第33話

先程、仕舞った手袋を取り出す。


「やっぱり、霊体化させなくても触れる…もしかして、そういう事?」


手袋を装着する。触れるんだから当然なんだけど。霊体化中に霊体化してないものを装備することができた。


手袋を装備した状態で、さっきすり抜けた魔石を回収できるか試してみると。すり抜けること無くしっかり掴むことが出来た。


「霊体化中でも実体のときと変わりなく、ものに触れたり持ったり出来るようになる手袋ってことか」


すり抜け無くなるのは、それはそれで不便だなと思ったけど。そういったときは手袋を霊体化すればいい話か。


「それにしても俺に都合が良すぎないか?」


俺からしたらマジで嬉しいアイテムだけど。

こんなの俺以外に使い道無くないか?

そんなアイテムをピンポイントで俺が手に入れるって、そんなことある?


うーん。ダンジョンが探索者の思考を読み取って欲しいものを宝箱に入れてくれてるとか?

いや、そんな話聞いたこと無い。


「もしかして、幽霊船を倒した報酬だからこういった効果のアイテムが宝箱に入ってたとか?」


ウツボと幽霊船どちらを探索者が倒すかで手に入るものが変わる仕様で俺が倒したのは幽霊船。


だから霊体化の状態で使うようなアイテムが宝箱に入っていた。なので俺が手に入れたのは完全に偶然が重なった結果。


結局、俺に都合が良すぎって事になるんだけど……


まぁ、気にしても俺がどうにか出来る話ではない。


運良く便利なものを手に入れた。それで十分。


早くここから出よう。ここでこうやって余計な

時間を消費すると。軍の人たちのタイムリミットに間に合わなくなる。


出現した魔法陣の上にのり古代遺跡を後にした。



「黒い靄が見当たらない。一度クリアしたら消えるエクストラステージみたいなものか…それとも、全く別の場所に転移したのか……」


帰ってきたとは思うんだけど。唯一の目印であった黒い靄が見当たらないので判断が出来ない。


「あっそっか。無線機」


通じれば軍の人たちと同じ1層にいるということになる。

まぁ、入口を指し示すコンパスがあるから自分が何処にいようと帰れるから焦る必要は無い。


「あ~あ~こちら白鹿。繋がっているでしょうか?」


「こちら松戸、しっかり聞こえていますよ」


おっ通じたってことは一層に戻ってきていたようだ。


「伝わって良かったです。今から戻るので連絡しました」


言葉だけで詳しく伝えるのは無理だと思ったので、今から戻る事だけ伝える。



「かしこまりました。我々も入口前まで戻り待機します」


「はい。了解です」


無線を終了してコンパスを確認する。


軍の人たちのほうが早く到着するだろうけど。あまり待たせないように急いで帰ろう。


「お疲れ様です。白鹿さんご無事で何よりで

す」


「ありがとうございます。皆さんも問題なさそうで良かったです」


合流した軍の人たちにパッと見、怪我を追っている人はいない。


まぁ、怪我する要因が一層だと貝の飛ばしてくる針だけだし。事前に知っていれば対処もできるだろうし、怪我がなくて当然か。



無事に合流出来たしダンジョンを脱出する。


船に戻る為に水面に向かって浮上していく。


水深5m付近で軍の人たちは一度停止。俺は止まらず、先に船に戻る。


軍の人たちも全員無事で後から上がってくることを伝え、船の上で休んでいると。


軍の人たちが全員浮上してきた。

軍の人たちが全員装備を外し終えたところで船は港に向かって動き出す。


移動中は手に入れた手袋の使い道を考えていたら、いつの間にか港に到着していた。


港に到着したら仮設の探索者協会支部で報告会だ。


「ということで、この手袋を手に入れました」


今回は特殊な階層で手袋を入手したことしか報告することが無いので報告は直ぐに終わった。


「因みにですがウツボと幽霊船。どちらも白鹿さん自身で討伐するということは考えなかったんですか?」


「先程お伝えした通り。俺の感覚なので間違っている可能性もありますが、どちらもイレギュラーより強い魔物です。一対一ならまだしも、そのレベルの魔物2体同時に戦うのは流石に無謀だと思ったので、どちらも俺が倒すというのは案に無かったですね」


まぁ、映像だけでは完璧に伝わらないか。



「成る程。有り難うございました」


それでも、追加で何か言ってくることなくアッサリ引き下がった。


じゃあなんで聞いたんだよ?と思わなくも無いけど。ぶっちゃけ質問はどうでも良く俺の反応を確認するほうが目的だったとか?


まぁ、どうでも良いや。俺はいつも道理にやるだけだ。


「白鹿さん有り難う御座いました。次は私達の報告ですね」


そう言って軍の人たちの報告が始まった。


メインは貝と宝箱の割合について。

だいたい50:1の割合か。


案外大したことない無いじゃんと思うかも知れないけど。

結構穴の数自体多いからな。独占出来るなら1日に一層だけで20〜30ぐらいの宝箱を手に入れられるんじゃないかな?


まぁ、実際。俺みたいに呼吸が必要ない状態になれるか。水中でも呼吸できるようなスキル、もしくは軍の最新式リブリーザーみたいなのが無きゃ一層を回り切る事なんて出来ないし。

独占するのは現実的では無いけど……




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



読んでいただき有り難うございます。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る