第46話

「ん?どうしたんですか?全員微妙な表情をして」


助けた探索者の人達だけでなく恵太と晋平までなんとも言えない微妙な表情をしている。


自分たちは助かったけど。俺と合流する前に犠牲になった仲間がいて、こんな空気になっているとか?


それだったら、どうしたの?って聞いたのは失敗だったな。


「あ~いや。自分達は助かったし白鹿さんも無事帰ってきて嬉しいし安心したんだが……

まさか怪我どころか大した消耗すらない様子とは思わなくてな」


あ~。助けて貰った事自体感謝はしてるけど。

俺の強さが想像以上過ぎて引いてるというか。

俺達もあれだけの強さがあればって嫉妬しちゃった的な感じ?


「なるほど。思ったより深刻じゃなくて良かったです。それで、自分達は直ぐにダンジョンから出るために移動を始める予定ですが。皆さんはどうします?一緒に来ますか?」


ぶっちゃけ。この人達、俺達と一緒じゃないと

ダンジョンの外に出れないだろう。

それはあの人達も分かっているだろうけど。

帰りも同行させてくれというのは申し訳ないとか考えてそうなので、こちらから提案する。


「こちらとしては是非、そうさせて欲しい……が本当に良いのか?」


「助けといて途中で見捨てるなんて目覚めが悪いですしね。それじゃ、これに乗ってください。ちょっと冷たいですけど」


浮遊するソリを氷で作りそれに乗ってもらう。


氷の盾の追従モードの応用で何とかならないかなと試しにやってみたけど。

思ったより上手く行ったな。


けが人を連れて歩いて出口までとなると、相当時間がかかってしまうからね。

ホント上手く行って良かった。


「恵太と晋平もソリに乗って。魔石を処理してほしいから」


移動しながら食べさせるのは大変というか無理だろうからね。


さて、気合入れますか。浮遊しているから俺が引っ張ってる訳じゃないから体力の消費は特に無いけど。計、8人と二匹が乗れるサイズの氷のソリを浮遊させ追従させるとなるとそれなりに魔力を消費するし。

大半が怪我人なので大きく揺れたりとかしないように、完全に自動で追従させるのでは無く、

俺自身が注意して操作する必要もあり精神的に疲弊する事になるだろう。


それに一番の問題は、魔物が異常出現しているのは恐らく、この10層だけじゃないということだ。

普通に考えてピンポイントに10層だけで魔物の異常出現が起きてるとは考えにくいしな。

帰っている途中も大量の魔物と遭遇する事になるだろう。

幸いなのは、ミノタウロスJrより強い魔物は出現しないって事だな。


行きに連射速度重視の氷柱で倒せることも分かっている。


大群で来られても氷柱を連射しているだけで殲滅出来るだろう。


今思ったけど。道中探索者を救助する可能性もゼロじゃ無いか。


その時になって追加のソリを作っていたら時間がかかるので今のうちに用意しておこう。


その分、魔力消費は上がるけど……まぁ、何とかなるだろう。

称号が手に入っててホントに良かった。

あれが無きゃ魔力が足り無かっただろう。


「それじゃ、動きますよ?できるだけそうならないように注意はしますが、いきなり大きく揺れたりする事があるかもしれませんので、注意はしておいて下さい」


一応、注意をしてからソリを動かし9層にあがった。



「あ~疲れた」


あの後、何度も大量の魔物と戦闘になったり。

その場から動けずジリ貧では有るけど、人数がいた為、何とか魔物に抗い生き残っていた探索者達を助けたり。

色々あったが一層にあるダンジョンの出入り口前まで帰ってくる事が出来た。



今は、このダンジョンがある探索者協会支部に

備え付けられているポーションで探索者の治療をしているところだ。


出入り口の前にいるのにダンジョンから出ないのはその為だ。

ポーションはダンジョン内でしか効果を発揮しないからね。


「ありがとうございます。白鹿さんがダンジョンに居てくれたお陰で多くの探索者が助かりました」


たったの20人だけどね。ダンジョンに入る前に聞いた話だと大体100人ぐらいの探索者がダンジョンの中にいると言っていた。自力で脱出した人達もいるだろうとしても、結構な被害が出ている。



「そうですね。一人でも多く助けられて良かったです」


……探索者協会からしたら、それを考慮しても想定以上の人数の探索者を助けられたって事だろうな。


「因みにですが。やっぱり他のダンジョンでも魔物の異常出現は起きてるんですか?」


「はい。数カ所のダンジョンでの発生が確認されています。しかし、ダンジョンの中に入らないと確認出来ないのもあって把握している場所以外でも異常出現が起きている可能性もあり。軍と協力し慎重かつ迅速に確認を進めているところです」



「なら、確認できていないところに俺が行きますよ」


最低限実力もあって機動力もあるからな。

ここで休んでいる訳にもいかないだろう。


「本当に助かります。実は………」


難易度が高めで一層からミノタウロスJrレベルの魔物が出現するダンジョンの調査を頼まれた。


そのダンジョンは今日、中に誰も入っていないということで後回しになっているが、万が一この後デスパレードが発生した場合。

最低でもミノタウロスJrと同程度の強さの魔物がダンジョンから出てくる事になる。


だから。俺に先ず異常出現が起きているかの調査、異常出現が起きていた場合できるだけ魔物の間引きをして欲しいとのことだ。


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読んでいただきありがとうございます。

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