第50話

「亜種に関してはかしこまりました。それと、一つ提案なんですがバリケードの強化とかしても良いですか?」


「強化ですか?因みにどのような強化をするつもりかお聞きしても?」


「氷でコーティングして硬度を上げようかなと。後は黒い靄の周辺の地面を凍らせて魔物の動きを制限出来るかなと」


デスパレードが始まっても亜種が出現するか。不測の事態で軍の人たちがピンチになるまで出番がなさそうなので、事前準備で少し貢献しておこう。


「氷ですか?今回、火をメインで使う予定なのですが……」


「安心して下さい。俺の氷はそんじょそこらの火じゃ融けないので。まぁ、万が一融けた時は無いものとして扱っていただければ」


忘れがちだけど、俺が作るのは溶かす事が出来ない地獄の氷だからね。火炎放射器の火程度では一切溶かす事は出来ない。


「なるほど。それなら、お願いして宜しいですか。安全性を高められることは出来るだけしておきたいですから」


よし。許可も下りたことだし。早速、色々強化していこう。


まずはバリケードを氷でコーティングしていく。

最初は本当にただコーティングしていくだけだったけど。途中から軍の人達の意見を取り入れ

狭間を作りつつ高さを延長したり色々改良していった。


「魔力……どうやら始まってしまったようですね」


「第1小隊構え!!」


あらかた強化が終わり。1時間ほど経過し

デスパレードは始まらず。警戒しすぎだったんじゃ?という空気が漂い始めたころ。

何の前触れも無く、ダンジョンの入口から魔力が漏れ始めた。


このまま、デスパレード発生しなければ良いのにと思っていたが。そういうわけにはいかないらしい。


現場の指揮官が武器を構える指示をしたのと同時に入口から歩くエリンギが溢れ出してくる。


歩くエリンギ達は、ダンジョンの入口からでた瞬間アイススケート場のようにツルツルな氷の地面に足を乗せる事になり、面白いように転けていく。


転けて動けなくなっているところに50人による

火炎放射器の一斉掃射が開始された。


完全に見た目は家庭用のドライヤーなのに想像以上にえげつない威力してるな……


既に表面の一部が炭化し始めている。

見た目から勘違いされがちだけど。歩くエリンギは防御力も割りと高めで、火が弱点とは言え

生半可な火力じゃ効かないからな。

流石、超最新式の火炎放射器だな。


それにしても、デスパレードで地上に出てきた魔物は倒しても死体が消えないと聞いてはいたけど、ホントに消えないらしい。

倒せているはずだけど、死んだふりか?と少し警戒してしまう。


それに、既に歩くエリンギの死体でダンジョンの入口周辺の地面は隠れてしまっている。

このまま放置していると、いつかバリケードで囲んだ内側全てが魔物の死体で埋まり突破されてしまう。


まぁ、一応想定は出来ていたし対策は考えてある。


「それじゃ、回収に行ってきますね」


「お願いします。ホントに火炎放射器の掃射を止めなくて大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。あの中に突っ込む訳じゃ無いですし」


まぁ、冷気を纏えば中に突っ込んでも問題ない気もするけど。今回は、突っ込む訳じゃ無いのでそれを今言う必要は無いだろう。

上空に飛び上がりバッカルコーンを操り歩くエリンギの死体をバリケードの外に移動させる。

万が一生きている個体がいた時の保険として移動させた死体は全て氷の中に閉じ込めている。


「有り難いですが。白鹿さんの魔力は大丈夫何ですか?いざ、亜種個体と戦うとなった時に魔力が無くて戦えないとなったら一大事です」


「このぐらいなら回復量の方が勝っているのでご心配なさらず」


この程度だったら称号を手に入れる前の回復量でも問題ないレベルの魔力しか消費していない。


「そ、そうですか」


何か引かれている気がするけどまぁいいや。

それより今は歩くエリンギの死体をドンドン移動させよう。


そろそろ攻撃する小隊を交代するタイミングだな。


特にイレギュラーは起きず。順調にすれ魔物の討伐を続け30分。そろそろ火炎放射器の整備、リロードのため攻撃する小隊を交代しなければならない。


当然、交代中は攻撃が出来ない。

当初は、出来るだけ早く交代する。このタイミングで多少接近されるのは仕方ない。という割りと脳筋よりの作戦だったが。

交代中は俺が魔物を攻撃するなったため。

安全に交代できるはず。


最初は亜種個体と唯一戦闘できる戦力を途中で消耗させる訳にはいかないと断られてしまったけど。根気よく説明して納得してもらった。


ぽっと出だし仕方ないのかも知れないけど。

俺の実力想定低すぎない?とは思ったけど。

出現する魔物に対して非覚醒者でも有効な攻撃を出来る武器が開発されているからという理由で此処に派遣されている人は全員、非覚醒者だからってのも有るのかな。


ま、実際に実力を見てもらえば納得して貰えるだろう。


交代が開始されたタイミングでコツコツ作って貯めておいた氷柱を歩くエリンギに向かってドンドン落とす。


その間に交代はスムーズに進み、交代した小隊の火炎放射器の一斉掃射が始まった。


それを見て氷柱を落とすのを止めて、また死体の移動を開始した。


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読んでいただきありがとうございます。



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