第39話

「階層ボスを倒さないと先に進めないやつですね。どうします?」


俺が倒してもいいけど。軍の人達もやる気みたいだし。今回は少しサポートする程度になるかな。


「は?オイオイまじかよ……すいません、あのオニカマスは俺抜きで何とか倒して下さい」


黒い靄が、突如現れ俺のことを強制的にのみこんだ。


「一応、逃げ帰る事は出来そうだな」


今から戦う事になるであろう魔物を警戒しながら周囲を確認する。壁に囲まれた円形状のバトルフィールドの一箇所に窪みが存在し、そこに

前回、特殊階層から脱出するのに使った魔法陣があるのが見えた。


一応、逃げるという選択肢が取れるのは有り難い。


「と言っても。アイツが簡単に逃げ帰る事を許してくれるとは到底思えないけど……」


俺が周囲を確認している間、一切動かずこちらを待ち構えるモササウルスを見る。


めっちゃ戦う気満々っぽいし。絶対に簡単には逃がしてくれないだろう。


それにしてもどうやって戦おう。ワニのような鱗板にガッツリ守られており、ダメージを与えられるところが限られていそうだ。具体的に言うとお腹とか鱗板と鱗板の本当にちょっとした隙間とか。


「……強者の余裕ってやつか。まぁ良い有り難く準備させて貰おう」


モササウルスはこちらが攻撃をするまで動くつもりは無いらしい。

そういう事なら時間をかけて準備させて貰おう。


時間をかけて大きな氷の槍を作り出す。


作っている途中で焦って攻撃仕掛けて来るかなとかおもってたんだけど。一切動かなかった。

大分舐められてるな。まぁ、おかげでこうやって準備が出来ているので、寧ろ有り難い。

出来る事ならこのまま俺のことを舐めきった状態で本気を出さない間に倒してしまいたい。


「さぁ開戦だっ!!」


完成した氷の槍をモササウルスに向かって飛ばす。


当然、回避行動を取ってくるだろうし、手動で操作して追尾させて当てるつもりだったが。


モササウルスはその場から動かず。氷の槍が近づいて来たら横に一回転してテールアタック。


氷の槍はいとも簡単に粉々に砕け散った。


「まぁ、氷の槍が砕かれるのは想定内だ。

……モササウルスが無傷なのは想定外だけど」


砕かれる過程でモササウルスにもダメージ入ると思ってたんだけど……

まぁ仕方ない直ぐに切り替えていこう。


俺の初撃はまだ終わってないしな。


砕けた氷の槍の破片を操り、完全にこちらを舐めているモササウルスの腹部を攻撃する。


チッ他の部分に比べたら柔らかいってだけで、十分に硬い。

破片が刺さりはするが、浅い。あれではほとんどダメージになっていないだろう。


「はっ!?ほぼノーモーションビームっ!?」


モササウルスが口を開いたと思った瞬間、超圧縮された水流レーザーが飛んできた。


こういう攻撃って溜めの時間がいるんじゃないの?

……何か前にもこんな事あった気がする。


ダンジョンの魔物はビーム攻撃をノーモーションで撃ってくる。そういうものだと覚えておこう。


「ゴーレムのイレギュラーのビームよりは速度は遅い、お陰で見てから回避出来た。威力に関してはモササウルスの方が圧倒的に上だから絶対に回避しないとまずいけど」


霊体化中にレーザーに掠りでもしたら痛みで失神、霊体化も解除されてトドメさされて終わりだ。


それと、最初は自分の周りを追従させていた5つの盾を一直線に配置して防ごうとしたんだけど、全く意味が無かった。何の抵抗もなしに一瞬で全て貫通して俺の方に飛んできたからな。追従させてた氷の盾は戦闘開始前に槍と一緒に時間をかけて作った物だから、強度には自信あったんだけどな……



「まじかよ、浅いと言っても治るの早すぎだろ……」


先程、氷の槍の破片で傷つけた傷が全て綺麗に治っている。


再生能力持ちかよ……

あの再生速度、チクチク攻撃をして倒す線は消えたな。


再生速度を上回るダメージを与え続けて倒さないといけないわけだ。



「頞浮陀地獄を使うには霊体化を解除する必要があるから最終手段だし……」


最終手段と言っても、頞浮陀地獄を使ってもモササウルスを一瞬で倒すのは無理だと思うけど。


完璧に全身を凍結させるには数十秒はかかるだろう。

その間、モササウルスは確実に抵抗してくる。

そんな状態で制御の難易度が高い頞浮陀地獄を継続して発動させるのは難しい。


ということで今回は頞浮陀地獄以外の技で倒すor頞浮陀地獄で完全凍結が完了するまで、どうにかしてモササウルスの動きを拘束するかどっちかだ。


あ~後は何とかして魔法陣のところまで行って逃げるってのもあるな。


「再生速度を上回るには……手数で攻めるのが現実的かな。そうなると、近接攻撃だな」


近接戦闘の経験はあまり無いけど。まぁ、何とかなるだろう。というかするしかない。


氷で両手持ちの大剣を作り出し。当然のように連射してくる超圧縮水流レーザーを躱しながら接近。このまま下に潜り込んで一番防御力の低い腹部を狙う。


が、モササウルスは接近する俺に大して超圧縮水流レーザーの連射を止めて

縦回転をしながら俺に対して突っ込んで来た。


避けながら適当に大剣を振ってみたが背中のゴツゴツした鱗板に当たってしまったらしく、大剣が砕けた。

やっぱり適当は駄目か。


後、気づいたんだけど。これ霊体化して浮遊しているから戦闘になってるけど。実際に泳いで戦った場合。

超圧縮水流レーザーを始め、モササウルスが縦回転して突っ込んで来るとき。何だったらヒレを動かし泳ぐだけで周囲に目茶苦茶な水流を発生させている筈だ。

そんな状態で戦闘しなきゃいけないって相当クソゲーだな。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る