第38話

「2層を探索する時は索敵役がいたほうが安心だなこれ」


タコの数が思ったより多い。攻撃されてから対応できるけど。事前に分かるならそれにこしたことはない。


「いや、先ずここまで来れる人が特殊も特殊だと思いますが」


まぁ、たしかに。2層だと通常のダイビング装備どころか軍の最新装備でも到達出来ないし

索敵役が〜とか以前の話だな。


「そう考えると。その問題を一匹で全てクリアしている、フーラちゃんとジョー君マジで凄いよ」


ダンジョンにきてから、それしか言ってない気もするけど。事実だから仕方ない。


後、こうやって褒め続けたら少しは俺のこと嫌いじゃ無くなってくれないかな?という思いもあったり……


「!?何かが高速で突っ込んで来るって!!」


晋平が、そう声を上げた瞬間、頭上から魚が突っ込んでくる。

氷柱を作って飛ばすのは間に合わない。


狙われている人の頭上に氷を作り出す。

取り敢えず防げれば良いので形とかは適当だ。

というか、そんなことに意識出来ないぐらい時間が無かった。


「ダツか。硬度を全く考慮せず、生成速度重視だったとしても鋭い顎の部分は全部刺さっているとは思わなかった」


鋭い顎の部分より胴体がデカイから胴体で突っ掛かって止まったけど、鋭い顎の部分だけで考えたら完全に氷を貫通してたな。


氷に刺さってビチビチしているダツを鯖折りしてトドメをさす。最後っ屁で自爆なんかされたら洒落にならないからね。変なことされる前に倒してしまうに限る。


「有り難うございます」


「こういうときのための俺なので、気にしないでください」


戦力として期待されてここにいるんだからこういうときに活躍しないと、何でいるの?ってなっちゃうからね。


それにしても、ここの魔物は不意打ちがメインの攻撃のやつばかりだな。


というか、特殊階層の魔物を除けば全て不意打ちを狙ってくる魔物だ。


普通だったら。酸素量を気にしないといけないし、常時不意打ちに警戒しないといけない。

めちゃくちゃ精神をすり減らすダンジョンだな。


さっきみたいに。フーラちゃん、ジョー君が感知して、それから対処するだと毎回ハラハラしなくちゃならないので予め全員の頭上に硬度を意識して作り出した氷の盾を作っておく。


常時俺が魔力を消費することになるけど、自動で追従するようにすることも可能。

そうしておけば、さっきみたいに焦って氷を生成する必要が無くなる。



というか、未知の場所を調査してるんだから、何があっても良いように盾を事前に作って追従させておくべきだったよね?

魔力を消費し続けるっていうデメリットはあるけど。

ダンジョン内なら体内で生産と周囲から吸収2つの方法で魔力を回復させてるから。

魔力の回復が早い。なので魔力を消費し続ける事は、そこまでデメリットにならないはずだ。


と言っても複数人分、自動追従モードを維持するとなると回復量より消費量のほうが多くなるのも事実。いざという時に魔力が全然有りませんってならないように気にはしておかないと。


タコとダツの攻撃を氷の盾を防ぎながら岩礁帯を進む。


「これ、アワビじゃね?」


岩にアワビのような貝が張り付いているのを見つける。

というか、よく見るとあちこちに張り付いている。


「いえ、これはトコブシだと思いますよ駿くん。呼水孔の数的に」



何でそんな事までしってんの?ってことを知ってるよな恵太って。


「で、トコブシとアワビって味が違ったりするの?」


「普通の高校生なので、ネットでの知識仕方ないですが。トコブシのほうが食感が柔らかいらしいですが、実際ほとんど変わらないので、よっぽどどちらかを食べ慣れていなければ見分けがつかないとも書かれていました」



「それじゃあ、ぶっちゃけ名前が違うだけ?」


「そうは違うと思いますけど…まぁ、そう思って良いんじゃないですか?トコブシの方が小さいらしいですけど。ダンジョン産だからか結構大きいですし」


なるほど。普通はトコブシのほうが小さいのか。と言っても、周囲の岩に張り付いているトコブシはどれも港の朝市とかで売っているのを見たアワビと変わらないサイズをしている。


外のアワビとトコブシ以上に違いがないって事だな。


俺も普通の高校生だからアワビなんて一回か2回食べた事あるかな?って感じだし。

その時、正直あんまり美味しいとは思わなかったけど。折角だし採って帰ろう。

ダンジョン内には漁業権なんて存在しないからな。トコブシをいくら採っても犯罪にならない。


薄い氷のヘラを作り貝と岩の間に差し込み無理やり剥がす。


口に合うかもわからないし。そもそも鑑定スキルで調べて貰わないと食べられるかも分からないのでとりあえず。一人一個食べられる量だけ採集し持ち帰る。


地図を確認しながら迷路のような岩礁帯を進んでいると、開けた場所に出た。


そこには2層のボスらしき巨大なオニカマスが悠々と泳ぎこちらを待ち構えていた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る