第35話

「いや。ただ自慢したかっただけだけど?

B級サメ映画が好きな白鹿からしたら、羨ましくて仕方ないだろう?」


「は?お前がテイムした空中を泳ぐサメ、チェーンソーで切り刻むぞ?」


いやマジで、そんな理由であの写真送ってきたの?本気で許さん。羨ましいに決まってんだろ!!


「ねぇ。サメって事は当然水中でも活動できるんだよね?」


「おっおう。サメだからな水中もスイスイ泳ぐけど……」


「ふーんじゃあ。晋平が、スキューバ装備を装備すれば、サメの背に乗って水中を自由に探索することも可能だったりする?」


「いや、ジョーは共泳っていう。肺呼吸の生物を一時的にエラ呼吸出来るようにするスキルが使えるから、潜る為の装備とかはいらないんだ」


「はい、採用。話は、通しておくから出来るだけ急いで貝王町に有る〇〇港に来るように詳しい場所は……調べればわかるでしょ?」


サメだからジョーって安直過ぎるだろと言いたいところだが、一旦おいといて……


地味に優秀じゃないか?ジョー君。


いや、一匹で陸海空すべての移動手段として活躍できるだけで地味にじゃなくて、相当優秀だな。


それより、他者の体の構造を変えるってヤバく無い?

いやまぁサメだし、それぐらい出来てもおかしくないか。


俺がジョー君と触れ合いたいが為に貝王町ダンジョンの調査に巻き込もうとしたけど。

想像以上に調査の役に立ちそうだ。


軍側がどういう反応をするかわからないけど。探索者協会側は歓迎してくれるだろう。


軍側は超最新式の装備を持ち込み複数人ダンジョン内の調査に送り込めてる。


それに比べ探索者協会側は俺一人。


ダンジョン内の調査以外の部分で探索者協会側は結構頑張っている。だからこそ探索者協会側からしたら面白くない状況だったはずだ。


それが、いきなり自分達側の調査人員を2人も増やせるとなれば。喜んで協力してくれるだろう。


「は?いや、話を通しておくって何?」


「いや、水中でダンジョンの入口が発見されて、軍と探索者協会が共同で調査しているってニュースになってるんだから知ってるでしょ?」


俺が参加していることも報道されていたし。

てっきり自分も参加したいからあの写真を送ってきたと思ったのに。

まさかの自慢がしたかっただけって言われて本気でビックリしたよ。


「え?あぁ〜初めて魔物をテイム出来た事が嬉しすぎて、その話すっかり忘れてた。確かにニュースになってたわ……話を通しておくってまさか……」


「当然。その海中に有るダンジョンの調査人員に推薦するってことだけど?」


「いやいやいや。おかしいって。絶対、俺なんかが行っても足手まといになるだけだし」


「そんな事ないよ。入口が、海の中にあるってだけじゃなく、ダンジョン内も海の中だから、ジョー君がいるってだけで。物凄いアドバンテージだから」


「そうなの?」


「そうだよ。それじゃ待ってるから恵太と一緒に来てよ?」


そう言って電話を切った。


「さて、本当に2人が来たとして。話がスムーズに進むように事前に話をしに行くか」


寝間着から着替えて、先ずは探索者協会側の現場責任者のところに向かった。


「成る程。白鹿さんの友人で貝王町ダンジョンに、とても相性の良い魔物をテイムしている探索者を追加の調査人員として連れて行きたいと」


「はい。サメが使う生物をエラ呼吸出来るように変化させるスキルは同時に複数の対象に使用できるらしいので、連れていけば、調査メンバーのダンジョンでの活動限界を飛躍的に伸ばす事が出来ます」


軍の人達の装備では2時間程度という活動限界があるため正直、大した調査が出来ない。


水中でリスクなしに、それだけの時間程度活動できるのは凄いことなんだけど。


ダンジョンをくまなく調査するとなると決して長いとは言えない。


「それは素晴らしいですね。本人たちが望むなら探索者協会は協力しますよ」


「ありがとうございます本人たちに伝えておきます。突然押しかけたのに話を聞いていただきありがとうございました」


探索者協会の現場責任者の人の部屋を後にする。ここまでは想定内。次は軍の人のところに話をしに行くわけだけど……さて、どうなることやら。



「なるほど。我々の活動限界が伸びると……」


「はい」


「それ自体は素晴らしい事ですが。そのお二人自身の実力の方はどうなんですか?」


能力的には問題ないけど。実力が足りないのなら邪魔になるので要らないという感じかな。


「弱いって事はないと思いますよ。魔物を初めてテイムしたのが今日の話で、それまでは2人ともを自分で戦っていたみたいですし」


そういいながら、2人が夏休み前学校で飽きる程、聞かせてきたダンジョンでの話を伝える。



「成る程。最低限の実力は有りそうですね。そういう訳だったら歓迎しますよ。今の我々の装備では2層以降の調査が絶望的だったので」


良し。思ったより簡単に同意が得られた。

やっぱり軍の人にもメリットがあったのが大きかったな。


自分の部屋に帰り許可はしっかり取っといたよ〜とメッセージを送り、明日も早いので眠りについた。



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読んでいただきありがとうございます。

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