第16話 勇者

「ついにみつけたよ、魔王!」


「?」


既に魔王はこの場にいない。

という事は・・・?


「魔王がSVFに乗っているなんてね。驚きだよ!」


どうやらルークは魔王と間違われているらしい。

ルークが弁解する間もなく純白のSVFが背部にマウントしていた巨大な十字剣を構える。

そしてそのまま斬りかかって来た。


「えい!やぁ!」


「待て!俺は敵じゃない!」


「逃げるな!戦え、魔王!」


ルークは必死に無線で呼びかけるが、周波数が合わないのか相手に伝わっていない。


「仕方ない・・・!」


ルークはプラズマサーベルで十字の剣を受け流すと、

頭突きをかまし、直接触れて話かけた。


「俺は魔王じゃない、人間だ」


「ほえ?」


ゼクロスは動きが止まった純白のSVFを確認すると距離を取った。

そしてゼクロスから降り、生身の身体を見せつける。


「え、人間?」


「お前も機体から降りろ。その方が話しやすい」


「え、あ、うん、そうだよね」


機体から降りたそこには青髪の美しいボーイッシュな髪型をした華奢な少年?の姿があった。

少年?はもじもじしていて、ルークの方をじーっと見つめている。


「俺の名はルーク、冒険者ギルド所属の物だ。お前は?」



「僕の名前はシャイン、所属は一応勇者・・・かな」


「お前の乗っている機体はなんだ」


「あ、この子はね、フラジールって言うんだ。一応ロードだよ」

フラジールは純白のSVFであり、本人曰くロードである。

天使を思わせる流線形のフォルムと背中の十字の大剣、両腰にマウントされたサブマシンガンが特徴だ。

どうやら光の精霊と契約してるらしく、魔物との相性はいいらしい。


「誤解は解けたな。俺は帰るぞ」


「ちょ、ちょっとまって!魔王は?魔王はどこにいるの?」


「奴なら消えた。今の居場所は知らん」


「そんな~、せっかくここまできたのに・・・」


落胆の表情を見せるシャインをルークは無視し立ち去ろうとする。

するとシャインが掴みかかって来た。


「もしかして魔王を倒したのはあなた様でしょうか?」


「完全に倒した訳ではない。撤退されてしまったからな」


「その腕を見込んで話があります!」


むに

シャインは力を込めてルークに抱きついて来る。


「なんだ」


むにむに

シャインは更に力を強めルークに密着してくる。


「僕を弟子にして下さい!」


「その前に一つ聞いておく。お前は女か」


「え?あ、はい。隠してたのにバレちゃいましたか?さすが師匠!」


「お前が色々押し付けて来るからだ。そして弟子の件だが断る」


「え!?それってもしかして僕が女だからですか!?」


少女勇者と発覚したシャインが詰め寄って来る。


「SVFに搭乗できるなら男も女も関係ない。単に任務に支障をきたすからだ」


「任務ってなんですか?」


「・・・大鎌を持った赤いSVFの捜索だ」


「それって守護者様ですよね。この間王都で見ましたけど・・・」


「お前は王都に入れるのか?」


「一応勇者ですし、ロード持ちの貴族ですから」


「そうか・・・じゃあ頼みが―」


ルークが言い終わる前にシャインが遮る様に言った。


「僕の従者という形でなら王都に入れますよ。その代わり弟子にしてくれますよね」


「いいだろう。だが何も教える事等ないぞ」


「大丈夫です。見て学びますから」


こうしてルークと女勇者シャインの冒険が始まった。

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