第49話

「いや~ホントに助かりました。これで、追加のアイテムを作ることができます」


「こちらも通常より高く買い取って貰えてウハウハなので気にしないで下さい……ちょっと失礼」


探索者協会支部で魔石の売却を終えたタイミングで電話がかかってくる。


誰からか確認すると三國さんからだったので、店員さんにことわりを入れてから電話に出る。


「はい、白鹿です」


「申し訳無いけど。一刻を争う事態だから本題に入らせて貰うよ。複数の国でデスパレードの発生が確認された。時間差で桜花でもデスパレードが発生する可能性が高い。白鹿くんには間引きをしてもらった真比津ダンジョン前で待機してデスパレード発生に備えてほしい。勿論、強制では無く、依頼なので断ってくれても構わない」


デスパレード発生してしまったか……

断って母さんと妹を守ることを優先しても良いけど……


そんなことしたらデスパレード終息後、桜花で普通に暮らせなくなるよな。


はぁ、仕方ない。


「飛んで移動するのはありですか?」


「既に許可はおりてるから自由に飛んで貰って構わない」


それなら少し余裕があるな。


「分かりました。ダンジョン前で待機します。すいません、どうやら緊急事態みたいなので、今日は帰ります。お師匠さんにはまた後日会いにきますので、宜しくお伝え下さい」


「えっえっ!?」


急すぎて申し訳無いが説明している時間も惜しい。


直ぐに探索者協会支部の外に出て飛んで移動を開始する。



「母さんただいま。早速だけど瑠璃の通う中学校に避難するよ」


移動中にデスパレードが発生する可能性があるから避難してくれって放送が流れていたし。

一般にも既に情報は出回っているはずなので、特に説明せず。まだ、準備終わって無いとか言ってたけど。悠長に待っている時間はない。

最低限戸締まりをして母と一緒に家から出る。


母を持った状態で妹の通う学校に向かって飛ぶ。

霊布の手袋があるから出来る力技だ。

ダンジョンで手に入ってて良かった。


「軍も動きが早いね。既にバリケードの設置が始まっている」


学校に到着すると既に軍が到着し防衛の準備を進めていた。


軍の人たちがいるなら一安心だな。


次は、魔石を恵太と晋平に届けに行かないと。


あの2人もデスパレードが発生したら戦う事になるだろうし。少しでも強くできるならしておいた方がいい。

デスパレードが発生するまで後どれだけ時間が残されているか分からない。


間に合わないとまずい。飛ぶ速度を上げ貝王町に向かった。


「やっぱり二人は貝王町ダンジョン前で待機になったんだ」


「まぁ、フーラにジョーがいるからな」


「予定では海中では戦わず陸から攻撃する予定ですが。どうなるかわからないし水中戦ができる戦力は必要ですからね」


「まぁ、無理しない程度に頑張れ。死んだら元も子もないからな」


「それは駿くんもですよ」


「だな。寧ろ駿の方が危険だろ。デスパレードの発生する可能性もそっちのほうが高いって話だし」


まぁ、貝王町ダンジョンでは魔物の異常出現は起きておらず。デスパレードが発生するのは異常出現が起きたダンジョンだろうと言われているからな。

2人より俺の方が危険ってのはその通りかも知れない。


「まぁ、お互い気をつけようって事で。これも遠慮せず使ってよ」


ぶっちゃけた話。デスパレードの発生する確率とか俺達人間が大した情報なしにきっとそうだろうって言ってるだけだから正しいか微妙な説だ。


まぁ、今まででまだ一度しか発生した事ない現象だ。分からないことの方が多いのは仕方ない。


「っと話をしすぎた。それじゃ俺は持ち場のダンジョンに戻る」



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「「「「お待ちしておりました!!」」」」


昨日俺が間引きをしていた真比津ダンジョンに到着するとバリケードを設置したり武器の点検をしている軍の人達が一斉に敬礼で出迎えてくれる。



「止めて下さい。俺は一般人ですよ?…まぁ、いいやどうやって防衛するんです?」


「植物系の魔物がメインということで、50人で囲み。この火炎放射器で攻撃します」


何か、普通の銃っぽいのに加えて何かドライヤーみたいなの皆持ってるな?と思ってたけど。

アレ火炎放射器なのか。


当然、軍お抱えの職人が作ったダンジョン産の素材をふんだんに使った超最新式のものだろう。それを50人で狙い撃ち。俺、要らないんじゃない?


「なるほど。それなら歩くエリンギの胞子を気にする必要も無いですね」


歩くエリンギが周囲にばら撒く胞子も燃やして無効化してくれるだろう。


「それで、俺は何をすれば?」


「白鹿さんには出現すると考えられる亜種個体の討伐をお願いします」


亜種個体。デスパレードの時のみに出現し。

その亜種個体を討伐する事でダンジョンから魔物が溢れているのを止めることが出来る。

つまりデスパレードを終息させることが出来る。


「俺に一番美味しいところを譲っていただけると?」


軍人としては、亜種個体を討伐しデスパレードを終息させた。なんて功績欲しがりそうなもんだけど……


「はは。そう思えるのは、それだけの実力を白鹿さんが有しているからでしょう。それに命あっての物種です」


勝てない相手と戦闘して無駄死にするつもりは無いってわけか。



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読んでいただきありがとうございます。



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