第23話

「この犬、必ず飛びかかって来るから結構倒しやすいな」


滞空中はろくな回避出来ないから、そこを狙うだけの簡単なお仕事だ。


まぁでも、それが出来るのも魔力制御がかなり向上したからというのが大きい。


どうやら時間加速中という特殊な環境での行動が魔力制御向上に繋がったようだ。


そのおかげで、犬が飛びかかってきたのを見てから氷柱を作って攻撃することが出来る。


と言っても。魔力制御はまだまだ鍛える必要がある。今後もコツコツ鍛えていこう。

魔力制御を鍛えるのは当然だけど。近接戦闘技術も鍛えたいな。


現状、俺の一番火力の高い攻撃は敵に直接触れる必要がある。

なのでこの先、近接戦闘技術が必要になってくる気がする。


鬼童さんにお願いすれば教えてくれるだろうけど。

鬼童さんは刀を使って戦うスタイルだからな。

出来ることなら素手で戦うスタイルがメインの人から習いたい。


自分でも凄い贅沢な事を言ってるのはわかってるんだけどね。



「犬以外の魔物も見てみたいし。もっと先に進みたいけど。そろそろ引き返したほうが良いか」


魔石の売却もあるし。余裕をもって帰った方が良いだろう。


夏休み中だし先が気になるならまた今度来れば良いだけだ。


ダンジョンを出て、手に入れた魔石を売却する。


「あれ?買い取り額少し上がってます?」


属性付きの魔石は無属性の魔石より買い取り額が少し高くなる、というのは知っていたけど。

調べた時に出てきた参考買取額より高くなっている。


「はい。火属性の魔石の需要が最近上がっていますので、その分、買取価格も上昇しています」


火属性の魔石は鍛冶系のスキルを使う時によく使うと聞いたことが有るけど……


ふと、三國さんに見せてもらったスナイパーライフルを思いだす。


ああいう特別な武器を作るにも、そういった製作系のスキルが複数使われているのだろう。


つまり。デスパレード対策で火属性の魔石の需要が上がっているって事だろう。

俺の予想だからハズレている可能性も十分有るけど……


軍の上層部は2年以内にデスパレードが発生するというクダンの予言を知っているだろうし。

完全に間違っているってわけでも無いと思う。


……また今度来ようかなって考えていたところだし。軍の戦力アップに繋がるならガッツリ加尾ダンジョンで火属性の魔石を集めるか。

軍が強くなれることは今回みたいな件やデスパレードが発生した時に助かる人が増える事に繋がるはずだ。


でも、軍が力をつけすぎた結果クーデターとかそっちの悪い方向に進んでしまう可能性もゼロではないか……


三國さんをはじめ昨日の人達は、そんな感じしなかったけど。

軍にも派閥とかもあって一枚岩では無いだろうからな。


軍の人にいきなり聞くのもあれだし。鬼童さんに聞いてみるか?


また鬼童さんかよって自分でも思っているけど。こういう事知ってそうなの鬼童さんしかパッと思いつかないんだよな。


うーん。夢境さんなら探索者歴長いし、知ってたりするかな?

あの人、結構広い人脈持ってるみたいだし。


「あの~」


「あっごめんなさい」


まだ、買い取りしてもらっている途中だった。

買い取りを終わらせて探索者協会加尾支部を後にした。



「ただいま〜」


「お帰りなさい。色々と思う事は有るけど。無事に帰ってきてくれて良かった」


「お兄ちゃんおかえり〜」


あの後、何事もなく家まで帰ってこれた。

そんな頻繁に何か起きられても困るけど。

立て続けに色々起きたので少し身構えてしまった。


家に入ると母さんと妹が出迎えてくれる。


「それにしても勲章を貰うなんてお兄ちゃん凄い!!瑠夏、学校始まったらお兄ちゃんの事を

自慢するんだ〜」



「母さんは誇らしいけど。やっぱり危ないことはしてほしくなくて少し複雑よ」



「は?勲章授与!?」


そんな話一切聞いてないんだけど。


後、学校で自慢するのは絶対止めさせる。

もう、中学2年生だって言うのに瑠夏は少しお兄ちゃんっ子過ぎる気がする。

お兄ちゃん。少し心配。


いや。今はそんな事どうでもいい。

問題は勲章授与だ。

そんな話、一切聞いてないぞ?


「あら?駿は、この話知らなかったの?本人なのに?」


「残念ながら。少しこの件について知ってそうな人に電話かけてみる」


「そうね。じゃあ母さんは夕御飯を直ぐに食べれるように準備しておくから。瑠夏もこっちを手伝ってちょうだい」


「は~い」


そう言って二人はリビングの方に歩いて行った。


「こんなに直ぐに三國さんに電話をかける事になるとは……」


三國さんに電話をかけると直ぐに繋がった。


「本当に申し訳ない」


「あぁ、別に怒っている訳じゃ無いので気にしないでください。それより、本当に勲章授与があるのか。あるなら、俺が気をつけなきゃいけない事について教えて欲しいです」


こういう情報って何処からか嗅ぎつけられて漏れるものだろうし。


そもそも、勲章ってどういう働きをした人に対して授与されるって決まっているから、勲章に詳しい人なら、俺に〇〇勲章が授与されるだろうって予想つくから。

その予想を元に報道している可能性もある。

なので、軍が先走って俺に確認する前に勲章授与式をしますって発表した訳じゃない可能性だってある。

だから最初から怒るのは違う……って思ったんだけど。三國さんが初手謝罪したって事は

軍の中にもやらかした人がいるって事か。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読んでいただき有り難うございます。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る