第13話 冒険者ギルド

「・・・という訳でこっちの守護者の情報はこんなもんだ」


守護者が王都ロンデミオンに向かったと聞いたルークは、ローグと情報交換していた。

どうやら同じ情報を別ルートで仕入れていたらしい。


「王都ロンデミオンに潜入するのは止めた方がいいぜ。許可なく入った者は問答無用で死刑って話だ。俺のディファイアンスを使っても難しいだろうな」


「そうか・・・なら強行突入するまでだ」


「だからそう急ぐなって。まだ奴が王都のどこにいるのかも分からねーんだしよ。もう少し情報収集してからでもいいんじゃねーか?」


「情報収集・・・ハッキングか」


「できたらいいけどよ、する場所がねーだろ。こういう時はギルドに入るって相場が決まってるんだよ」


「ギルド・・・俺達の組織の様な物か」


「まあそんな感じだな。という訳で俺は盗賊ギルドに入ったぜ。昔取ったなんとやらだ」


隠密行動に長けているローグならばぴったりの居場所だろう。

情報収集にも最適である。


「お前さんなら冒険者ギルドって所だろうな」


冒険者ギルド、それは冒険者達が一攫千金を夢見て集う場所。

迷い猫の探索から竜退治まで何でもこなすのが特徴だ。

その代わり盗みはやらない。

そこは盗賊ギルドの領分だからである。


「冒険者ギルドか・・・いいだろう。日銭を稼ぐ必要もあるしな」


SVFのメンテから日々の生活費まで、エミリアから貰った資金は既に底を尽きかけていた。

冒険者ギルドで情報を得つつ生活費を稼ぐのも悪い話ではない。

そう考えたルークは王都ロンデミオンの近くの大都市ガーランドで冒険者ギルドの拠点を探すことにした。



―冒険者ギルド・ガーランド支部


「いらっしゃいませ。ギルド登録の方ですか?それともご依頼の方ですか?」


元気な受付嬢がにこりと笑顔でルークに挨拶する。

ルークはその笑顔に応える事無く淡々と用を告げた。


「ギルドに登録をしたい」


「ギルド登録希望の方ですね。ではこのサーチクリスタルへお手をどうぞ」


ルークは受付嬢に案内されるがままサーチクリスタルと呼ばれた巨大な水晶に手をやった。

そこには身体能力や魔法力等のステータスが数値化され表示されていた。


「身体能力は歳の割には高いわね。魔法力は・・・ゼロ!?」


「俺の性能はどうでもいい。SVFがある」


「え!?SVFですか!?」


どうやらこの世界の冒険者達はSVFを持っている事はゾークすら稀らしい。

(盗賊が持っている事が多いのは盗品だからだとか)

基本貴族の持ち物である事が多いらしい・・・ローグ曰く、だが。


「で、俺は登録できるのか」


「は、はい勿論で―」


「特別扱いは良くねぇなぁ、嬢ちゃん」


「ボギーさん!」


ボギーと呼ばれた大男はルークのステータスが表示されたボードに近付くとマジマジとそれ見つめた。


「はっ、この程度のステータスならお家に引っ込んでた方がマシだぜ、お坊ちゃん」


「貴様に用は無い」


「こっちには大ありだぜ。見込みの無い新人が入っても邪魔になるだけだからな」


「貴様の言う通りだな。未熟な志願兵はいない方がマシだ」


「そうそう、ってお前の事を言ってるんだよ!お前の!」


怒ったボギーはルークに詰め寄って鼻を鳴らす。

しかしルークは微動だにしない。

そこに受付嬢が意を決して割って入った。


「で、でもその人はSVFを持ってるんですよ!貴重な人材です!」


「どうせ粗悪品のゾーク辺りだろ。そんな山賊共ごまんと潰して来たぜ。それに貴族様にも見えねえ。本人の物か怪しいもんだ」


「面倒だ。貴様を倒す、生身でな」


「なんだとてめぇ!俺を舐めてんのか!」


「舐めて等いない。武器を使ってもいいぞ」


「二人の意見はよーく分かりましたから、とりあえず中庭に行きましょう。ね?」


面倒事に巻き込まれ、やれやれといった感じで受付嬢は二人を中庭に誘導した。



―冒険者ギルド・中庭



「手加減しねぇからな!SVFに乗るなら今の内だぞ!」


「貴様には必要ない。早くかかってこい」


「はわわわ、どうしましょう・・・」


受付嬢にはこの勝負が見えていた。

ステータスの差を見て二人の身体能力の差が明らかだからだ。

それにボギーは経験豊富な冒険者で強力な攻撃スキルを幾つも持っている。

ボギーの勝利は目に見えて明らかだった。

しかし・・・


「うおおおおおおおおお!」


ズドン!


ルークは自作のショットガンを突進してきたボギーのどてっ腹にお見舞いした。

いつしか自作した暴徒鎮圧用のショットガンだ。

ゴム弾を使用していながらもその威力は強力である。


「うおおおおおおおおお!!いってえええええ!!!!?」


「よし、これで勝負は付いたな」


「よし、じゃありません!生身で戦うんじゃないんですか!?」


受付嬢が渾身のツッコミをルークに入れる。


「生身で武器を使っただけだが」


「はぁ…こういう時は武器も使用禁止なんですよ」


「そういう物か」


「そういう物です!」


二人が言い争って?いると腹を痛そうに抱えたボギーが立ちあがって来た


「くっ、武器なんか使いやがって・・・卑怯者め!」


「だからお前も使ってもいいと言ったろう」


確かに言ったには言ったが、あの言い方だとルークは使わない様に聞こえても仕方がない。

激怒したボギーはついに巨大な棍棒を取り出した。

そして強化ポーションを飲み身体強化を行っている。


「これでその奇妙な武器はきかねぇぜ!撃ってきてみな!」


「遠慮なく撃たせて貰う」


ルークはゴム弾を撃つが身体強化を施したボギーの肉体には効果はなかった。

ルークは無駄だと察するとショットガンを地面に置く。


「がははは!無駄だって分かったろう!矢でも鉄砲でもSVFでも持ってこいってんだ」


「そうさせて貰う。こい、ゼクロス!」


ルークはボギーに近付き打撃攻撃を加えていくがまるで歯がたたない。

そうしている内にルークの元に空からゼクロスが現れた。

そしてルークはゼクロスに乗り込んだ。


「あれは・・・白金の騎士?」


「知っているのかい、嬢ちゃん」


「えーと、確かロードを倒したSVFがそんな見た目だったかと」


「けっ、そんな見掛け倒しに臆するボギー様じゃないぜ!喰らえ!爆雷怒竜撃!」


ボギーは棍棒に気を込めるとゼクロスに襲い掛かった。

しかしゼクロスはそれを片手で受け止める。


「ゾークを倒したと言うのは嘘ではないようだが、出力はゼクロスが上だ」


ゼクロスは棍棒を破壊すると今度はボギーの首を締め上げた。

するとボギーは泡を吹いて倒れた。


「任務完了。これで俺の冒険者ギルドへの登録は完了したか?」


問われた受付嬢は慌ててリストを呼び出すと、ルークの名前を登録した。


「じょ、上級のSVF持ちという事で、上級の冒険者として登録させて頂きます」


こうして冒険者ルークの戦いが幕を開ける・・・のか?

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