第27話

「動物カテゴリ確定か……ちょっと認めたくない気持ちも有るけど」


シャケの切り身が霊体化で触れる事が出来る状態に変化した事で、死んでいる状態である事が確定した。

そして死体が残っていたということになるので

魔物ではなく動物だと言うことも確定した。


ちょっと信じられないけど、これが事実。

ほんとダンジョンって何でもありだなと再認識することとなった。


「それはそうと。どうやって持ち帰ろう。生ものが手に入るとは思ってなかったから、生ものを入れるものを持って来てないだよね」


ダンジョンで手に入れたものを持って帰る入れ物は当然持ってきてるけど。

魔石とかを入れる想定だし。そこにシャケの切り身を直接入れるのはちょっと……


「氷に閉じ込めちゃうか」


直接入れるよりはマシだろう。

シャケの切り身を直接凍らせるのではなく表面に氷の膜を作ることで冷やしながら魔石とかと一緒の入れ物に入れてもシャケの切り身が悲惨な事になることも防いでくれる。


ほんとは氷が直接触れている状態ってのは氷焼けを引き起こすので、出来れば避けたほうが良いんだけど……今回は仕方ない。


「うん。シャケの切り身に時間をかけすぎたな」


まだ、シャケの切り身としか遭遇してないからな。

このままでは、真面目に調査したの?って軍と探索者協会に怒られてしまう。


気を取り直して、ダンジョンの探索を再開した。


「うーん切り身としか遭遇しない」


ダンジョン内を適当に進んでいるが、さっきから動物カテゴリである魚の切り身としか遭遇しない。


このダンジョン魔物いないの?


因みにシャケの切り身では無く魚の切り身という言い方をしたのは、シャケ以外の切り身も泳いでいたからだ。


なんか、鯖のやホッケっぽいのからマグロの柵っぽいものまでゲットしている。


三十分程、適当に飛び回っているだけで100切れぐらいの切り身達と遭遇したことを考えるとこのダンジョンに定期的に来れば。魚を買う必要無くなりそうだ。


このダンジョンにいっぱい人が来たらその分一人あたりの取り分が減る事になるから、そうはいかないだろうけど。


でも魚の切り身のためだけにスキューバ装備必須のダンジョンに来る探索者なんていないだろう。

もし、いたとしても極少数だろうし、そんなことにはならないだろう。


「いやいや。また、切り身に話が戻っちゃってるし……」


これだけ動き回って魔物と一体も遭遇しないというのは偶然では無く。何か理由があるはず。



魔物の出現数が極端に少ない代わりに出現する魔物は強力とか色々考えていたが。


ふと、海底の砂地に不自然な穴が空いている事に気づく。


「アサリが水管を出してた名残りみたいな穴だよな……」


この階層で出現する魔物が海中を泳ぎ回るタイプではなく砂中で獲物が攻撃範囲に入ってくるのをじっと待つタイプだった場合。

今まで魔物と遭遇しなかった理由にもなる。


不自然な小さい穴を目印に巨大な氷塊を落下させる。


勢いよく砂が舞い上がり視界が悪くなる。

水の抵抗がある分いつもより速度を出すイメージで飛ばしたけど……ちょっとやりすぎたかも。


「ん?今、キラッと光ったのは……やっぱり魔石だ。ということはやっぱりあの穴の周囲に魔物がいたのか」


舞い上がる砂の中にキラキラ光を反射するものが紛れている事に気づき確認しに行くと青色の魔石を見つけた。


予想通り砂の中に魔物が潜んでいたのは良いんだけど。

一撃で倒しちゃったから魔物の正体が確認出来なかったのはまずったな。


いやまぁ、また探せば良いだけだし。そこまでまずいわけじゃ無いか。


舞った砂が落ち着くのを待つのは面倒くさい。

この場を離れてさっきと同じ穴を探す。


「直ぐに見つかったな。紫陽花町ダンジョンより魔物の出現数が多いかも?」


特に探さなくても移動したら直ぐに魔物が潜んでいるサインの穴が見つかった。


海底に近づかなければ戦闘を回避できる分

数が多かったりするのか?


いや、紫陽花町ダンジョンは他の探索者もいるから数が少なく感じるだけだったり?


「まぁ、良いや。それより早速魔物の正体を拝ませて貰おう」


攻撃されても大丈夫なように全身が隠れられるサイズの大きい氷の盾を作り。隠れながら海底に近づいていく。



「針!?」


ある程度近づいたタイミングで砂穴から何か飛んで来る。

万が一、氷の盾を貫通した場合回避できるように警戒はしていたが、貫通することはなかった


それでも氷の盾に突き刺さるぐらいには威力があるみたいだし。飛んで来る速度も結構早め。

油断すると痛い目みそうだ。


この針から魔力は感じないし。霊体化中の俺には一切効かないから俺の場合万が一なんて起きないけど。


「不意打ちで一発だけって感じじゃなくて結構連射してくるんだな」


流石にマシンガンのように連射してくる事は無いが、そこそこの速度で針を連射してくる。


「さてと。穴から針が飛んで来るところはしっかり動画を撮れた。そろそろどんな姿をしているのか見せてもらうとしますか」



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読んでいただきありがとうございます。


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