第17話 人との戦い
魔王城からの帰り道、少女勇者シャインは最初は堂々としていたものの、魔界から出るや否やゼクロスの後ろに隠れてしまった。
「おい、いつまで後ろに隠れているつもりだ」
「だ、だって人の敵とあったら嫌じゃないですか」
「・・・対人戦闘の経験は?」
「魔物なら沢山あるんですけど、やっぱり人間を傷つけてしまうのが怖くて・・・」
こういうのは冒険者には稀によくある事らしく、特殊な訓練を受けているルーク達だからこそ、躊躇なく攻撃できるのだ。
学園の守護騎士達も加減して戦う事を身に付けているからこそ、SVF同士や人間同士で戦う事に躊躇が無い。
しかしシャインは幼い頃から対魔物用の戦闘経験しか無い為、どうしても人間相手だと躊躇してしまうのだ。
「SVFに乗った人間でもダメなのか?」
「は、はい・・・やり過ぎるのが怖くて。申し訳ないです」
「そうか。お前にうってつけの相手がいる。紹介してやろう」
「ほ、本当ですか?」
「このままでは足手まといだからな」
―冒険者ギルド
「何?その坊主と俺に戦えだ?」
冒険者ギルドでかつて登録テストを実施した冒険者ボギーが怪訝そうな顔をする。
「そうだ。こいつも俺の時と条件は変わらんぞ」
「確かに・・・スキルに勇者が付いてる以外は普通の村人レベルだな。このボギー様の足元にも及ばねぇぜ」
「ううう・・・すみません」
村人並の戦闘力と言われ縮こまるシャイン。
だがボギーはルークの時とは違いシャインの実力を舐めたりはしなかった。
何故なら2回目だし、スキル「勇者」というのも謎だからである。
勇者というからには余程凄いスキルなのだろう。
「いいぜ、坊主。戦ってやるよ」
「は、はい!よろしくお願いします!」
―冒険者ギルド中庭
じゃあさっそくと言わんばかりにボギーがシャインに殴りかかって来る。
シャインは自前の剣を鞘から抜くが腰が引けている。
そして刹那、ボギーの連続攻撃をいとも簡単にシャインは避けてみせたのだ。
「や、やるじゃねぇか。だが攻撃してこなきゃ何も始まらないぜ?」
「だって真剣で斬りつけたらボギーさんが怪我しちゃうから・・・」
「じゃあそのなまくらで斬られても大丈夫な様に丈夫になってやるよ!」
「え?」
ボギーはポケットから数々の強化ポーションを出すと、同時にそれをぐびぐびと飲み干した。
「これで並のSVFの攻撃程度ならびくともしない筈だぜ」
「じゃじゃあ軽く一撃を・・・えい!」
シャインがボギーに斬りかかるがボギーには傷一つついてない。
ボギーは余裕のポーズを取っている。
「本当に効いていないんですね?じゃあ・・・スキル勇者発動!」
「おうどんとこい!・・・て、え?」
「はあああああああああああ!!!」
シャインが光り輝いている。
これが勇者のスキルなのだろう。
シャインのステータスを表示していたボードの数値がみるみると上昇していく。
「おい、ちょっと待ってくれ!」
「えい!」
「そこまでだ」
シャインの渾身の斬撃をゼクロスが割って入り腕で受け止める。
ゼクロスの腕部装甲には深々と傷が付いてしまった。
「師匠!大丈夫ですか!?」
「問題ない。それよりも人間相手に一太刀入れられた様だな」
「あ、そういえばそうですね!?」
「これから全ての人間の敵をあいつだと思え。そうすれば幾分か躊躇はしなくなるだろう」
「はい!ありがとうございました師匠!ボギーさん!」
ボギーは感謝の言葉を聞くよりも前に泡を吹いて倒れていた。
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