか・・・止めはせん。組織には死んだと伝えておく」


「悪いなルーク。無事を祈ってるぜ。後エミリアからの伝言な。”現代に戻っても私の婚約者なんだからね!”だとよ」


「え、師匠、婚約者がいたんですか!?」


「形式上の存在だ。何故お前が気にする」


「い、いえ。なんとなく・・・です」


ルークは当然ながら気付いていなかった。

今迄散々世話を焼いてくれたルークにシャインが恋心を抱いている事に。


「じゃあなルーク。俺は陰ながら援護するから必要なら呼んでくれ」


「ああ、分かった」




「ここは王都ロンデミオンだ。許可の無い者は立ち入りを許さん」


「勇者シャインとその連れの者です。魔王討伐任務のご報告に参りました」


「うむ、わかった。入ってよろしい」


―王都・内部


「じゃあ僕ともここでお別れですね、師匠」


「ああ、世話になったな」


「守護者様は神殿に降臨なされるはずです。お気をつけて」


「分かった」


シャインは名残惜しそうにルークの手を掴むと両手で熱烈な握手をしてきた。


「絶対に死なないで下さいね」


「現代に戻るのが俺の任務だ。それまで死にはせん」


路地裏でルークはひっそりとシャインに別れを告げると、神殿へと向かった。


―王都・神殿


「おお、ついに私にもロードが手に入るのか!」


守護者降臨を目前にしてロード授与を嬉々として待っている貴族がいた。

しかしルークにはそんな事はどうでもいい。

守護者を確実に瀕死に追い込み、現代帰還しなければならない。

すると見慣れぬ一機のSVFと共に大鎌を持った赤いSVFが現れた。

守護者である。


「こい、ゼクロス!」


ルークはゼクロスを呼び素早く搭乗すると、護衛のSVFが来る前にメガランチャーを構えた。


「コアは破壊しない、あえてな」


ゼクロスはメガランチャーを転移の時と同じ出力、同じ距離で同じ場所に放った。


「何もかも同じだな、あの時と」


ルークはゼクロスでメガランチャーのトリガーを躊躇なく引いた。

守護者のSVFの中に生命反応はなく、AI相手だと分かっていたからだ。

メガランチャーが守護者に当たろうとしたその瞬間、眩い光がルークの搭乗したゼクロスを包み込んだ。



―???



「組織の人工衛星とのリンクを確認。現代への帰還成功」


ルークは帰還への成功を喜ぶ間もなく守護者からうんと距離をとった。

今度こそは異世界転移に巻き込まれないためである。


「メガランチャー最大出力!」


ゼクロスは今度はコアを狙って最大出力のメガランチャーを放った。

守護者のコアは撃ち抜かれ大爆発を起こした。

しかしそれでも半壊状態でなんとか生き長らえていた。


「戦イガ混沌ヲ呼ビ、混沌ガ秩序ヲ呼ブ・・・故ニカノ地二SVFヲ・・・」


「大層な目的だな。しかし興味が無い」


ルークはゼクロスで守護者のコアを引き抜くと守護者のAIは完全に機能停止した。

これで現代帰還というルークの任務は終了した。

そしてまた新たな任務が始まる。


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サーヴァントフレーム~異世界の機械騎士~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa

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