第41話

「それにしても、ドロップとか報酬は無しか」


魔力量と魔力回復速度が上がる称号が報酬なんだろうけど……

何か目に見える物が欲しいよね。

いや、称号がめっちゃ有用なのは分かってるし。その上で追加を強請るとかマジ?って思われそうだけど。


「ん?海底に沈んだ壁の残骸の中に何か埋まってる?」


モササウルスが壁をぶち破った際の残骸をふと見ると、壁とは別のものが混ざっているのに気づく。


近づいて確認してみるとモササウルスの背鱗板

の一部だった。


壁の残骸を退け背鱗板を手に取る。


発泡スチロールで、そっくりに作った偽物ですか?と思ってしまうほどの軽さに驚愕する。


もっと重量のあるものだと思ってたよ。


この軽さで、あれだけの防御力。

防具にできるだけの量はないが、もし防具を作ることが出来たら相当性能の良いものが出来上がりそうだ。


「戻るか……」


最後に見落としているものがないか見回してから。ここから脱出するための魔法陣の上のにのり発動させた。


「あれ、まだ戦闘中か」


個人的にはモササウルスと長い時間戦ってた気になってたけど。実際には俺の準備時間を入れても6〜7分ぐらい。戦闘が終わった後の時間を含めても俺があっちに強制移動させられてからな10分程度しか経っていない。

そう考えると。まだ戦闘していてもおかしくないか。


と言ってもそろそろ終わりそうだし。俺が参戦

する必要は無さそうだ。


外からのんびり観戦させて貰おう。


流石軍の人達は連携が完璧だな。集団戦闘の技術は必須だろうが、今日始めてあった恵太と晋平、それにサメの魔物であるフーラちゃんとジョー君たちとも合わせられるというのは流石だ。


オニカマスなので、鋭い牙を持っているのは勿論、全てのヒレが刃物顔負けな切れ味を持っているようだ。


「ん?わざわざ俺を狙って来るのか…」


参戦するつもりは全く無かったのに、オニカマスの方から俺に向かって攻撃を仕掛けて来た。

無防備な俺を狙うのが一番とでも思ったのだろうか?


泳ぐというよりは、スキルで水流を操り水流に乗って俺に突っ込んで来ているって感じだな。

結構、早いけど。モササウルスに比べたら遅すぎる。

まぁ、比べるのが間違いか。


「俺のことを狙わなきゃもうちょっと見せ場があったかもしれないのにね」


突進してきたオニカマスを手に持っていたモササウルスの背鱗板で殴打してはね返す。


跳ね返っていったオニカマスは、そのまま魔石やアイテムを残して消滅した。


手加減したつもりだったけど。既にかなりのダメージ受けていたというのもあって、俺の攻撃がトドメになってしまったようだ。


「いや~皆無事で良かったです」


「大変だったのはどちらかと言えば白鹿さんの方だったのでは?」



「まぁ、ヤバいのがいましたけど。俺の実力を確認する試練的なものだったので…」


まぁ、試練と言っても。モササウルスが求める最低限の実力が無ければ容赦なく殺される感じのハードな試練だったけど。

最後の噛みつき攻撃とかマジで死を覚悟したもん。



「今すぐ、詳しい話を聞きたいところですが…」


「今は、先を確認する方が先でしょう。

あっ、それと俺にはオニカマスを倒したときに出現したものとは別の魔法陣が見えてるんですが。皆さんも見えていますか?」


俺がモササウルスと戦った場所から戻ってきたときに出現したと思われる魔法陣について質問する。


「私には、白鹿さんが指を指しているところには魔法陣は見えません。誰か見える者は?」



軍の隊長が質問すると全員見えないと返答する。


「何となく予想は出来ていましたが。試練に挑戦し乗り越えた人しか使えないタイプですか」


そもそも、試練に挑戦出来る条件って何なんだろうね?


到達者である事?


特殊階層で、ウツボか幽霊船どちらかを討伐していること?


ぱっと思いつくのはこの2つかな。


どっちも有りそうだけど。


何となく違う気がする。


うーん。モササウルスともう一度対面したときに質問してみるか。


人間と同等かそれ以上の知能を持っている感じだったし。質問すれば答えてくれるかもしれない。


「先に進もうといったそばから引き止めるような事をしてしまいすみませんでした。今度こそ魔法陣の先を調査しにいきましょう」


2層のときと同じように、まずは俺だけで魔法陣を発動させる。


流氷や氷山が存在する海(海中限定)か。


よく写真や、絵などで氷山の大部分は海中に沈んでいるやつを見るけど。まさにそれと全くおんなじ光景が目の前に広がっている。


巨大な氷がいくつも浮いている海…多分目茶苦茶水温低いよね?


俺は寒さに耐性があるせいで、2層より少し水温下がったぐらいにしか感じないが。

3層の景色的に多少下がったでは済まないレベルで水温が下がっている筈だ。


酸素量の問題を気にしなくて良くなったのに、次は寒さ対策か。

うーん。2人に対策になりそうな魔物をテイムさせるか?


時間がかかりそうだし現実的ではないか……

そもそも、そんなにぽんぽん魔物をテイム出来るのかも知らないからな。


そんな事しなくても軍に何か対策があったりするかな?


冷たい海にダイビングする時に着用するドライスーツぐらいなら準備されてそうだし。

案外、新しい対策無しで調査を続行できるかもしれない。


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読んでいただきありがとうございます。

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