第15話 魔王
「酷い有様だな・・・」
ルークは現在ゼクロスに搭乗し、魔界の上空にいる。
そこには魔物と戦って敗れたであろうSVFの残骸が散らばっていた。
幾らSVFが人間の出力を上げると言っても、初心者の操縦ではたかがしれている。
SVFを得てこれなのかと異世界での魔界と人間界の勢力差をしみじみと感じるルークであった。
「敵戦力把握・・・」
ルークは周囲を見渡すと魔王城らしき城を発見した。
そこに魔王がいると思ったルークは、
ある目的の為に魔王城の内部へ潜入した。
―冒険者ギルド・数時間前
「ルークさん、新しい依頼が来ましたよ。今度は魔王城周辺の偵察です」
受付嬢のニーナがニコニコしながら依頼リストを見ている。
「いやー、危険度も高いし、魔界関連は報酬がいいんですよねー。さっそくチームを組んで―」
「俺一人で十分だ」
「でも魔王城周辺は警備が厳しいですし・・・」
「いらん。それに魔王とやらを倒してしまっても構わんのだろう?」
「できたらお願いしたいですけど無理ですよ・・・この間も王都のSVF達が討伐にでかけましたけど全滅しましたし」
「俺には関係ない話だ」
「あ、ちょっと!んもう・・・!」
―魔界・魔王城内部
と、この様な流れで依頼を受け魔界に行く事になったのだ。
無論ルークには考えがあった。
魔界での守護者の情報収集である。
王都に入れない以上、残る場所はここしかないからだ。
そして魔界の全状況を把握している魔王とやらに直接聞くのが一番手っ取り早いのだ。
ルークは警備の魔物達をゼクロスで素早く片付け最短ルートで魔王の間らしい場所についた。
そこには魔王の玉座らしき装飾の施されたイスと、そこに横たわる骸骨のアンデッドらしき魔物がいた。
「貴様が魔王か」
「突然現れて随分な物言いだな。SVFに乗ってるようだが、貴様は・・・人間か?」
「そうだ。そして貴様に聞きたい事がある」
「人間如きと話す舌は持たん」
魔王が持っていた杖を掲げると4色の魔方陣が同時に現れ、それぞれ別の属性の魔法がゼクロスに放たれた。
しかしシールドと特殊な装甲のおかげでゼクロスにダメージはなかった。
「その機体、ロードか。面白い」
今度は杖を大きく振り回すと巨大な魔方陣が発現し、その魔方陣から漆黒の鎧、SVFが出て来た。
「実は私もロードを持っているのだよ。アダンテといって貰い物だがね」
魔王は漆黒のSVF、ロード・アダンテに乗り込むと杖を捨て魔方陣を発現させる。
そこから出て来た無骨な巨大な剣を構えるとゼクロスに突進してきた。
ルークが気付いた時には魔王は鼻先の所まで近づいていた。
しかしルークに慌てた様子はない。
ガガガガガガガガガッ
ゼクロスは牽制用のバルカンをアダンテの頭部に集中する。
傷一つ付けられない威力だが、衝撃で内部の搭乗者はふらふらになるはずだ。
しかし少し後ずさりしただけでアダンテも搭乗者の魔王もぴんぴんしていた。
「君は私が魔物だと言う事を忘れたのかね。人間の様に柔な体ではない」
「これだけ距離が稼げれば十分だ」
ゼクロスはメガランチャーを構えるとアダンテの腹部にビーム砲をお見舞いした。
アダンテはふらついてはいるが倒れる様子が無い。
「君は私がアンデッドだという事を忘れたのか?この程度すぐ自己再生して―」
「その暇は与えん」
ゼクロスは最大出力のプラズマサーベルでアダンテに斬りかかる。
アダンテも手持ちの大剣を構え防御するが、それごと両断されてしまった。
アダンテの胸部装甲が剥がれ、ヒビの入った魔王の骨が露わになる。
「くくく、面白い。先程聞きたい事があると言ったな。ここまでやった褒美に答えてやろう」
しかしそこはアンデット、ここまでされても喋る事はできるようである。
「守護者と呼ばれる大鎌を持った赤いSVFの情報が知りたい」
「彼は守護者と言うのか。の割に私にSVFを与えてくれたのだがな」
「何?」
「彼の意図は図りかねるが、どうやら完全に人間サイドの存在とは限らん様だ」
「そんな事はどうでもいい。奴の居場所について何か情報は?」
「残念ながらない。魔界にいない事は明らかだがな」
「そうか…」
「質問には答えた。私はこれで失礼させて貰う」
いつの間にかアダンテは剣を杖に持ち替えていた。
コツンと床を叩くと、大きめの魔方陣が魔王の下に発現した。
「待てっ!」
ゼクロスがメガランチャーを構えたその時である。
魔方陣が発した眩い光が魔王を包み、そして魔王は姿を消した。
「仕方ない・・・ここを調査後に撤収する」
「そこまでだよ、魔王!」
そこには十字架の様な巨大な十字の剣を背負った、純白のSVFがいた。
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