第43話

「俺たち。今日は休みだったのに何でダンジョンにいるんだ?」


「そりゃ、フーラちゃんとジョー君のレベル上げの為だよ」


俺だって今日はホテルでのんびりしながら夏休みの宿題を進めるつもりだった。

けど。3層から魔物の強さが結構上がる。

二匹は戦闘力という点では微妙と言わざるを得ない。


このまま3層にいくと軍の人達に負担をかける事になってしまう。


なので、予定を変更して恵太と晋平を連れて貝王町ダンジョンとは別のダンジョンに来ている。


テイムした魔物は魔石を食べさせることでレベルが上がるらしいので、明日までにできるだけレベルを上げるつもりだ。


俺が一人で魔石集めしても良かったんだけど。

それをすると2人的には複雑な気持ちになるだろうなと思って2人も連れてきている。


「それはそうと駿くんは、どうしてわざわざ触手を持って来てるんですか?」


「触手って言うな。バッカルコーンと言えバッカルコーンと」


触手を持ち歩いてるって言うよりバッカルコーンを持ち歩いてるって方がイメージ良いでしょ?


……そんな変わらない気もする。


呼び方より見た目をどうにかする必要があるよな。


魔力を流すことで自由自在に操れる能力はそのままに見た目を変えられる人はいないだろうか。


生産系のスキルを持っている人にお願いして見るか。


と言っても知り合いにはいないし、探索者協会から紹介して貰わないと……


軍属の生産系スキル持ちの人は相当技術力が高そうだけど。流石に紹介して貰えないだろうし。


「見た目はあれだけど。結構役に立ちそうだから。それを試す為にも持ってきてるんだよ」


飛べる俺は移動に使ったりすることは無いけど。

戦闘中に使うことで戦略を増やす事は出来そうだからね。


「っと。ダラダラ話しながら進むのはここまでにして、さっさと先に進もう。時間が勿体ない」


今回来ているのはレンガに囲まれた道を進む迷路型のダンジョン、完全攻略されている訳では無いが、そこそこ深い階層まで攻略され正確な地図も販売されている。


当然、強い魔物の魔石の方が手に入る経験値が多いので、のんびり歩いてダンジョンを進むのは勿体ない。


俺は飛べるし二人はフーラちゃんとジョー君に騎乗すれば人が走るより早く進める。


序盤はガン無視で、そこそこの強さの魔物が出てくる階層まで一気に進む。


途中ですれ違った探索者にめっちゃ見られたりすることはあったが、それ以外は特に問題なく目的の階層に到着した。


「いくら移動が早いからって。ほんとに10層まで2時間で来れるとは思わなかった」


「最短の正解ルートを通って来たからな。まぁこんなもんだろ」


「それよりも、いきなり10層なんてホントに大丈夫何ですか?」


「問題ないって。10層と言っても魔物の強さ的には、貝王町ダンジョンの3層の魔物の方がちょっと強いぐらいのはずだから」


探索者協会でしっかり調べているから大丈夫。



「いや、ミノタウロスですよね?アレ。そんなメジャーな魔物が弱いなんてあり得るんですか?」


「恵太は心配性だなあ~。アレはミノタウロスじゃなくて、ミノタウロスJr。

サイズも180cmぐらいしかないし。武器も持ってないでしょ?」


確かにミノタウロスは難易度の高い迷路型のダンジョンの深層で出現する魔物。

もし、2人が戦ったら文字通り一瞬でミンチにされるだろう。


が、目の前の魔物はミノタウロスJr。一言で言ってしまえば、弱いミノタウロスだ。


「いやいや。子供って嘘ですよね!?180cm

も有るんですよ?」


「普通のミノタウロスって最低でも3m有るらしいからね。ミノタウロスからしたら十分、子供サイズだよ。まぁ、実際に強さを見るまで信用できない気持ちも分かるし。最初は俺が戦うよ」


俺がそういったのと同時にミノタウロスJrがこちらに気づいた。


かなり興奮した様子でこちらに接近してくる。

探索者協会の情報通り、かなり好戦的な性格をしている。


「お~威力重視の氷柱は余裕で躱すね」


とりあえず。威力重視の氷柱を一発飛ばしてみると。走る速度を一切落とさず余裕を持って躱して見せた。


連射速度重視だと、筋肉に防がれてダメージ通らなそうだし。

弾速を重視してもおんなじだろう。


まぁ、普通に撃つより時間をかけて威力と弾速2つを両立すればいいだけの話しだけ何だけどね。


相手は遠距離攻撃手段を持たず。離れたところから近づいて来ているわけだからな。

時間はたっぷりだ。


が、今回はコレに活躍して貰おう。


手に持っているバッカルコーンに魔力を流し

ミノタウロスJrに向かって伸ばす。


ミノタウロスは自身に向かってくるバッカルコーンを避けるが、避けた方向に操作するだけだ。


何回か避けられたがバッカルコーンを胴体に巻き付ける事に成功する。


そのままバッカルコーンを元の長さに戻しミノタウロスJrをこちらに引き寄せる。


パンチの間合いに入った瞬間裂破を叩き込む。


結果、ミノタウロスJrは限界以上に空気を入れた風船のように破裂してしまった。


「倒した魔物が消滅するタイプじゃなきゃ

今頃、返り血で大変な事になってたな」


流し込んだ圧縮魔力が多すぎたみたいでオーバーキルしてしまった。


まぁ、冷静に考えればモササウルスと同じ威力で使ったらこうなるよね……



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る