第44話

「ね、大して強くなかったでしょ?」


「いや。全く持って参考にならん。というか何?今の技、殴っただけでミノタウロスJrが爆発四散したんだけど、怖すぎるだろ…」


「正直、ミノタウロスJrの強さより駿くんのヤバさの方が際立ったというか…そっちのインパクトが強すぎましたね」


流石にやりすぎてしまったようだ。

まぁ、自分でもアレはやりすぎたとは思っていたから今回は、その評価を甘んじて受け入れよう。


「それじゃ、今度はしっかり手加減して戦うよ。それなら、俺達でも何とか倒せるかなって思って貰えると思うし」


おかわりのミノタウロスJrに指を指しながら、

そう伝える。


ミノタウロスJrが接近して来るまで敢えて待つ。


「うーん。威力はありそうだけど。大振りだし、フェイントもしてこないし。避けるのは難しくないね」


ミノタウロスJrが拳を振るう度に空気を切る凄い音がしているので、当たったらかなり痛そうだ。けど、それは当たったらの話だ。

かなり大振りな攻撃なので余裕で回避出来る。

力は有るけど格闘技術はゼロな戦い方って感じ。


そろそろ、良いかなミノタウロスJrの強さは十分見れたろ。避けるだけってのも飽きて来たし。


ミノタウロスJrの大振りな攻撃を避けつつバッカルコーンをミノタウロスJrに巻き付ける。


バッカルコーンに流す魔力量を増やして締め付ける力をドンドン強くしていく。


ミノタウロスJrはボキボキという骨が折れる音がなった後、消滅した。


「倒し方がグロいっ!!」


「完全に悪役の殺し方でしたね」


「バッカルコーンの性能調査のためにやっただけだから。もうやらないよ」


魔力を流す量でバッカルコーンの強度や巻き付いた時の力などを調整出来るので、どこまでいけるかの実験を兼ねてやったんだけど。

結論としては少し効率が悪い。

今、ミノタウロスJrを巻き付き殺すのに

さっき打った裂破とおんなじくらいの量の魔力を消費してしまった。


なら、裂破打ったほうが良いよね?ってわけだ。何なら、裂破で倒す場合、半分ぐらいの量の魔力消費でも多分倒せると思う。


まぁでも、バッカルコーンもドロップしたままの状態、言ってしまえば素材の状態で使っているので生産系スキル持ちの人に装備に加工して貰えば性能が向上する可能性も十分ある。

結論付けるのはまだ早いだろう。


「おっ魔石だけじゃなくて肉もドロップしてるぞ」


今、倒したミノタウロスJrは魔石以外に脂身の少ない赤身肉をドロップした。

人型の肉と考えるとちょっと思うところも有るけど。そこそこ美味しいらしいし食べないのは勿体ないので、これは牛肉と割り切る。


「なぁ。レベル上げとか後付で、実際は肉が食いたかっただけだろ?」


「確実にそうですね。軍の人達をタクシー代わりに使う理由として僕たちを使いましたね?」


フーラちゃんとジョー君のレベル上げは貝王町ダンジョンを調査するにあたり重要事項ということで、いま来ているダンジョンまで軍の人に送ってもらっている。


牛肉をタダで沢山食べられるダンジョンって最高じゃね?って思って場所を調べたら公共交通機関で行くのは少し面倒くさかったんだもん。

この際、透明になって飛んで行こうかな?とも思ったけど、いや流石にそれは…と思い留まった。


「そんなことないよ。因みにホテルに帰ったらBBQだよ。器材とか肉以外の食材は軍の人達が手配してくれてるから」


「共犯かよ(ですか)!?」


「いや、ぶっちゃけた話。未知のダンジョンの調査ってだけで大分精神的に疲弊するのに、海中探索だからね。こういう息抜きも必要ってわけ」


軍の探索部隊の隊長にミノタウロスJrを倒しに行きたいって話をしたら、そう言っていた。


確かにそうだよね。息抜きは必要だよね。


「なら何で俺たちはダンジョンに?」


「息抜きどころか命がけなんですが?」


「まぁまぁ。軍の人達は一昨日から貝王町ダンジョンの調査をしてたから……今日は地図の有る場所だしね。それに、フーラちゃんとジョー君のレベルを上げないと明日以降キツイのも事実だよ。ということで追加も来たし今度は、2人でやってみよう。大丈夫、多少サポートはしてあげるから」


イレギュラーに外で襲われて以降、なんだかんだ言って到達者を目指している二人はさっきまでギャーギャー言っていたのに直ぐに戦闘態勢に入る。


あの一件の後もしかしたら怖くて探索者を辞めちゃうかなと思ってたんだけど。

寧ろ到達者を本気で目指すとは思ってなかった。


いや、怖いからこそ目指しているんだろう。


まぁ、2人が本気だって分かってるから

ちょっと強引に今回の調査に誘ったんだよね。


イレギュラーの出現が増えていると言っても毎日のようにポンポン出現しているわけではない。到達者を本気で目指すならイレギュラーの情報を得られるコネというのは結構重要になってくる。


なので、軍と探索者協会に顔と名前を売っておこうってわけだ。


その分、イレギュラーに挑んで死んだなんて事にならないように若干スパルタで鍛えるけど。

機会を作った側の責任ってやつだね。


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読んでいただきありがとうございます。








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